表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
183/858

第182話 過去編・花蓮ノ子守唄13



 翌日、皆で朝食を食べていた頃だ──


 テレビに映った緊急速報に全員が目をやる。


 その内容は()()だ。

 ある山が噴火したとテレビが大々的に報じている。


 ただの噴火なら、俺達もこんなに目をやらなかっただろう。

 驚いたのは、まずはその場所だ。そこは親父達が旅行で登山にでかけた、あの山だ。


 そして噴火の規模はかなりでかい。

 SNSにあげられた動画をテレビ局が流してるのを見ると、もくもく程度ではない()()が天高く一気に立ち上っている。


「なんじゃと……」


 爺ちゃんが、あんぐりと口を開けて、ポロリと箸で掴んでいた卵焼きを畳に落とす。


「吹雪ちゃん……木枯(こがらし)……」

「ねぇ、ユキマサ、これ、どういうこと!?」


 呆然とする爺ちゃんと婆ちゃんを見て、事の重大さを察した様子の理沙が俺に問いかける。


「……状況はかなり不味い。それこそ命の危険がある」


「そんな……おとーさん強いじゃん! 大丈夫だよね」

「いくら親父が強くても、相手は自然だ。最悪の事態も十分に考えられるってわけだ」


「……ユキマサ、どうすればいいの? ねぇ!」

「俺が行く──それと婆ちゃん、悪いが初めて俺は朝食を残すぞ、すまねぇ」


「待て! どうやって行くつもりじゃ!」

「走っていくんだよ、車よりは早い。それに近所の目は今はなりふり構ってられん、牧野に謝っといてくれ」


「ユキマサ!」

「ユキマサッ!」


 婆ちゃんと理沙の声が聞こえるが、なりふりかまわずに俺は走り出す──


 *


(クソ……間に合うか?)


 俺は走る、そこら辺の車なんかよりは早い足だ。取り柄何てそんなに無いんだ、こんな時ぐらい役にたってくれよ……


 更に俺は走る足を早める。

 隣を走る車の運転手がギョっとした驚いた顔をしていたが、今は気にも止める気にはならない。


 国道を走り、山を駈け、川を渡り、最後は新幹線の路線の壁の上を走った。

 時間にして家から出て1時間ちょい。これでも最速に急いだ方だが、これでもまだ遅い。


 と、ここで電話が鳴る。


「理沙か? どうした?」

『あ、繋がった! おばーちゃんが山に向かうって聞かないの、ダメだよね?』


「ダメに決まってるだろ? 婆ちゃんの体はちょうどっこじゃないんだぞ! 次に発作でも起きたらどうする! 爺ちゃんは何やってんだ!」

『おじーちゃんはおばーちゃんを止めてるけど、息子と娘のピンチにかけつけない親がどこにいますか! って、言われて押され気味……』


「今から普通に出ても間に合うわけないだろ? それにテレビのテロップが流れた時点で、あの山は軒並み立ち入り禁止だ! 来てもどうにもならんぞ」

『……て、じゃあユキマサはどうするの?』


「俺は強行突破だ、母さん達の命がかかってんだ。わざわざそれに従うような時間はない!」

『そ、そっか、ユキマサ──おかーさんとおとーさんを宜しくね、絶対だよ』


 理沙の最後の方の言葉は涙声だった。


「ああ、言われなくてもな。でも、お陰で気合いが入った、ありがとな」


 ピッ、っと携帯を切り、俺は走り出す。

 親父達の向かった山に向かって。


 *


 山の周辺に着くと、消防やら警察やらがわんさかいた。よく見ると、無事に下山できた人もいるみたいだ。


 そして俺はその中の警察の一人に声をかける。


「申し訳ない、家族の者なんだが、稗月吹雪(ひえづきふぶき)稗月木枯(ひえづきこがらし)は下山しているか?」

「君、もしかして迷子?」


「んな、話しをしている場合じゃねぇ! さっさと答えろ!」

「ひぃ、そ、そのお二人はまだ戻っておられません」


「そうか、すまねぇ、手間かけたな」


 なら、まだ山の中にいるはずだ。

 できりゃあ、サラリと下山していて欲しかった。


「き、君、危ないからこっちに来なさい!」


 ヘルメットを持った消防士が、慌ててこちらに走ってくる。


「危なくないから、別にそっちにはいかない」


 そういうと俺は足に力を入れて跳躍しその場を瞬時に去る──


 *


 時を遡ること少し前──


 稗月木枯(ひえづきこがらし)と稗月吹雪は登山の為、山を登っていた。


「ふぅ、空気がうめぇな、なあ、吹雪」

「そうですね、街中とは比べ物になりません」


「取りあえずは山小屋を目指すか、そして明日は日の出をみるぞ!」


 山が好きなのかは定かでは無いが、木枯のテンションは高い。そんな夫を見る吹雪も実に楽しそうだ。


「にしても、ちらほらとゴミが落ちてるな。ったく、マナーってもんがなってねぇな?」


 と、木枯は山に捨ててあったペットボトルを拾い、持参した袋に積める。


 しばし歩き、山小屋に着くと、昼食を取る。


「俺はラーメンと炒飯(チャーハン)だな、吹雪はどうする?」

「私はカレーにしようかしら」


「決まりだ、すいませーん!」


 木枯が店員を呼び、注文を済ませる。


 すると数分後──


「お待たせしましたー!」


 愛想のいい年配のおばちゃんが元気に食事を運んでくる。


「おやまあ、新婚さんかい?」

「新婚てほど新婚じゃないんだが、夫婦で年1の旅行だ、昨年は温泉に行ったりしたんだけどな? 今年は吹雪の希望で登山だ」


「奥さんの希望かい? それはそれは、是非とも楽しんでってくださいね」

「はい、山小屋も宿泊でお邪魔させてもらいますね」


「日の出を見るのかい?」

「はい! 前から山で一度は見てみたかったんです」


 テンションの上がる吹雪。


 そして食事を済ませるとすっかり夜だ。


「早めに寝ないとな、朝も早いしな」

「そうですね、では、部屋に戻りますか」


 こうして二人の夜は更けていく──


 ★★★★★★作者からのお願い★★★★★★


 作品を読んで下さり本当にありがとうございます!


・面白い

・続きが気になる

・異世界が好きだ


 などと少しでも思って下さった方は、画面下の☆☆☆☆☆から評価やブックマークを下さると凄く嬉しいです!

 (また、既に評価、ブックマーク、感想をいただいてる皆様、本当にありがとうございます! 大変、励みになっております!)


 ★5つだと泣いて喜びますが、勿論感じた評価で大丈夫です!


 長々と失礼しました!

 何卒よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