第6話 召喚
「はじめまして、私はこの国の第1王女、シャルル=アースティアと申します。この度はこちらの勝手な理由で呼んでしまい申し訳ございません。」
もう1人の僕が言っていた少女が頭を下げている。銀髪で目が青く、誰もが見ても美少女と認める女の子だ。騒いでいた他の人達もその姿に魅せられて、黙った。
「どうか皆様、私達の国を救って下さい。今、この国は魔物の襲撃を受けています。最初は私達で対処が出来ていたのですが、段々と魔物が強くなっていきそして魔王が現れました。どうか私達と一緒に戦って下さい。お願い致します。」
そう言って再び頭を下げるシャルル王女、けど僕は何かがおかしいと思った。王女の言葉には確かに助けてほしいという気持ちがある。それと同時に言わされている感じがする。王女の本当の気持ちは別にあるのか。
「シャルル王女殿下、ありがとうございます。あとはこちらでしておきますので、お下がりを。」
「わかりました。ブレット伯爵、皆さまをお願い致します。」
シャルル王女が下がった後に出て来たのは、脂汗をかいたまるで豚みたいな男だった。
「この場を預かったブレット伯爵だ。この中に勇者の職業を持つ者はいるか!」
大きい声で叫んで問い掛けてくる。涎が飛んで汚い。女子も全員離れている。そんな中で1人だけ反応する者がいた。
「俺だ!何かあるか、豚野郎。」
そう声を上げたのは、クラスの不良で全員が怯えている北条 光 。見た目も金髪頭にピアスをしていて、自分に意見を言う奴には暴力を振るう、学校始まっての問題児だ。
「これは勇者様、申し訳ございません。お話したいことがありますので、どうぞこちらに。後の者はランクに分けて部屋に入れておけ。」
伯爵と北条は部屋を出て行く。勇者と呼ばれて北条が微笑んでいたのが、嫌な感じがするが。
「全員、ステイタスを見てランクを確認しろ。確認したらランクごとに並べ。」
伯爵の指示を受けた兵士が指示を出してくる。そして全員が並んだことを確認して、用意していただろう部屋に連れて行く。
「お前たちはこの部屋だ。外に出るなよ。」
僕たちを案内した兵士が去ろうとした時、1人の女子が問い掛けているいた。
「男女別ではないのですか?流石に年頃の男子と一緒は…。」
「文句があるなら伯爵様に言え。ただし無事では帰って来れないけどな。わかったなら入れ。」
さっきの女子を部屋に入れて、兵士は何処に行った。これからどうしようか。もう1人の僕が言うには全部終わるまでこのままらしいし。
『同じ場所に入れられたのではないのか。少しだけズレているのか。俺が干渉したからか。まぁいい。蓮、少し身体を借りる。』
(どういうこと?それにさっきの呟いていたことは…。)
『俺が知っていることからズレている。このまま進めば最悪の事態になる。少しの間だけ俺に任してくれ。』
(わかった。後で説明してもらうよ。)
『了解だ。ちゃんと説明する。それと名前の呼び方を決めた。今後はお前が蓮、俺がクフトだ。』
僕はそれからもう1人の自分に身体を渡した。感覚的には第三者として見ている。映画を観ているみたいなもんだ。
「それでは行きますかね。【隠密】」
僕の身体が透明になっていく。何かのスキルなのだろうか?クフトがそれを確認してから部屋を出て行く。部屋の前に兵士が立っていたが気付いていない。それから歩いて10分したぐらいだろうか。1つの扉の前に立っていた。
(ここは?)
「王族のプライベート空間に行く為の扉だ。」
(ええ!なんでそんな所に…。)
「言っただろ。修正するって。」
クフトはそれだけ言って扉の前で警備している兵士の前に行く。そして姿を消していたのを解く。
「何者だ!ここは王族の方々の私室だ。許可無し者は通さん。」
兵士が扉の前を槍で塞ぐ。それを見たクフトは懐から白い龍がついている手帳か何かを見せた。それを見た兵士は顔を青ざめている。そして土下座をし始めた。
「クロスフィールド公爵と知らず申し訳ございません。私の命だけでお許しを。」
「別に構わない。陛下は中にいるか?」
「はい。御部屋の方に。ただ王族の方々がほとんど御集りになっています。」
「了解した。じゃ入るわ。」
クフトは軽く手を振って、扉の中に入っていった。