第177話 過去編・花蓮ノ子守唄8
「おとーさん、おかーさん、おじーちゃん、おばーちゃん、ユキマサ」
──お、おう。
理沙が噛み締めるように順番に名前を呼んでいく。
どうやら、理沙の中で呼び方が決まったようだ。つーか、俺だけ呼び方変わらないのな。
「よっしゃ! じゃあ、俺は嬢ちゃん呼びはやめて、理沙って呼ぶぜ? よろしくな、理沙──」
「は、はい、よろしくお願いします」
「敬語も要らないぜ?」
「あ、はい、うん。分かり……分かった」
まだ慣れない様子だ。
その後、割れたガラスを片付け、ガムテープで超応急処置をし、就寝についた。
*
──翌日。
「理沙の父親が亡くなった!?」
朝、店に来た牧野がそんな話を告げた。
「ああ、何でも、車に轢かれたらしい」
(ご都合主義かよ……)
「牧野、お前何かしたか?」
「人聞きが悪いな、私は何もしていない」
「組に消されたか本当に偶然か……」
「今回ばかりは偶然だと思うぞ?」
「お前がそう言うなら、多分そうなんだろうな」
牧野は優秀だ。変な嘘も吐かない。
「理沙には俺から話しておく、手間かけたな」
そういい、俺は牧野に栗モナカを渡す。
「何だ、くれるのか?」
「これであげないと言うと思うか?」
「ふふ、なら、遠慮無く貰っていく」
そう言うと、牧野はくるりと身を翻し、店を去っていくのだった。
*
理沙の親父が亡くなったことを理沙に話すと、理沙は落ち着いた様子で話を聞いていた。
「そうなんだ……」
「大丈夫か?」
「うん、不思議とすんなりと受け入れてる。元々全然好きじゃないし」
「そうか……」
「そ、それに今は私にはおとーさんもおかーさんも皆いるし……」
チラりと理沙が俺を見てくる。
「ならいいが」
*
「え、転校?」
「ええ、理沙ちゃん、悪いけど、今の学校だと少し距離があるから、転校して貰いたいの、いいかしら?」
「は、はい……じゃなくて、うん、大丈夫だよ」
「よかった、ユキマサも同じ学校よ」
「え? ユキマサ、学校行ってるの!?」
「お前、義務教育って知ってるか?」
すかさず俺は突っ込む。
「だって、問題児過ぎる気がするんだもん」
「誰が問題児だ、誰が……!」
「ユキマサは問題児よねぇ」
母さんが頬に手を当て答える。
「……いや、別に俺は……」
「やっぱ問題児じゃん」
最後に理沙にそう言われ、俺は黙るしかなかった。
*
理沙が家に正式に住むにあたって、勿論、一悶着あったが、理沙を引き取りたい親戚がいないことや、両親がいないことにより思ったより早く話が進んだと、牧野が言っていた。
「理沙ちゃん、今日から新しい学校ね」
「おかーさん、うん、そうだよ」
そんな話を二人がしている。
「頑張ってね、何かあればユキマサを頼りなさい」
「うん、分かった。いってきます!」
「いってらっしゃい」
俺も理沙と一緒に家を出ると、理沙が急にそわそわし始める。
「どうした?」
「う、少し緊張する」
「ハハ、珍しいな? 人の字でも書いて飲んだらどうだ?」
「あんなもの効くわけ無いでしょ?」
「婆ちゃんはそういったおまじない好きだけどな?」
「そ、そうなの?」
「まあ、少しずつ家にも慣れていけばいい」
「うん、そ、それに、もうユキマサだけのじゃなくて、おとーさんやおかーさん、おじーちゃんにおばーちゃんは私の家族なんだからね!」
私は少し恨みったらしく言った。
「ハハ、そうか、なら、お前はもう俺の家族だ──」
にししっとユキマサが笑う。恨みったらしく言った自分が恥ずかしくて、私はしばらく下を向いた。
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