第211話 兵の少年
「──生き残った諸君、まずはおめでとうと言わせて貰おう! そして改めて私はロゼ・ボーネス、以後よろしく頼む」
合格者の中には紫色の髪のオックボック・テイアや先程の黒髪の兵士志望の少年の姿もある。
*
入隊試験が終わると、一度解散になる。
明日、正式に入隊式があるそうだ。
黒髪の兵の少年は悔し気にシルフディートの国を歩いていた。
(畜生、負けた気分だ。ちっとも喜べない)
ドン! と、無意識にゴミ箱を蹴り飛ばす。
「コラァ! 何やってんだお前!」
「はっ! すいません、すいません! ちょっと考え事をしていて──」
「考え事してる奴がゴミ箱なんて蹴り飛ばすかよ!」
「──お待ちください」
綺麗な透き通るような声だ。
「あ、貴方は確か……」
「!?」
「その方は嘘を吐いてませんよ。確かにゴミ箱を蹴り飛ばしたのはそちらの方に非があったかもしれませんが、どうか許してあげてはもらえませんか?」
「……!? お、王族にそう言われては返す言葉もありませんね、分かりました。今回は貴方の顔に免じて水に流します」
「はい、ありがとうございます」
そのエルフの女性は優しく温かく微笑んだ。
「あ、あの、あ、ありがとうございました!」
べたぁっと頭を下げる兵の少年。
「いいえ、どういたしまして」
「フォルタニア様、そろそろ王宮にお戻りください」
茶髪の女性がフォルタニアに話しかける。
「あら、ベガさん。もうそんな時間ですか?」
「ええ、結婚式も控えてるのですから、お身体もお休めになってください」
「……そうですね」
フォルタニア……確か、つい先日、王女の実の娘と公表された人物の筈だ。
だが、それよりも、その女性は結婚という言葉に酷く悲し気な顔をしていたのが印象に残った。
「あ、あの、フォルタニア様、本当は結婚なんてしたくないんじゃ……?」
「ええ、そうですよ」
即答である。
「フォルタニア様──」
ベガの眼光が一瞬、キラリと光る。
「失言でした、すいません」
「だったら辞めればいいじゃないですか! 好きでもない人と結婚するなんて間違ってますよ」
シュッ。
「言葉を慎みなさい、少年──」
気がつくと、喉元にナイフが当てられていた。強い、この人の前じゃ鎧なんてあって無いような物だ。
「止めなさい」
「しかし」
次の瞬間、ベガを視線だけでフォルタニアは一蹴する。
「あなたは優しいですね、少し知り合いを思いだしました。それではごきげんよう──」
「あ……」
そう言うと、フォルタニアは帰路につくのだった。
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