第157話 魔王戦争ガリアペスト編12「奴孔楼」
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六魔導士シラセ・アヤセは〝座標石〟を操るローブを着た魔族──奴孔楼と対峙していた。
「α、Ω、皆、お願い!」
シラセの呼び掛けで人工精霊である、犬神のαと白龍のΩを筆頭に、様々な動物の形をした、向こう側が透けて見える程に透明な色をした〝人工精霊〟が次々と現れる。
「魔族──奴孔楼、貴方の相手は私です!」
シラセが向き合う、だが奴孔楼からの返事は無い。
「ユキマサさんが潰してくれた心臓が回復する前に倒さないと! α、Ω、本気でかかりなさい!」
シラセの言葉でαとΩが同時に動きだし、左右から奴孔楼を攻撃する。
奴孔楼は杖を翳す──
杖からは魔法が発動される。円状の攻撃魔法だ。テニスボールぐらいの大きさの魔力弾が無数に発射される。
α、Ω共に、攻撃を避けながら、こちらからも攻撃を仕掛けるが、奴孔楼は〝座標石〟を使った、辺りに散らばる黒い玉と、自身の場所を入れ替える座標移動でその攻撃を避ける。
「覚悟!」
剣を抜いたシラセが合間を縫って奴孔楼に近づき、奴孔楼に斬り付ける!
ガキンッ!
だが、その攻撃は杖で受けきられてしまう。
──ビュン、バッ!
奴孔楼が更に座標移動し、シラセの背後を取った。
「ごめんなさい」
シラセがそう呟く。
次の瞬間、奴孔楼の杖がシラセを背中から貫く。
だが、シラセは無傷だ。
代わりにシラセの〝人工精霊〟の一つが大きな攻撃を受ける。
「私への攻撃は、私の〝人工精霊〟が代わりに受けてくれます。まあ……数に限りはありますが」
シラセの攻撃を庇う〝人工精霊〟は無限ではない、有限だ。むしろ数を減らされる事によって、主であるシラセの魔力を蝕む。
「……」
相変わらず奴孔楼は何も喋らない。
すると、犬神のαが攻撃を仕掛ける。隙を付いた鋭い攻撃だ。
ガブリと、奴孔楼の胴体に命中するが、致命傷を与える前に──ビュン、バッ! と、すり抜けるように座標移動し、攻撃を避ける。
「そう簡単にはいきませんか」
シラセは悔しげに奴孔楼を睨む。
次に動いたのはシラセだ。
剣を奴孔楼に向け、シラセは一ヶ所に〝人工精霊〟達を集める。
「時間がありません、まだ魔王もいるのですから! 一気にいきます! お願い、皆、力を貸して!」
集まる〝人工精霊〟に魔力を込める。
〝人工精霊〟は主の魔力で動く──強く魔力を込めれば込めるほど〝人工精霊〟も強くなる。
特に主力である──αとΩに魔力を注ぐ。
「後は頭部のみ、急がないと」
魔族を殺すのには、
・頭部の破壊
・心臓の破壊
この二点が必要である。
吹き飛ばされる前に、ユキマサによって心臓部は破壊されている。シラセが狙うのは後は頭部のみだ。
ちなみに、頭部と心臓のどちらかを破壊されていも、生命力が桁外れに強い魔族達は時間が経てば心臓だろうが頭だろうが、また再生して来る。
故に両方の破壊が必須なのだ。
「はあぁぁ!」
シラセが奴孔楼に斬りかかる。
だが、奴孔楼はそれを易々と受け止める。
決して弱くはないシラセの一撃だ。
それを易々と止める奴孔楼も、やはり魔族にして──実力者であった。
決死の戦いの最中、その出来事は仕組まれるように唐突に起きた。
犬神のα、白龍のΩが、ありっ丈の魔力を纏い、攻撃をしかける。
正面突破だ、その行動に奴孔楼は鼻で笑う。
この土壇場に来ての特攻だ。無理もない。
だが、特攻としての威力は十分に奴孔楼の頭を潰す威力があった。
後は、当たるかどうかだが、この攻撃に対す奴孔楼の対処は既に完成していた。
対処が完成されていた、α、Ω、の二匹の攻撃はここで既に絶たれたかと思われた。
でも、二匹は奴孔楼に向かう。
決死の思いで──。
笑止とばかりの様子で奴孔楼は杖を構え、魔法を放つ。
まず攻撃が犬神のαに命中する。命中したαは全身にラグが走るようにし、消えてしまう。
続いて、白龍のΩが噛みつくように大きな口をあける。
そのΩに向かい、魔法が放たれる。
Ωに攻撃が当たる。
致命傷だ──そう誰もが思う当たり方をした。
だが、Ωは無傷だった。
「──!?」
これには奴孔楼も驚く、ローブで顔すら見えないが、そのローブの下は、さぞかし驚いた顔をしているだろう。
「私への攻撃を〝人工精霊〟が庇えるように──〝人工精霊〟への攻撃を私が庇うこともできます……!」
ゴフッとシラセが血を吐く。
その身体の真ん中には風穴が空いている。ダラダラと流れる血を手で押さえながらシラセは力一杯叫ぶ!
「Ω、頼みましたよッ!」
その言葉の期待通りにシラセの魔力をたっぷり纏った白龍のΩが奴孔楼の頭をガブリと噛み砕く。
そして一瞬だ、奴孔楼の体にラグが走り、消えると──魔族を倒すと魔族が最後に残す菱形の〝魔力核〟を落とす。
痛む身体で、それを拾いあげたシラセはおもむろに呟く。
「これでユキマサさんとの約束は果たせそうですね──魔王の方も手伝いたいですが、でも、傷が深い……これでは足手まといになってしまう、うっ……」
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