第174話 過去編・花蓮ノ子守唄5
食事を終えると、風呂に入ったり、歯を磨いたり、就寝準備をしながら、のんびりとテレビを見る。
「私の昔のパジャマ、理沙ちゃんにピッタリね」
母さんが理沙にパジャマを着せる。
てか、よく取ってあったな?
「うわぁ、こ、これ、私が着て本当にいいんですか」
キラキラと目を輝かせるが、理沙は遠慮気味だ。
「勿論、私はもう着れないし、理沙ちゃんに貰ってもらえるなら私も嬉しいわ」
そんな理沙を見て母さんも嬉しそうだ。
「理沙ちゃん、髪サラサラね」
いつの間にか理沙の背後に周り、髪をとかす婆ちゃんも、理沙には好意的だ。よかった、よかった。
「わっ、えっと、あの、ありがとうございます!」
そんな母さんと婆ちゃんの好意に理沙は慌てる。
「髪の毛を誉められたのも初めてです、こんなに嬉しいんですね」
「そうなの? なら、私が毎日でも誉めちゃうわよ」
のほほんと婆ちゃんが笑う、それに連られてか理沙も笑った。
そんな時間がゆっくりと過ぎていった──
「理沙ちゃん、一緒に寝ましょ!」
母さんが理沙の肩を優しく叩く。
「は、はい!」
「それとたまにはユキマサも来なさいな?」
「俺は自分の部屋でいいよ、理沙をよろしくな?」
「おいおい、そんな連れないこと言うなよ?」
「て、あ、おい、親父!」
ぐいぐいと俺は親父に引っ張られる。
この酔っぱらいめ……!
「こういうのは、同年代のお前がいた方がいいんだよ」
「……まあ、そう言われたら返す言葉もないが」
ということで和室に布団を4枚敷き、仲良く皆で眠る。
「ふふ、何か不思議、理沙ちゃんともっと前から一緒にいた気がするわ」
「私もです、昨日まではいつものあの家で寝てたんですから、それにお布団てこんなに温かいんですね」
「「「え……?」」」
「……え?」
「理沙、お前、布団で寝たことないのか?」
「うん、毛布はあったけど」
「……まじか」
「ユキマサ、何で嬢ちゃんもっと早く連れてこなかったんだ!」
「俺だって知らなかったんだよ、会ったのもここ数日だ」
「ったく、ロクな親じゃねぇな」
「理沙ちゃん、今日は一緒に寝ましょ」
親父は大きく息を吐き、母さんは理沙を自分の布団に連れ込む。ちなみに理沙に嫌がる様子は無い。
「わふっ、吹雪さん///」
理沙は最初は驚いた顔をしていたが、直ぐに嬉しそうに笑い、力が抜けたように眠りにつく。
「あらあら、疲れていたのね」
「そりゃ今の話を聞けば疲れてただろうよ」
一気に酔いが冷めた様子の親父が頷く。
いつもなら飲み直すかと言う親父が、珍しく何も言わずにそのまま布団に入るのが少し驚いた。
──翌朝。
「……んっ……」
理沙はゆっくりと目を開ける。
生まれてから今日が一番よく寝れた気がする。
「よう、おはよう」
「……ユキマサ、おはよう」
ごしごしと理沙は目を擦る。
「吹雪さんと木枯さんは?」
「母さんなら朝食作りで、親父は爺ちゃん達と店の仕込みだ」
「わ、私、何か手伝うことあるかな?」
「さあな、仕込みは俺も今から行くが、慣れてないと難しいだろうし、母さんの方を手伝ってやってくれよ、案内するからよ」
「うん、分かった──て、着替えるから出てって!」
と、俺は理沙に怒られ部屋の外で待つ。
「ユキマサ、いる?」
「いるよ、着替え終わったか?」
「うん、吹雪さんの所に案内して」
「こっちだ、寝惚けて転ぶなよ?」
「こ、転ばないよ!」
そうして台所に出ると、母さんが鼻唄混じりに朝食を作っている。米のいい香りも漂ってくる。
「吹雪さん、おはようございます」
「あら、理沙ちゃん、おはよう! よく寝れた? ユキマサもおはよう、お父様が探してたわよ」
「おはよう、母さん、爺ちゃんの用事は十中八九、店の仕込みだな」
売り上げが好調らしく、以前より仕込みの量が増えた。だが、バイトを雇う気も無いみたいで、量が増えても、家族内で何とか仕込みをこなしてる状態だ。
「あの、吹雪さん、私も朝食の準備手伝います」
「あら、ほんと? 嬉しいわぁ! じゃあ早速、エプロンつけて手伝ってもらおうかしら?」
母さんは嬉しそうに理沙にエプロンを着せる。
「じゃあ、俺は店の方に行くから、母さん、理沙をよろしく頼むよ」
「ええ、任せなさい」
ということで俺は店の仕込みの方に向かう。
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