オールイン
「違う?どういうことだ。」
俺の質問に佐々木はこう答えた。
「藪崎さんは凡人なんかじゃありません。勉強もスポーツもできるんだから。」
「確かにその程度のことなら簡単にこなせるがこんなこと誰でも出来る。だが俺はさっきギャンブルで負けたんだ」
少し感情的になってしまった俺に佐々木は先程と変わらない口調でこう言った。
「ずっと勝ち続ける人なんてのはこの世に存在しないんです。今回の負けはたまたまです。だってそうでしょう、ギャンブルなんて所詮運なんですから、今負けたなら次勝てばいい。次負けたならその次勝てばいいそういう積み重ねがギャンブルだと思うんです。あんまり僕が人に言える立場じゃないんですけど。」
そこで俺は目が覚めた。はじめからイカサマを仕掛けて勝とうとしていてが、そんなのはギャンブルじゃない。そうだもう一度本郷と戦うんだ。
「あの、だからさっき騙して手に入れた藪崎さんの200万を返そうと思うんです。」
「いや、それは勉強代として受け取ってくれ。」
その後、二人でいろいろな話をした。佐々木がピアノの実力だけでこの学校に来た事、あの裏面と表面が違う仕様になっているトリックカードは俺と佐々木が対戦するときだけ使ったことなども聞いた。
「今、佐々木と話していてもう一度本郷とギャンブルをしようと思う。」
そう言ってから俺はある事をスマホで調べた。ずっと本郷の行動に違和感があった、その正体は調べた結果が証明していた。
「なるほど、、、佐々木、次のギャンブル俺と協力してくれ。」
佐々木は俺を騙した事に罪悪感を感じていたから協力を頼んだ。だが佐々木は悩んでいた。人を裏切る事が嫌なのだろう。
「佐々木、今度はお前以外の金持ちじゃないやつが狙われるかもしれないだろ。本郷は社長令嬢だから少しギャンブルで負けたくらいではどうってことはないから大丈夫だ。だがこれ以上被害者を増やさない為にも少し懲らしめるだけだ。」
俺の話を聞いて佐々木は俺と協力することを決めた。そして俺は計画のほぼすべてを話した。
(あとは俺にツキが回ってくれば必ず勝てる)
その後俺達は教室に戻った。そこでは十数名がギャンブルをしていた。俺や佐々木が始めたことで、みんながやりやすくなったのだろう。本郷は椅子に座り取り巻きの連中と話をしていた。
「よお、イカサマ師の本郷さん」
俺は嫌味たっぷりに言ってやった。
「なんの用かしら、負け犬の藪崎君」
「俺とポーカーで勝負しないか?」
「さっきも言ったでしょ、私は負け犬の指図には乗らないのよ。」
もちろんこの答えが返ってくるのは予想どうりだった。
「ああ、だからお前が俺に一度でも勝てれば俺の高校生活をお前の自由にさせてやる。」
本郷は何を言っているのかよくわかっていないようだった。
「つまり、一度でも勝てば俺をサンドバッグにしてもいいし、借金の連帯保証人にしてもいい、しかも俺の体を好きなようにできるってことだ。」
本郷は笑っていた。
「黒服のおじさん、この人が高校生活を賭けるって言ってるんだけどこういうのもちゃんと取り立ててくれるの?」
本郷は黒服に聞いた。つまり、この勝負に乗るということだ。
「ああ、ちゃんと取り立ては行う」
黒服の答えを聞いた本郷はこう言った。
「別にあんたの体なんかに興味はないけど、この勝負乗ったわ。」
俺は高校生活をオールインした。一度でも負ければほぼ「死」だ。絶対に負けられないが俺はなぜかわくわくしていた。恐らくこれが刺激のある日々なのだろう。
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