第16話 転生
「知らない天井だ。成功したのかな?」
周りを確認してみると豪華なベッドに机、照明があった。そして自分の身体が縮んでいたので成功したのだろう。それにしても身体が動かない。転生の反動なんだろうか?
「アレン様、大丈夫ですか?どこか悪いところはないですか?」
自分の侍女だろう女の子が声を掛けてくる。年齢は15歳ぐらいだろうか。長く伸ばされた綺麗な青色の髪に整っている顔をしていた。
「身体は動かせないけど、大丈夫だよ。」
僕の答えを聞いてホッと涙を流しながら安堵の表情を浮かべている。
「良かったです。アレン様、高熱を出されて3日間目を覚まされなかったのですよ。それより旦那様と奥様をお呼びしないと!」
慌ただしく侍女が出て行ったけど、転生は成功したみたいだ。暫くすると廊下から走ってくる音がする。
「アレン!大丈夫なのか!気分が悪くないか!」
「あなた。大声を出したらダメです!アレンの体調に触ったらどうするのですか!」
そう会話しながら入ってきたのは30歳ぐらいの男性と20歳ぐらいにしか見えない女性だ。たぶん今世の両親だろう。
「ご心配をお掛け致しました。お母様、お父様。」
僕は普通に返事をしたと思ったら、2人共こっちを見て固まっている。何か変なところがあったのだろうか。
「アレン、本当に大丈夫か?」
父親が再度確認してくるが、本当にどうかしたのだろうか。
「大丈夫ですけど、何かありましたか?」
「アレンが大丈夫ならいい。体調が良くなるまでゆっくり休め。」
それだけ言って退室していったけど、気になって仕方がない。扉に耳を当てて聞いてみる。
「セレン、アレンってあんなに大人びていたか?他の貴族を相手にしているみたいだ。」
「そうね。元々頭は良かったけど、ここまで大人びていなかったわ。」
忘れていた。今はまだ3歳だった。それでこの話し方はおかしい。どうしようかな。1回使ってしまったのに今更変えると余計に心配をかける。このまま押し通すしかないな。
「アレン様、お食事をお持ち致しました。入りますね。」
先程の侍女が食事を持って来てくれたみたいだ。僕は慌ててベッドに入る。
「あ〜!さてはベッドから抜け出しましたね。ダメですよ。しっかり寝ていないと。」
侍女が指を立てながらお説教をしてくる。僕はごめなさいとだけ言って食事を頂く。
「そういえばアレン様。旦那様からで明日体調が良くなっていたら教会に行くとのことです。」
「教会に何をしに行くの?」
僕の質問に侍女が驚く。また僕はやらかしたみたいだ。
「アレン様が楽しみにしていたステイタスをもらいに行くのですよ。高熱が出て記憶が飛びました?」
なんかこの侍女、僕の扱いが酷い気がするのは気のせいなのかな?
「そんなこと無いと思うよ。ただ忘れていただけ。よし、ご馳走さま。明日の為にもう寝るよ。」
「そうですか。私はお皿を下げて来ますので少々お待ちください。」
侍女はそれだけ言って退室していったが、待ってほしいとはどういうことだろうか。しばらく待っていると戻ってきた。しかもパジャマに着替えてある。僕はそれを見て驚く。
「えっ。」
「お仕事終了したよ。アレン君、お姉ちゃんと一緒に寝ましょうね〜。」
そう言って布団に入ってくる侍女。そして僕を抱きしめてすぐに眠ってしまった。この侍女の正体を知るのは明日の朝だった。