第164話 魔王戦争ガリアペスト編19「ステージ変更」
*
──大都市エルクステン・ギルド──
「は? 魔王が逃げた!?」
フォルタニアから報告を受けたロキが、すっとんきょうな声をあげる。
「ええ、大聖女様のお付きのヴィクトリア様からですので、確かなことかと……」
「それで魔王は何処に!?」
「大砦の門の方向に向かっている様子です」
「確か、魔王城がある場所ですね、そちらには誰かいますか?」
「いえ、今は誰もいないようです──ですが、ユキマサ様が魔王を追っているようです」
「そうですか、後は彼に託されたと言うことですね」
そう呟くロキは、遠い目で空を仰ぐ。
*
──大都市エルクステン・西部──
六魔導士──〝剣斎〟エルルカ・アーレヤストは、赤の魔族愧火と戦っていた。
……が、剣撃が舞う、その途中で愧火が空を見上げた。
「魔王様、撤退だと? ハハッ、どうなっている」
「勝負の最中に余所見とは随分と余裕なのね、それともバカなのかしら?」
その一瞬を見逃すエルルカではなかった。
──シュン!
と、一瞬、時が止まったかのような斬撃を放つ。
その両手には長いドスが持たれている。
「流石に速ぇな、六魔導士さんよ?」
斬られても、尚、笑う、その姿には余裕が見える。
魔族は脳と心臓を破壊されない限り死なない──
故に、まだ愧火には危機感はあまりなかった。
だが、決して目の前のエルルカを軽視していた訳ではない。むしろ、称賛を与えるほどにエルルカを評価し、その勝負を楽しんでいた。
「状況が変わった、ここは引かせてもらうぜぇ」
「私が逃がすとでも?」
と、その間にバッと、複数の影が割り込む。
「こいつら、魔王信仰!? こんなタイミングで……」
その間にも愧火はどんどん去っていく。
*
俺はシラセに借りた〝人工精霊〟である、白龍のΩの背にクレハと乗り、急ぎ魔王を追いかける。
「白龍の背中に乗って魔王を追うとは思わなかったな」
Ωはまるで日本昔話みたいな龍だ。色は違うけど。
「呑気! ユキマサ君、呑気だよ!」
俺はクレハに突っ込まれる。
いや、そこまで呑気なつもりは無いんだけどな。
まあ、それはそうと、魔王との差が縮まらない。
魔王とΩの速度は丁度同じぐらいだ。
だが、そのまま進んでいくと、大砦の門の場所にでると、魔王が落ちてる魔王城に戻る。
そして魔王が乗り込むと、魔王城がエンジンをかけなおしたように──
ズゥゥン……と、浮きあがり始め、動き出す。
その隙に俺達は魔王に追い付くと、魔王城に乗り込む。
そしてΩには「ありがとう、シラセによろしくな」と、礼をいいシラセの元へ帰す。
「それにしても、ステージ変更──魔王城だ! ハハッ! 異世界感が増したな!」
「だから呑気! 呑気過ぎるよ!」
ポコポコと俺を軽く叩いてくるクレハも、端から見れば結構な呑気加減じゃないだろうか?
まあ、魔王のトラウマを克服できたのはスゴく良かったと思う。
「地面を離れるぞ、注意しろ!」
動きだした魔王城が地面を離れ、上空へと飛ぶ。
ズバン!!
「おぉっと……!」
ひょいッと俺は──魔王城が飛びあがる、その最中に魔王城の奥から、俺の心臓目掛けて伸びてきた、魔王城からの攻撃をクレハを庇いつつ俺はその攻撃を避ける。
その次の瞬間、ザクンと地面が割れる。
「なるほど、魔王城はお前の手足同然に動けるわけか、厄介な城に迷い込んだもんだ」
迷い込むも何も、自ら追いかけてきたんだから、迷うも何も無いんだが、俺は皮肉を口にする。
★★★★★★作者からのお願い★★★★★★
作品を読んで下さり本当にありがとうございます!
・面白い
・続きが気になる
・異世界が好きだ
などと少しでも思って下さった方は、画面下の☆☆☆☆☆から評価やブックマークを下さると凄く嬉しいです!
(また、既に評価、ブックマーク、感想をいただいてる皆様、本当にありがとうございます! 大変、励みになっております!)
★5つだと泣いて喜びますが、勿論感じた評価で大丈夫です!
長々と失礼しました!
何卒よろしくお願いします!