第109話 ミリア・ハイルデートはミリアである30
*
(さっきの人達は誰だろう。聖女様ともまた違った、とても優しい感じの人達だった。それにこんなに歳の近い人と言葉を交わしたのは生まれて初めてだ……)
そんな事を考えながらミリアは何処までも、ゴロゴロ、ゴロゴロと、止まること無く転がっていく。
──ヒュン! パッ!
ボフッ!
「──!?」
転がっていた私は何かにぶつかる。
「これ以上転がってくと湖に落ちちゃうよ?」
私にそう話しかけて来たのは、さっきの黒い髪の人だ。その隣には金髪のエルフの人がいる。
……い、いつの間に移動してきたんだろう……
私は特に当てもなくゴロゴロと転がってる内に、いつの間にか湖に落ちそうになってしまっていて、それを2人に助けられたみたいだ。
「大丈夫? 立てる?」
金髪のエルフの人が私に手を差し伸べてくれる。
「だ、だ、大丈夫です……」
私はその手を恐る恐る握り返す。
でも、私の心配を他所に、この人の手も温かくて優しい手だった。
「よかった。私はクレハ。で、今、君と手を繋いでるエルフの女の子が──」
「エメレアよ、宜しくね」
何故か懐かしく感じる、ホッとする優しい声で、二人が私に〝ステータス画面〟を見せながら、自己紹介をしてくる。
―ステータス―
【名前】 クレハ・アートハイム
【種族】 人間
【性別】 女
【年齢】 12
【レベル】16
―ステータス―
【名前】 エメレア・エルラルド
【種族】 エルフ
【性別】 女
【年齢】 13
【レベル】18
〝ステータス画面〟──『人に自己紹介する時は、必ずこれを見せて、可能なら相手からも見せて貰いなさい。これは誰も偽れないから』と、私はお母さんに教わっている。
「み、みゅリア、ミリア・ハイル……デートです……」
(か、噛んでしまった……後は〝ステータス画面〟に任せよう……ごめんなさい……)
―ステータス―
【名前】 ミリア・ハイルデート
【種族】 人間
【性別】 女
【年齢】 8
【レベル】10
「ミリアちゃんって言うんだ、宜しくね」
「言い名前ね、私もよろしく」
二人は少し屈んで、私の目線に合わせてくれる。
「あ、はい。クレハさん、エメレアさん、よ、よろしくお願いします」
バッと私は深く頭を下げる。
「あ、そんな畏まらなくても……私の事はクレハって呼び捨てで呼んでくれればいいし、敬語も要らないよ」
「え、で、でも……」
私は困惑する。
「あ、ほら、クレハ。ミリアちゃん困ってるわよ? 勿論、無理にじゃないから、さんでもちゃんでも、敬語でもタメ口でもいいってことよ──まあでも、私のこともエメレアって気軽に呼んで貰えると嬉しいわ、敬語も要らないわよ」
「言われてみれば、確かに私もエメレアちゃんの事、エメレアちゃんって、ちゃん付けで呼んでるしね」
「じゃ、じゃあ、クレハ、エメレア、よろしく……」
自分でも、ギリギリ聞こえるぐらいの蚊の鳴くような小さな声だった気がする。でも、目の前の二人はちゃんと聞いてくれていて、クレハは「うん、よろしくね!」と嬉しそうに微笑んでくれたり、エメレアはぴょんぴょんと跳び跳ねて、クレハに軽く抱きついて喜んでいる。
「あ、あの……私の事はミリアって呼んでください」
「分かった。じゃあ、ミリアって呼ぶね」
「ええ、私もミリアって呼ぶわね」
ミリアと呼び捨て名前で呼ばれたのは、お父さんとお母さん以来だ、そう考えると少し照れ臭くなる。
「そういえば、ミリアはここで何をしてたの? それにさっきの青い竜は知り合い? 凄い懐いてたみたいだったけど?」
自己紹介も終わるとクレハが、改めて疑問に思ったことをミリアに質問する。
「あ、こ、この湖と、湖から200mぐらいの範囲の森は家の所有地だから、普通に自分家の敷地内に居た感じです……後、タケシは昔から、家の所有地を守ってくれてるんです」
まだ恥ずかしさが残り、言葉遣いに慣れないミリアの話し方には敬語とタメ口が混ざるが、クレハとエメレアは微笑しそうにミリアを見ている。
「「……え、ここ所有地なの!?」」
二人は揃って声を上げ、私を振り替える。
「……う、うん。お母さんもそう言ってましたから」
(不思議な感覚だ。クレハとエメレアとは会ったばかりなのに、目を合わせたりしても、怖くなったり、変に気まずくもならない……)
「クレハ……これ、私たち普通に不法侵入よ……」
「え、エメレアちゃんのせいじゃないから、私が全部いけないから、落ち着いて、エメレアちゃんは大丈夫だよ」
顔が青くなるエメレアをクレハが必死にフォローする。
「だ、大丈夫です。私は気にして無いし、タケシにも許可を出したから、これからは自由に入れます」
エメレアをフォローするクレハを、あたふたとしながらも、しっかりとフォローするミリア。
「う……本当……? そう言ってくれると、助かるけど、知らなかったとはいえ、本当にごめんなさい」
「ごめんなさい」
クレハに続きエメレアも頭を下げる。
「ほ、本当に大丈夫だから、気にしないでください」
手をパタパタと振るミリアは、深々と謝られ、逆に困った様子だ。
「そ、それに、二人ならいつでも家の湖も森も遊びに来て大丈夫だよ。果物とか沢山あるから持っててください」
まだミリアの言葉はぎこちないが、精一杯自分の気持ちを伝えようと頑張っているのが伝わってくる。
「と……言われても……流石に……」
「……そ、そうね……気持ちは凄く嬉しいけど……」
ここからだと向こう側の対岸まではあまりよく見えない。そしてどんどん中心に近づくにつれ深くなる、透き通るような神秘的なまでに美しい湖と、その湖を囲む──立派な植物達の緑で生い茂る綺麗な森。
そこから『果物も沢山あるから持ってって』と言われても、流石に少し気後れをしてしまう。
それについさっき──
世にも恐ろしい〝青い竜〟に襲われたばかりだ。
「あ、あの、よければ私が案内しましょうか……?」
「え、案内って、湖と森を? いいの?」
「うん、わ、私は時間だけはありますから。3人でいきましょう。湖や森には魔物も出る時もありますが、基本的にタケシが倒してくれるから心配しないでください」
クレハの質問に頷くミリア。
「あはは……なるほど。じゃあ、お願いしてもいいかな? 私、行ってみたいな」
「あ、私も是非お願いしたいわ!」
「はい、じゃあ、こっちです」
そうしてミリアに案内され、クレハとエメレアは、ミリアの家の森や湖を見て回る事となるのだった。
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