第200話 風邪
〝大都市エルクステン〟に戻ると、街はお祭り騒ぎだった。
「魔王の危機が去ったぞ!」
「人類の勝利だぁ!」
「まだあと2人魔王がいるとは言え、めでたい! めでたいぞ!」
飲めや歌えやお祭り騒ぎ。
今の俺には少し騒がしかった。
「……皆、ユキマサ君の気持ちも知らないで……」
それを見たクレハが静かに怒っている。
「知ってた方が気持ち悪いよ、ありがとな」
「……うん……」
それでも納得がいかない様子のクレハ。
「そうだ、少し時間も空いたし、いつぞやの約束した街案内してくれよ? あ、でも今は街は魔王のせいでボロボロで開いてる店も少ないか。寧ろ今開いてる店は商魂たくましいと言うべきか。ったく、魔王め」
パタリ
「クレハ? クレハッ!!」
倒れるクレハに俺はかけよる。
「すげぇ熱だ……」
俺は回復魔法を試してみるが、バチバチバチと頭の中で電流が流れるような痛みと共に回復魔法が弾かれてしまう。
「クソ、風邪か!!」
逆に俺はクレハの熱がただの風邪であることに安堵しつつ風邪は治せない自分の回復魔法に歯軋りする。
クソ、急いで家まで運ばないと。
*
「クレハの婆さん、いるかっ!?」
急ぎ、クレハをクレハの家に運ぶと俺はまずクレハの婆さんを探す。
「おやまあ、どうしたんだい?」
「凄い熱だ、水とタオルを用意してくれ」
「え、ええ、すぐに」
婆さんに水とタオルを頼むと、俺はすぐにクレハを自室のベッドに寝かせる。
「……ユキマサ君……ここは……?」
「起きたか、落ち着け、お前の部屋だよ。それにしても凄い熱だ、安静にしてろ」
「熱……? 確かに何か身体が熱くてダルいかも」
コンコン、コンコン。
「クレハ、ユキマサさん入るよ」
「お婆ちゃん」
「クレハ、酷い熱みたいね、ゆっくり休みなさい」
「うん、ごめんね」
ここで俺はクレハが着替えるとのことなので、一度部屋を出る。
(さて、どうするか……この世界に風邪薬とかあるのか? あるなら買ってくるか──)
「──ユキマサさん、もう大丈夫ですよ」
クレハの婆さんが部屋から出てくる。
「風邪薬とかあるのか? なきゃ、買ってくるが?」
「それは明日にでも私が買ってきますから、ユキマサさんはクレハの側にいてやってくださいな。クレハも喜びます」
「そうなのか?」
「ええ」
そう言われると断りづらいので、婆さんに言われたとおり、クレハの側にいることにする。
コンコン、コンコン。
「邪魔するぞ? 着替えは済んだか?」
「うん、迷惑かけてごめんね」
掛布団を口の辺りまで被ったクレハが恐る恐る謝ってくる。
「迷惑じゃないから謝るな、何か俺にできることあるか?」
「え……できることって何でもいいの……?」
「ある程度はな」
「じゃあ、今日も一緒に寝てくれる? あ、でも、それじゃあ、私の風邪ユキマサ君に移しちゃうか……」
「そんなことでいいのか? それに俺は風邪引いたこと無いから安心しろ」
「ほんと? やった……! ゴホゴホッ」
「ほら、安静にしてろ? 看病ぐらい、いくらでもしてやる」
「……ユキマサ君、こっち」
すすっとクレハがベッドの端により、スペースを空ける。
「お邪魔します」
そう言い俺もベッドに入る。
にしても熱いな、また熱上がったんじゃねぇか?
「ユキマサ君、もう1つワガママ言って良い?」
「何だ?」
「腕枕して欲しいな……ダメかな?」
「ダメじゃない、ほら」
俺はクレハの頭の下に左手を回す。
「どうしよ、何か熱上がってきちゃったみたい」
「大変じゃねぇか! 早く寝ろ!」
「う、うん、寝る……あぅ……でも、もう少しこのまま」
すると熱のせいなのかは分からないが、顔を赤らめたクレハはきゅうんとまるで気絶するかのように寝るのであった──
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