第7話 謁見
扉の中に入ってからまたどれくらい歩いただろうか。王族の住んでいる空間だから厳重になっているのだろう。それにしても同じ場所を回っている気がする。
(クフト、さっきから同じ場所を回っていない?)
「やっと気付いたか。回数は13回。結構早い方になるな。」
(まさか、このまま気づかなかったらずっと回っていたの?)
「当たり前だ。これぐらい気付かないとこの世界では生きていけない。気付いたことだし陛下に会いに行くぞ。」
今まで歩いていたのが、嘘みたいに直ぐに着いた。さっきとは違って扉の前に兵士達が並んで立っている。そしてクフトは服装を変える。さっきまで着ていた制服ではなく、手帳にもあった白龍の模様がマントに描かれている白い軍服になっていた。それを見た兵士達は敬礼をしていて、扉を開けていた。
「お久しぶりです。クロスフィールド閣下、陛下が中にてお待ちです。」
「ああ。近いうちに召集をかける。またその時に。」
クフトはそれだけ声を掛けてきた兵士に伝え中に入る。部屋の中は高そうな絨毯にシャンデリア、飾られている調度品もどれをとっても高価なものだと思う。
その奥には机とソファが置いてあり、奥に白い髭を生やした優しそうな男性、その横には金髪で眼の色も金色の女性、向かい側にはシャルル王女に、さっき見た女性と同じような容姿をした僕と同じぐらいの男の子が座っていた。
「アルベルト陛下。クロスフィールド公爵、地球より帰還したことを報告致します。」
クフトは机の手前にまで行き、髭を生やした男性の前に片膝をつき頭を下げていた。
「ハルト殿、お待ちしておりました。救国の英雄が頭を下げなくても良いですよ。」
陛下がそう言って、席を勧める。シャルル王女以外、誰と思いながら黙っていた。
「「えっ。」」(えー!、と…父さん⁈)
「流石は陛下です。参考までにどうしてわかったのかお聞きしたいですね。」
クフト改め父さんが陛下に問いかける。ずっと一緒にいた僕だってわからなかったのに…。
「簡単なことだ。魔力が2種類あり、片方が貴殿が得意としていた水系統が強く現れていること。白龍を使えるのは貴殿のみだ。容姿が違えどすぐわかる。」
陛下はそれを誇らしく言っているが、父さんは苦笑いしている。
「あー。確かにそんなこと言っていたっけ。さて、挨拶も済んだから元に戻るかな。」
父さんは納得したのか満足気に頷いた。そして身体に魔力を纏わせたと思ったら身体が光り出した。収まったと思ったら、目の前に父さんがいた。青い軍服に青龍が描かれたマントを纏い、見た目も若返っている。
「さて、蓮。こちらがアルベルト陛下。その横がミリア王妃、向かいがアリク王子、そしてこちらがシャルル王女で、お前の婚約者だ。」
「えっ。今なんて言ったの?」
あまりにも衝撃的なことを言われた気がする。けど僕以下誰も驚いていない。全員知っていたのか…。
「だから、シャルル王女がお前の婚約者。」
「じょ、冗談だよね。なんかのドッキリでしょ。そうだこれは夢だ。記憶の追憶だって言っていたし…。そうだ夢だ。」
「蓮、これは現実だ。夢でも記憶でもない。現実に起きていることだ。そしてお前が第1小隊隊長だったのが夢だ。正確には未来でのことだ。」
「それじゃ、何故僕は彼処にいたの?」
「これから始まる戦争のためだ。お前自身を守る為に必要だった。この世界に来ることは決まっていたからな。後はお前自身にチカラをつけてもらうだけだった。その証拠に隼人は覚えてなかっただろ。」
「そうだけど…。とりあえずわかった。で此処に連れて来た、本当の理由は何?」
僕は納得出来ないけど、話を進める為に今は心に閉まっておこう。
「陛下、予定通りにクロスフィールド公爵の地位を蓮に譲渡します。そして私はクロスフォード公爵当主に復帰致します。」
父さんは陛下にそう言っているが、僕が公爵になるの?いきなりそんなこと言われて困るけど!
「レン殿、1つ質問をしたい。貴殿は何のために戦う。素直な気持ちを知りたい。」
陛下は真剣な顔でこちらを見てくる。これはふざけたらダメだ。自分が思っていることを伝えないと。
「わかりました。僕は弱者の為に、守るべき者の為に戦います。」
「なるほどなぁ。例えばどんな者達だ?」
「この国に例えると国民です。どんな国でも民がいるからこそ成り立ちます。そんな民を守るべき立場の人間が苦しめていたら、それは単なる奴隷と変わりません。そして傍観している者も一緒です。僕はそんな人間にはなりたくはないです。」
「理由はわかった。最後に聞こう。貴殿は例え国であろうとも戦う意志があるのかを。」
「はい。それを国民が望むなら僕は先頭に立って戦います。それが勇者や英雄と呼ばれる者の使命だから」
「そうか…。良かろう。第27代国王 アルベルト=アースティアの名の下に汝をクロスフィールド公爵家当主と認めよう。そして第1王女 シャルル=アースティアの婚約者とする。ハルト殿、レン殿。この後の夜会に参加してくれ。」
「はっ。」「わかりました。」
僕は真面目に答えたことにより、公爵の身分と婚約者を手に入れた。これからどうなるのだろうか…。