第14話 決別
僕達が会議場に戻ると父さん以外からの全員から感謝の言葉を頂いた。それだけブレッド伯爵が好き勝手にしていたのだろう。
「皆様方、お待たせして申し訳ございません。」
僕は頭を下げて謝罪をする。こちらの都合で会議を中断をしてしまったのだ。謝罪をしなければならない。しかし陛下達はそんなことは気にしていなかった。
「それは別に構わないがレン殿、その状況について説明してほしいのだが…。」
陛下が僕とシャルの状況を見て問いかけてくる。シャルはその言葉で顔を真っ赤にしている。理由は僕がシャルを抱えたままでいるからである。
「さっきので昔の約束を思い出したからですね。後は急ぎで来たのでそのままですね。よっと。」
僕は陛下に返事をしてからシャルを下ろしあげる。その際に小さい声で御礼を言われた。
「まぁいい。先程の説明をしてもらえるか?」
「御意。学生の1人である女の子から救援要請があったのは、皆様方ご存知ですよね。僕が着いた時に伯爵の子飼いの兵士がその女の子を掴んでおりました。それを処理した後、伯爵が兵士を連れて捕まえようとしたので自分の身分を使い拘束しました。以上です。」
「そうか。伯爵を捕らえれたか。なんか呆気なかったな。」
「そうだな。伯爵はただの囮に過ぎなかったのか?」
僕の報告を聞いて各々の意見を言っている。
「その可能性があると思います。内々に調査するべきです。だから僕の方でしておきましょう。」
「いや白龍公があるいない時に決まったことがあるのでそちらを優先してほしい。」
赤龍公ラーク殿がそう言って陛下に視線を送る。
「では伝える。まず勇者ヒカル殿は黒龍に選ばれた事により本来なら公爵位を与えないとダメだが、騒動の一端を担ったので伯爵位とする。そして第2王女アイリスの護衛騎士に任命する。働きを期待する。」
「ぎ、御意に。」
北条が緊張して返事をする。こんな集まりにいきなり参加させられているのだ緊張するだろう。
「次にクロスフォード公爵家令嬢ハルカ殿は王太子護衛に任命する。そして明日のヒカル殿の叙爵式時に婚約発表を行う。これは両名の同意を得ている。最後に白龍公レン殿、貴殿を第1王女シャルルとの婚約を発表し護衛任務を与える。また初代様の遺言により白龍公に浮遊都市を与える。以上だ。」
「「御意。」」
僕と春香は臣下の礼をして承諾する。
「召喚された学生はどうしますか?このままずっと王城で保護しておくことは出来ないですし。」
財務長官である黄龍公アリス殿がそう発言する。
「それについては俺に考えがある。学生たちを魔導学院と騎士学院に分けて入れたらいい。全員年齢は15歳〜16歳だ。そして入学試験は来月にある。なら近衛騎士団と魔法師団で鍛えて入れたらいい。それでどうでしょうか?陛下。」
ラーク殿がそう発言をする。残りの公爵も同意見みたいだ。
「しかしだな。レン殿はどうする。公爵としての役割もあるのと護衛がある。他の学生にどう説明する?」
まぁ陛下がそう言うのは当たり前だ。僕はまだ伝えて無かったことを言う。
「それには心配いりません。勇者以外の他の学生の記憶は消してあります。僕を見てもこの世界の住人と認識するでしょう。」
「なっ。」「お前…。」
全員が絶句している。自分が向こうでは生きてきた証を消したのだからその反応になるだろう。
「当然でしょう。僕は元はこの世界の人間です。そしてこれからこの世界で生きて行くのだから、最初から関わっていなかったとした方がいい。そして親父と春香、北条にも悪いが僕の記憶を消させて頂く。【記憶削除】」
僕は3人の返事を聞く前に実行する。そして公爵たちにも僕と父さんたちとの関係性のところを消す。事実を知っているのは、僕と陛下、母さんだけだ。記憶を消した人達が意識を取り戻す前に目元を隠せる仮面をつける。
「それでは陛下、僕は行きますので。後のことはよろしくお願いします。」
それだけ言って僕は退室する。