第195話 炊き出し3
「──おい、フィップどうした?」
「ユキマサか、魔王を倒したのはお前らしいな、心から礼を言わせてくれ」
「いいから頭あげろよ? つーか、ロキには何で謝ってんだ?」
「あたし達が魔王戦争が始まったら真っ先に逃げたからさ、理由はあるが、それでも逃げたことに変わりはない」
そう話すフィップは頭を下げたままだ。
「アリス王女とレヴィニア様はご無事ですか?」
ロキが聞く。
「無事だ、今は老いぼれ小僧が側にいる」
「なら、いいじゃねぇか、よかったな無事で」
「ユキマサ、お前、本当に呑気だな」
「よく言われる、てか、いい加減頭あげな。ロキも困ってるぜ?」
そこでようやくフィップは頭をあげる。
と、その時だ。
「──フィップ! 何処にいるのですか!」
「お嬢様、お待ちくだされ!」
「アリス様!」
「アリスお嬢様!」
アリスとジャン、それと兵士達がズララっと入ってくる。
「む、ユキマサなのです」
「よう、アリス、豚汁食うか?」
「豚汁? 何なのですそれは? 辛いのですか?」
「いや、辛くは無いな。まあ七味唐辛子とかあれば辛くなるけど、今はないしな?」
「七味唐辛子! 七味唐辛子とはどんな唐辛子なのですか!」
唐辛子と聞いて目ざとくアリスはキラリと目を輝かせる。
「七味唐辛子は唐辛子をベースに薬味や香辛料を調合した物だよ、そんなに辛くはないぞ?」
「ふむふむ、今度それを持ってくるのです」
「気が向いたらな」
「でも、せっかくなので食べてくのです」
「はいよ、ちょっと待ってな」
と、俺が豚汁を取りに行こうとすると、
「アリスお嬢様、こちら炊き出しの豚汁とやらでございます。魔王の出現以降何も口にしてらっしゃらない様子でしたので、よければお召し上がりください」
いつの間にか兵士の一人が豚汁を持ってくる。
つーか、よく見てみたらコイツ見覚えがあるぞ? 初めてあった時に隊の指揮を取ってて、エルルカの告白の返事を待つって言ってた時に、コンニャクの返事だとか意味の分からないことを言っていた、髭コンニャク指揮官じゃねぇか!
そんなことを考えていると、
「ユキマサ!!」
ふわりと長い薄ピンクの髪の良い香りをさせ、レヴィニアが俺に抱きついてくる。
「レヴィニアか、お前も無事みたいでよかった」
「魔王が倒されたと聞いて真っ先に貴方が浮かんだわ」
「それは喜んでいいのか?」
「もちろんよ!」
「また美少女……」
ジトリと理沙に睨まれる。
「まあ、お前も炊き出し食ってけよ、沢山作ったからよ」
「あなた、料理もできるの?」
「一般的な物だけどな、多少はできるぞ?」
「そうなのね、スゴいわ!」
「レヴィニア様、豚汁をお持ちしました」
「イルザ、ありがとう! アリス、貴方も一緒に食べましょ?」
「一緒にも何も私はお前を待っていたのです」
「ふふ、アリスらしいわね、ありがとう」
そして二人は仲良く豚汁を食べる。
アリスに至っては持参した唐辛子をプカプカと浮かべている。
と、そこにだ。
ひょこっと顔を出す人物がいる。
「久しぶりだね、アリスちゃん王女様」
「む、だ、大聖女なのです!?」
今まで気配を消してたノアが急に姿を現したので、目を見開いてアリスは驚いてる。
「わ、私はお前に会った覚えはないのですよ」
「あー、アリスちゃんとはこっちの姿のがいいかな」
そういうと白かったノアの髪が、魔法少女の変身みたいに紫色に変わっていく。
「し、白娘!?」
「うんうん、正解、今は白フードじゃないけどね?」
その後も炊き出しは続き、すっかり日が落ち、夜になっていた。
*
「じゃあ、ユキマサ、また明日ね」
「ああ、じゃあまたな、てか宿あるんだな」
「うん、おじーちゃんの家」
「俺も明日はそこに顔出すようになりそうだな」
久しぶりの婆ちゃんに会うのも楽しみだ。
と、理沙と糞爺を見送った後。
「私たちも帰ろっか」
クレハが言う。
「そうだな」
そう言い、俺とクレハは帰宅を急ぐ。
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