第206話 行方
*
「──それで? フォルタニアはどうしたんだ?」
お代わりのお茶をすすりながら俺はロキに問いかける。
「ユキマサさん、フォルタニアさんのフルネームはご存じですか?」
「いや、知らないが?」
「ですよね、いえ、もしかしたら貴方になら話しているんじゃないかと考えましてね……」
気を悪くしたならすいませんと謝って来るロキ。
おほん。と、咳払いをし真剣な表情でロキが口を開く、心なしか、そのロキの表情は暗い。
「フォルタニアさんのフルネームは──フォルタニア・シルフディート。エルフの国のお姫様です。王位継承権も第三位です」
「待て、フルネームを伏せてたって事は王女であることも隠されてたってことか?」
「話が早くて助かります。今、フォルタニアさんはエルフの国にいます。そしてエルフの国ではフォルタニアさんは生まれてきてなかった事になっていました」
「じゃあ何で今フォルタニアはエルフの国にいる?」
「そこなのです、問題は。実は先日、王位継承権第一位の──エルサリオン・シルフディート王子が亡くなりました」
「それでフォルタニアに白羽の矢が立ったと? つーか、第二位はどうしたんだよ?」
普通なら第二位に行くだろ?
「王位継承権第二位の──ヴォロン・シルフディート王子は少し色々と問題がありましてね? まあ、一番の理由を挙げると、所謂、通常の方法では子孫を残すことのできない身体なのです」
「……おい、待て、まさか政略結婚とか言わねぇよな?」
「そのまさかです。フォルタニアさんは政略結婚し、子を産み、その生涯を不自由で閉じることになるでしょう」
「ふざけるな! ロキ、お前、それでいいのか?」
「──そんなこといいわけないでしょう!! でも、私とエルフの国の女王とは、ある約束が交わされていた。もし破ればフォルタニアさんの扱いはもっと悪くなる。簡単に言えば人質ですね、今の私には手を出す術がない」
「……」
ロキらしくない姿に俺は無言で見つめる。
いつもの胡散臭い笑顔が完全に崩れている。
「どうか、どうか、お願いします。フォルタニアさんを助けてください。お願いします……」
ロキは地面に頭を擦り付け、所謂、土下座の姿勢で俺に頼み込んでくる。
今にも泣きそうな声だ。普段のロキからは想像もできない姿だ。……ギルドマスターという立場もあるのだろう。誰にも相談できず、1人この部屋で悩んでいた。そんな気がする。
「断ったらどうする……」
「私はギルドマスターを辞めます」
「お前がいなくなったらギルドはどうなる」
「知ったことか……私は娘同然のただ1人の少女を魔の手から救えればそれでいい……例えこの命尽きようとも──でも、それを彼女が望まないんです。お願いします、ユキマサさん。私はフォルタニアさんの身もフォルタニアさんが守ろうとした場所も守らなければならない! どうか……どうか……」
「断る。俺はお前の頼みをきかない──」
「どうして……」
藁にもすがる思いだった様子のロキは絶望したような表情になる。
だが、俺はそれを気にせず立ち上がる。
「悪いが、用事があるんでな、邪魔するぞ?」
それだけ言い残し、膝を折るロキに目を向けず俺はギルドマスター室を後にするのだった──
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