第13話 再会
「随分と我慢出来るようになったのですね。レン様」
「昔の息子に会うのは変な感じがします。」
そう声を掛けてきたのは、シャルル王女と母さんだった。しかし2人とも格好が変わっていた。シャルル王女はドレスだったのが、白いローブを纏っている。母さんは背中に白い翼、頭には光の輪っかが浮いていた。
「なんだ。2人も目覚めていたのか。それとも俺が暴走すると思って無理矢理覚醒したのか。」
俺の言葉を聞いて苦笑いをしている。どうやら後者だったみたいだ。反論をしたいが前例がある為、出来ない。
「それは置いといて。2人ともこれからどうする?俺たちは過去の人間だ。今を生きている人の邪魔をしたくない。だから俺は再び眠ろうと思う。」
「私もそうするべきだと思います。これからのことはこの子達に任せましょう。」
シャルル王女が同意する。何かしらあった場合は手を貸すことは構わない。しかしそれ以上のことをすると蓮達の人生を乗っ取ることになる。それはするべきではない。
「そういう訳だからクロすけと契約者よ。こいつらが目を覚ますまで守ってくれ。」
俺は柱に隠れていた黒龍とその契約者に声掛けて、眠りにつく。
それから数秒後に僕は目を覚ました。
「あー。また勝手に身体を使ったね。全く一言あっても良かったのに。あれ?シャルル王女までなんでここに?」
「それは兄さんが暴走するといけないから、止めに来たんだよ。お母さんと一緒に。」
僕の謎に答えたのはこの世界にはいるはずがない妹だった。
「僕も歳かな…。この世界にいない人間の声が聞こえるなんて…。」
「兄さん!それは酷いです!現実を見てください。」
僕の肩を掴んで揺さぶってくる。それをされながら周りを確認すると北条がいた。すっかり忘れていた。
「春香、わかったから。少し離してくれ。」
「わかりました。」
春香は素直に返事をして離してくれた。
「さてと北条君、君はこれからどうする?君の勝手な行動によりクラスの人達は危険にさらされた。そして君の幼馴染も。」
僕の言葉が心にきたのか顔が歪んだ。自分が守りたいと思っていた存在を危険に晒してしまったのだ。後悔してもおかしくない。
「俺はただ…。アイツを守りたくて…。」
北条の口から言葉が少しずつ出てくる。
「自分が守りたいものなら自分で守れ。それが勇者として選ばれたのならな。さて今後のことも決めないといけないから、君にも来てもらう。そしてそこの柱に隠れている母さんもね。」
僕の言葉に観念したのか柱から母さんが出てくる。
「いつから気づいていたの?」
「最初からかな。僕と父さんが居なくなったら、絶対に追いかけてくると思って。そんな話は後でいい。陛下を待たせているのだから、早く行くよ。」
僕はそれだけを言うと未だに眠っているシャルル王女を抱えて会議場に向かう。全員ついてくるのを確認して父さんに念話を送る。
『とりあえずは伯爵は捕まったよ。全員無事。後は他の貴族が動くまで様子見かな。』
『わかった。陛下達には伝えておく。お前がいない間に決まったこともあるから早く戻ってこい。』
『了解。』
僕はそう返事をして念話を切る。そしてさっきの会話で起きたのかシャルル王女が真っ赤な顔でこちらを見ていた。
「あの…。その…。こ、この状況は…。」
「目が覚めたみたいだね。僕を迎えに来てくれた時に気を失って倒れたんだよ。それで会議場に戻るのに他の人に任せたくなかったから僕が連れて行くことにしたのだけど。お気に召さなかったかな?」
僕はシャルル王女に簡単に説明をした。
「あの嬉しいのですが…。周りの人達もいるし…。恥ずかしいです。」
「別に気にしなくてもいい気がするけど。僕達は婚約者だし。昔に言わなかったっけ。どんな事があろうとも君だけは必ず守ってみせるって。」
「え?思い出したのですか?」
「ああ。さっきのことでね。ということで改めて誓おう。シャル、君のことは必ず守ってみせる。例え世界が相手だろうとも。」
「はい!」
僕は彼女の満面の笑みを見ながら進んで行く。後に国を揺るがす事になったとしても。