過去の真実
過去編の最後になります。
まだまだ読者さんは多くないですが少しずつPV数も増えては来ています。
このまま地道に投稿していくので皆様呼んでください。
そしてブクマや感想などお願いします。
それでは本編をどうぞ。
目の前には赤い液体が散乱していた。
そしてその中央には体全体が赤く染まり倒れている女性と手に包丁を持ち同じく体全体が赤く染まり立っている男性がいた。
その男性には見覚えがある。
私の父親がそこには立っていた。
「よし、やったぞ。咲を守った……」
「ぱぱ……? なにしてるの…… ? 」
「咲 !? なんでここに !? 」
父親は酷く驚いていた。
それもそのはずだ。
自分の母親を自分の父親が殺した現場を見られたのだがら。
だが私は自分の母親の顔を知らない。
「ぱぱ、そのおんなのひとだいじょうぶ?」
「ぐあいわるいの?」
「俺は何も悪くない。咲を守りたかったんだ」
純粋な気持ちで純粋な質問をする。
しかし父親とは会話はできなかった。
父親は酷く焦っていて私への弁明を続けていた。
その弁明を聞いている時にパトカーのサイレンが聞こえた。
父親はその音に酷く脅えている様子だった。
サイレンが家の前で止まる。
見知らぬ大人達が勝手に上がり込んで父親を連れていった。
「俺は悪くないんだ。蘭が悪いんだ」
「これは正当防衛なんだ」
父親は何かを強く訴えていたがこの頃の私には難しく理解できなかった。
私は見知らぬ大人の一部に手を引かれ桜と一緒にパトカーに乗った。
私は父親が持っていた包丁や倒れていた女性、辺り一面が赤く染まっていた現場を見てしまった。
頭の中から離れていかない。
頭の中でその記憶が繰り返される。
そして徐々に子供ながらにして理解してしまう。
自分の父親が人として一番してはいけないことを犯してしまったという事実を。
見知らぬ大人が何かを聞いてくるが何を話しているか理解できない。
私の頭の中では先程の記憶でいっぱいだからだ。
鮮明に思い出せてしまう。
なんて迷惑なことなのだろう。
その記憶を繰り返していたが脳が限界だったのだろう目の前が真っ暗になった。
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私は目覚めた。
重い瞼を開けて当たりを見渡す。
白い天井に白い壁、私の知らない部屋だった。
知らない部屋のベッドの上に私はいた。
「ここはどこ…… ?」
私はそう発したが誰も答えてはくれなかった。
誰もその部屋にはいないのだから当然のことだ。
私は何も理解できずにベッドの上で待つしかなかった。
本来なら探検と銘打って歩き回るのだろうが体がだるく動きたくなかった。
1時間は待ったのだろうか。
子供としては待つのはこのくらいで限界だ。
多少体も回復しダルさも無くなってきたのでそろそろ痺れを切らし動き出そうとした時に部屋の扉が開いた。
「あっ、咲ちゃん目覚めたの !? 」
「さくらっ !! 」
「良かった …… 。すぐに大人達連れてくるね」
やっと人に、しかも親友の桜に会えた喜びも束の間、桜は部屋を出ていってしまった。
開いたままの扉から見える廊下を看護師さんが通るのを見てここが病院だということを理解した。
暫く待つと桜が大人を連れて戻ってきた。
連れてきた3人で1人が医者。2人が刑事だという。
医者から問診を受け答え終わると刑事達が事情聴取をしてきた。
「君が無事でよかったよ」
「辛いものを見てしまったね。無理はしなくていいから分かることだけ答えてくれ」
私は様々なことを聞かれたが殆ど理解できなかった。
刑事達から父親が逮捕されたこと、被害者の女性が自分の母親ということを、私は保護施設に引き取られることを伝えられた。
私は理解出来ていなかったので空返事を繰り返していた。
「大変な時に多くのことを伝えてしまい申し訳ない」
「これから辛いこともあると思うが君には頑張って生きて欲しい」
私から何も得るものは無かったのだろう、そう言い残して刑事達は病室を後にした。
刑事達が出ていくと桜が病室に入ってきた。
「大変だったよね。ごめんね私のせいで」
「私が咲ちゃんを家に誘ったせいで」
「そんなことないよ。さくらはわるくないもん」
私がそう答えると桜は嬉しそうな顔をしていた。
「咲ちゃんには私がいるから安心して」
「無理せず私を頼ってね」
話している内に面会時間が終わってしまった。
面会時間の間はずっと桜が優しい言葉をかけてくれた。
桜が親友でよかったと心の底から思った。
病室から出ようとした桜が立ち止まった。
「私が咲ちゃんの一番だからね」
最後にそう言って病室を出ていった。
その時の桜の表情は不気味で怖いほどに美しかった。
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数日後に私は退院した。
帰る家はなく施設に案内されてお世話になった。
退院した当日は学校は休み次の日から行くことになった。
そして次の日に学校に行くと桜の姿は無く机も無くなっていた。
先生に聞いたところ父親の都合で転校してしまっとのこと。
桜の都合ではなく桜の父親の都合。
なのに私は桜に裏切られたと思った。
裏切られたと思い放心状態のままその日は終えて施設へと帰った。
そして次の日に学校に行くと私の机が無くなっていた。
この日から私へのイジメが始まった。
父親が元妻を殺した犯罪者なのだ。
イジメの理由には充分すぎる程だった。
そしてそのイジメは中学生になっても高校生になっても続いた。
親友に裏切られ友達だったものに裏切られイジメられ私は自ら命を断つことを選んだ。
これが事件後のざっくりとした記憶である。
思い出したくもない記憶だが鮮明に思い出せてしまう。
そして命を断った後はこの世界にいたのだ。
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「私が咲ちゃんの一番になるためには必要な犠牲だったんだよ」
「そして咲ちゃんは私とまた出会って私は一番になるの」
「自殺を選ぶ程に追い詰められて弱った心を私が優しく包み込むんだ」
と桜は私の隣で悪びれもなく話す。
やはり私は考え事が苦手なのだろう。
桜が計画したことを伝えられて頭が混乱している。
そして桜は私を見つめているようだが私は視線を合わさない。
桜は少しムッと表情をした。
それを無視して私は質問をした。
「なんで桜はこんなことをしたの!?」
「ん?だからさっきも言ったじゃん」
「覚えてないなら改めて言うね」
「私が咲ちゃんのこと大好きだから」
その言葉を発した桜の表情はあの時と同じだった。
不気味で怖いほどに美しく更に狂気的な怖さを感じた。
過去編書き終わりました。
イジメのシーンはまた後で詳しく書く予定ですが今回の過去編では省きます。
次回は百合展開と第2ゲームの予定です。
毎日投稿してるのでブクマや感想などお願い致します。