第149話 魔王戦争ガリアペスト編4「戦況」
「…………」
ノアの言葉に魔王ガリアペストの返事は無い。
代わりと言ってはだが、魔王はまた光線を放とうとし、魔王の大きく開けた口の周りには光が集まる。
「その光線は流石にちょっと不味いかな?」
だが、ノアの口調はいつもと変わらない。
魔王が〝光線〟を放つ、タイミングに合わせて、ノアは真っ直ぐに右手を伸ばし──
ビュン、ドババババババンッ──!
魔王の一撃をノアは片手で止める。
「……!?」
魔王は不敵な笑みを浮かべるが、その表情には少なからず驚きの表情が浮かぶ。
当たれば街ひとつ破壊できる自身の攻撃を、この短時間で三回も防がれた。少なくとも二人、魔王の当たれば一撃で街を破壊する、強い攻撃を防ぎ得る人間が相手にはいる。
これは魔王にとっては大きな誤算だった。
「言った筈だよ、貴方を止めに来たって。私もかなり魔力を使ったけど、それは貴方も同じ筈だよね?」
魔力を込め、無詠唱で結界を右手に張り、魔王の一撃を防いだノアは魔王に対し、軽く笑いかける。
「……ザレゴトヲ」
初めて魔王が喋る。
「貴方も喋るんだね、和解とかできないかな?」
ノアは気さくに魔王に話しかけるが、
「…………」
魔王は無言だ。
まるで、聞こえてすらいなかったかのように。
「……無理みたいだね。なら、私も容赦はしないよ?」
ノアの声音は相変わらず変わらないが、発した今の言葉には、普通の人間が聞いたら、ブルリと芯から震える程の不思議な凄みがある。
「私は貴方を倒せないと思うよ」
ノアが言う。そしてノアは魔王ガリアペストから放たれる攻撃や、魔王の周りに漂う毒や病原体のガスを物ともせず、完璧なまでにそれらを防ぎきっていた。
「私は盾、貴方を倒す矛は別にいる」
──バン! ドン!
そう告げたノアは再び魔王の攻撃を防ぐ。またもや攻撃を防がれた魔王は無言でノアを見つめる。
*
──大都市エルクステン
西の砦・城壁付近──
そこにはギルド第3騎士隊が集まっていた。
その隊の第3騎士隊長──ヴィエラ・フローリアは自身の翼を広げ、空から街の外を見ると息を呑む。
「な、なんなの……!? あの数の魔物は!?」
街の外から押し寄せる魔物の大群の数を、ヴィエラは最早数える気が起きなかった。
魔王城から現れた魔物とは、また別に魔物が大量に現れたのだ。
「ヴィエラ隊長! 急に街中に魔物が現れました!」
「なんですって!?」
続いて、空を飛んできた〝鳥人族〟の女性隊員が、ヴィエラに向かい口を開く。
「報告します、第6隊から救援要請です。街に現れた魔物に対処しきれない模様です。また魔族の出現も確認しているとの事です」
「了解、分かったわ、魔物に魔族に魔王……これはもう〝魔王戦争ね〟──フィオレ、街の外の大量の魔物はギルドマスターに報告を!」
「分かりました、お任せください」
「──全隊、私に付いてきなさい! 街中の魔物の討伐と、市民の避難を最優先して行いますッ!!」
「「「「「「「「「ハッ!!」」」」」」」」」
*
──大都市エルクステン・街中──
街中に現れた魔物と、冒険者達が戦っていた。
「くそ、何処から現れたんだ!? この魔物は!」
「黒い玉飛んできて、そこから魔物が現れたんだ。あの黒い玉は何だったか、どこかで聞いた事がある」
「──ヴァ、変異種だぁぁ!!」
四本腕のミノタウロスが現れる。
その手には斧や棍棒と言った武器を持っている。
「お、おい、俺達じゃ〝変異種〟なんて……」
「ぎゃー!!」
「な、何て固さだ、皮膚に刃が弾かれたぞ……!」
その時だ、
「はい、獲った──」
首にクロスした腕を回し、ゴギュリッ、バン!
そんな音と共にミノタウロスの首が弾け飛ぶ。
「な、何だ、こ、子供ッ!?」
その姿は小さい、見たまんまは子供だ。ピンクと白の髪に左右の目の色が違う。そして性別は男か女か判別しづらいが、綺麗な顔立ちをしている。
「子供って酷いな、こう見えても僕は君達の何倍も年上なのに──って、あれ? 首を獲ったのに死なないな? 流石は〝変異種〟って所か、しぶといね」
バン! ズババババンッ!
その人物は残ったミノタウロスの胴体に、蜂の巣のように風穴を開けていく。
「六魔導士……〝霧裂〟パンプキック・ジャック……」
不意にそんな声が上がる。
「あ、あの、幻霊種か……!?」
「あれ? 何だ、僕のこと知ってるんだ」
「何でもう一人六魔導士がここに!? 予定だと〝独軍〟が来るだけじゃ無かったのか!?」
「ああ……大聖女にどうしてもと頼まれてね。急遽僕も来たんだ。当初はいつも通り66日の魔王が変わる日の〝八柱の大結界〟のある街の防衛策として、ここに来るのはシラセ一人の予定だったよ。まさかそれが〝魔王戦争〟にまで発展するとはね、凄いや彼女」
パンプキックは空を見上げる。
「まあ、取り敢えず、街の魔物を何とかしないとね」
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