第231話 緊急事態
──エルフの国〝シルフディート〟
王宮、大広間・結婚式場──
アルタイルとユキマサの勝負の行方は、ユキマサが少し本気を出してからは、勝負は一方的であった。
第三宇宙速度で放たれた大気を揺らすような蹴り、王宮を斬る程の斬撃、鉄をも軽く貫通する〝魔力弾〟──その全てがアルタイルの予想を遥かに越えるものだった。
「ぐふっ、糞……化け物め……」
「もう2回は意識を刈り取ったつもりなんだがな? 流石に一国の最高戦力は簡単にはいかないか」
殺す気は勿論此方には無いが、それなりには手を抜かず攻撃しており、顎と首に一撃を喰らわせてもいる。普通ならば立ってるのもやっとどころか意識を保つのも難しいだろう。
流石に二つ名持ちといった所か?
「ぬかせ……」
それでもアルタイルは立つ。立ち上がるしか無いのだ。一国の女王であるシアナの命令は絶対なのだ。
「もう止めときな──これ以上はお前死ぬぞ?」
「……ッ、」
──ドス。
鈍い音がアルタイルの身体に響く。
鳩尾に俺の拳がめり込む。
「フォルタニアは返して貰うぞ、悔しかったらいつでも俺に会いに来な? いつでも相手してやるからよ」
その言葉を聞いて、アルタイルの意識は途切れる。
「ば、バカな……あ、あり得ないわ」
「まだやるか? 女王? 俺は構わないぜ?」
「……」
ざわざわ、ざわざわと、近衛兵たちからも動揺が見える。未だに俺に抱っこされているフォルタニアすらも驚いた様子だ。
と、その時だ──バタバタと慌てた様子で血相を変えた兵士が、大広間に飛び込んでくる。
「──報告します、女王陛下!! 緊急事態です! 〝八柱の大結界〟の〝魔術柱〟が破壊されましたッ!!」
「な、何ですってッ!!?」
冷静だった女王の顔が今日イチで青ざめる。そして瞬時にこちらに振り向き、ギロリと俺を睨んでくる。
「いや、待て待て。俺は知らねぇぜ?」
「……お母様、ユキマサ様に嘘はありません」
フォルタニアが言う。
「じゃあ、一体誰が!!」
〝天聖〟の張った人類の生命線とも言える大規模な結界、通称〝八柱の大結界〟──その結界の基盤となる〝魔術柱〟は世界に残り4つ。
それがたった今、新たに1つ破壊されたのだ。
(……にしても、本当に一体誰が? また魔族でも攻めてきたか? それにしては随分と静かだがな)
次の瞬間だ──
バン!!
銃声と共に先程の報告をしてきた兵士が倒れる。
魔力銃で撃たれたのだ! 兵士は背後から撃たれ、心臓部が鉄の鎧ごと的確に撃ち抜かれている──銃声からすると、撃った奴はそう遠くはないぞ!
バン!!
もう一発、銃声が大広間に響いた。
次の瞬間、兵士達から青ざめた声が響く。
「シアナ女王様ぁぁ!!」
銃声から一瞬にも満たない時間。その瞬間に女王は糸が切れたように、その場に倒れ込むのだった──
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