差し伸ばされた手
第2話目投稿させて頂きました。
ストックを貯めてから連載するべきだと後悔しております、、、。
何とか1日1本投稿できて良かったです。
まだまだ全然慣れませんが皆様に読んで貰えたら嬉しいです。
感想や評価、レビュー、ブクマ頂けると嬉しいです。
「ご、ごめん……君が犠牲になってくれないか」
「な、なんで!?」
優しいというイメージしかない彼。
そのイメージとは真逆の言葉が口から出た。
想像と違ったため私は反論ができず理由を聞くことしか出来なかった。
「全員が自殺したと聞いて思ったんだ。僕は自殺してしまったことを後悔している」
「だから僕は生きる理由がある」
「さっき言ったじゃないか。君は自殺したのに元に戻りたいと言っていた」
「だったら先に進む権利を僕に譲ってくれ」
彼は先程の発言の意図を明確にした。
私は納得はしなかったが反論が出来なかった。
「ほら、僕の言う通りだろ?」
「だから僕のために犠牲になってくれ」
「最後に僕のために誰かのために役に立つ人間になってくれ」
畳み掛けるように発言してきた。
私に反論の余地を与えないつもりだと思う。
だが彼はそもそもを間違っている。
私は誰かに意見を言えるほど強くない。
そんな人間だったら全てから逃げていない。
言い返せるような強い人間になりたかった。
そう思うだけで私は何も出来ない。
(彼の言う通りだ。犠牲になって最後くらい誰かのためになろうか)
(それに彼の思い通りに動いた方が楽なんだろうな)
(反論しても私はどうせ勝てないし)
(今まで辛いことばっかだった。辛いのにも慣れているから負けてもいいし)
私は考えていた。
考えていたせいで2人の間には沈黙の気まずい雰囲気が漂っていた。
私は顔を伏せ目を逸らしているが彼はこちらを見続けているようだ。
真剣にお願いをしているというアピールなのだろうが私にはできない行為なので尊敬する。
私はこれから逃げようとする。
そして顔を上げて彼に返答をしようとするが目線は逸れたまま。
「わ、私でよければ犠牲に「ちょっと待って」
私が震える声で承諾しようとしたその瞬間私の言葉が遮られた。
その声の主を探しすため視線を上げた。
そしてそこにいたのは現実では関わらないであろう派手な見た目な女性だった。
「他のペアだから口出したくなかったけど、流石にそれは見過ごせないかな」
「そんな気の弱そうな子にそんな言い方はずるいんじゃないかな?」
「仮にも男なんだから正々堂々しなさいよ」
彼女は私のため言ってくれるようだ。
自分の計画を邪魔されてイラついてるのだろうか立っているのに貧乏ゆすりをしていた。
貧乏ゆすりに気づき止めた後、腕を組み話し始めた。
「ちょっと君 !! 僕達の話し合いに口を挟まないでくれ」
「僕は素直な気持ちを伝えて彼女はそれに対し首を縦に振ろうとしていた」
「何も間違っていないじゃないか」
彼の反論に対して派手な見た目な彼女は全く納得していないようだった。
そもそも反論を聞こうともしていなかったように見えた。
「どうでもいいんだけどさ。君の優しそうなキャラが崩れ始めてるよ?」
「腕を組んじゃって威圧的で怖いなー」
「あ、知ってる?腕組みって行為には自分を守ろうっていう心理的防御らしいよ」
派手な見た目な彼女は彼に指摘した。
そうすると彼は苛立ちと恥ずかしい感情の混ざり合ったような表情をして腕組みをやめた。
「あれ?腕組みやめちゃうの? それじゃ図星って認めてるようなもんだね」
「やっぱりあの優しさは演技だったかー怖い怖い」
弱みを見せた相手に追い打ちをかける。
先程彼が私にしていたことと同じだが彼に同情してしまった。
ということは見た目が派手な彼女はその感情を私に抱いて仲裁に入ったのだろう。
「お前はお前達のペアのことに集中しろよ」
「残念でしたー。私たちのペアは相手側が犠牲になるって立候補してくれたからもう決まってるの」
「なんだって……」
想像と違う返答が来て驚いたのだろう。
彼はアドリブに弱いのか何も言えなくなってしまった。
「私達はすんなり決まったからいいけど他のペアはやっぱなかなか決まらないみたいだね」
「それでさ先に決まった私から提案なんだけど1番性格差がある君達のペアは公平に決めようよ」
「多分このゲームの主催者の思惑通りなんだろうけどこの部屋には色々あるからそれを使ってさ」
彼女は提案をしてきたが彼は乗ってこないのが私にも分かった。
だって現在圧倒的に自分が有利な状態なのに公平をも求めるはずがない。
なぜ彼女は私の為に戦ってくれているのだろう。
「君の提案に乗る必要は無いはずだ」
「そもそもこれはペアから1人を決めるんだ。君には関係ないだろ」
私の想像通り彼は彼女の意見に反発した。
彼女も想像していたのだろうニヤニヤした表情浮かべていた。
「えー、男ならこの提案に乗るでしょー」
