オーパーツ
『第3回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞』への投稿作品になります。
小説家になろうでは初投稿になります。よろしくお願いします。
変なものを見つけた。
僕は祖母の遺品整理の最中に見つけた小さな箱の中から、四角い『何か』を取り出した。
寒天のようなそれは、とても固くて真っ白だ。爪でひっかいてみるがへこみも傷もできず、密度が高そうな印象があるのにまるでマシュマロのように軽い。ひっくり返してみたが裏も同じ正方形の面があるだけだし、床に落とすと勢いよくぶつかったというのに大きな音をたてることもなく、ぱちんと軽い音を残して床に横たわった。
そして僕はもう一つそれの特異点を見つけた。天井の輪っかみたいな蛍光灯の光に透かすと、それはまるでオパールみたいな、霞がかったパステルカラーに変化した。多面カットされた宝石のように平らな面の中で色がきらりきらりと移り変わっていて、それはある種の万華鏡のようだった。
荷物の散らかる床の上に寝転がって観察していたが、僕はすぐにそれを放り投げることになった。急にそれがぶるぶる震えだしたのだ。驚き僕が遠巻きに様子を見ていると、それはふわりと宙に浮かび上がった。
僕は唖然とした。それはまるで天国へ召される魂のようだった。際限なく上っていく気がして、気付くと僕はそれを元の箱の中に閉じ込めていた。箱ごと浮かんで行くのではと思ったが、箱に入れた瞬間何もなかったかのようにそれは沈黙した。
僕は仮説をたてた。これは光がないと動けないのではないか?僕は箱から取りだした。そして蛍光灯の下に置くと、それはまたふわりと浮かび上がった。僕の仮説は当たっていた。僕は研究者になった気分になった。
不思議なことばかり言う祖母だったからこのような不思議なものを持っていてもさほど疑問はなかったが、それにしてもこれは一体何かと僕は思案した。現代の技術ではまだ作ることができないものに思えるし、そもそもこんな商品見たことがない。
そして僕は一つ、妄想という名の仮説をたててみた。祖母は未来人で、これは未来から持ち込まれた、未来にとってのオーパーツ。
オーパーツ。場違いな人工物。その言葉は、それを言い表すには最適なものに思えた。
僕はなんだか楽しくなった。祖母は未来人で、僕は未来人の孫。これは未来にのみ存在するもので、現在には存在し得ないもの。
僕は、今まさにオーパーツを目にしている。それは、なんともいえない高揚感を僕に与えた。