「ぷぷぷっ、ビビっちゃってるのかな?」
「ビビってるならしょーがないなー。せめて男らしく私の目をしっかり見て断ってね?」
彼女はまさか子供のような挑発をした。
私でも分かる。
これは絶対に乗ってこない。
無駄だと分かってるのに何故このような事をしているのだろう。
「そんな見え見えの挑発に誰が乗るか」
「それでも俺も男だし堂々と決めてやるよ」
彼は彼女の目を見つめ断ろうとしている。
(何だったんだこの茶番は。結局また最初に戻って私が犠牲になるだけじゃん)
(当事者なのに私何も話してないや)
(ありがとう。派手なお姉さん見知らぬ私のために)
「分かった公平になるようにこの部屋にあるものを使って決めよう」
(……え? )
私の想像とは違う言葉を彼は発した。
いやこの会話が聞こえている全員の想像とは反していただろう。
ただ1人提案をした彼女を除き。
彼女は計画通りなのだろう自分の思い通りに事が進みご満悦な様子だ。
その提案に乗った彼すらも驚きの顔をしているのに。
「はいはーい、決定でーす」
「それじゃこのトランプでも使おうか」
彼女は既にトランプを手に持っていた。
やはりこのような状況になることは計画通りのようだ。
「おい、待て !! 俺は……」
彼は驚きから我に戻ったのか意義を申し立てようとしたが言葉が出てこない様子だった。
彼自身も提案は断るつもりだったのだろう。
だが自分の意思と反して承諾したのだから何も言えない。
ここにいる全員が彼の言葉を聞いてしまっていたから。
「落ち着いて落ち着いて」
「もう承諾はしちゃったんだし気持ち切り替えようよ」
「君が1人に選ばれたんじゃなく公平になるだけなんだから」
「それじゃこのトランプを使ってポーカーとかはどうかな?」
「ただ交換1回だと運の要素が大きいから3回とかでどうかな?」
彼女は彼から完全に主導権を奪った。
彼女の独壇場だ。
種目とルールが手早く提示された。
「待てよ !! 交換が増えただけで運の重要性は変わらないだろ」
彼は反論した。
ただこの場の主導権は彼女にある。
「だって技術のみのゲームだと得手不得手がどうしても出るから公平じゃないでしょ?」
「それに運も重要だけど交換が増えれば相手の捨て札とか残り枚数とか計算できるし運だけじゃないじゃん? 」
すぐさま彼女は彼の意見を否定した。
それも納得せざるを得ない反論を。
「……くそっ」
「それは肯定だと捉えるねー」
「それじゃゲームの準備するね」
「待ってくれ。 ゲーム中集中したいから先にトイレに行かせてくれ」
彼は席を外した。
自分が舌戦で負けたこともこの場を離れたかった原因だろう。
「ごゆっくりどうぞー」
彼女は快くそれを承諾した。
彼がこの場からいなくなると彼女は私の傍に歩み寄ってきた。
「君達のペアの話し合いに割り込んでごめんね」
「い、いえ、助けていただいてありがとうございます」
「助けたって程じゃないけど君のためだからね」
「え、私のためって?」
(あれ?なんだろう、近くでよく見るとこの顔見覚えがある気がする…… )
「やっぱ私の事覚えてないのかー。そこそこ記憶に残ることしたと思うんだけどなー」
「あ、貴女は浜岡 桜? 」
「正解!! 小学校以来かな?」
何故最初に見た時に気づかなかったのか、それはあまりにも昔の姿とかけ離れていたからだ。
ただよく良く考えれば彼の意志とは違った不思議な言動で思い出せたはずだった。
「まぁ、気づかないのも無理ないか。昔はホントに地味子って感じだったからね」
「時間ないから思い出話は後にして伝えたいことだけ」
「あの時言ってた秘密が本当ならこの勝負勝てるよね? 私はそれを信じてるから」
「それじゃ勝った後にゆっくり話そっか」
「頑張ってね、藤枝 咲ちゃん」
人に名前を呼ばれたのはいつぶりだろうか。
しかも呼んでくれたのが桜だという。
そして彼女は立ち去っていった。
彼女と私は過去に共通点があり親友と呼べる間柄になったと私は思っていた。
共通点は彼の意志とは違った発言や先程桜が言った秘密だ。
だがある日突然桜は私の名前を呼ぶことはなくなった。
それだけではなく、クラスメイト全員が私が関係する全ての人が私の名前を呼ぶことはなくなった。
そう、彼女が私の人生を狂わせた。
そして、私が彼女の人生を狂わせた。
昔のことを思い出していると彼がトイレから戻ってきた。
私の思考はもうぐちゃぐちゃだ。
そのことが表情から見て分かるのだろう。
私の複雑な表情を見て彼女は嬉しそうにしてこう言った。
「丁度いいタイミングだね。それじゃゲームを始めよっか」
やっと次の話でゲームらしいゲームに入れます。
前置き長すぎてすみません。
名前も2人ですが出てきました。
次の話も頑張りますのでブックマークして頂ければ嬉しいです。
読んでいただいてありがとうございます。