第12話 守る者
あれからどれくらい経っただろうか。蓮君を探しに行った綾瀬君も帰ってこない。どうしたらいいのでしょうか。他の部屋に相談に行こうにも兵士がいる。私はまた考え出します。それからまた時間が経ち、外が騒がしくなっているのに気付いた。
「めぐちゃん。外の様子変じゃない?」
そう尋ねてくるのは親友の北見 結衣だ。顔はとても怯えているように見える。他の人たちもそうだ。知り合い同士で集まっている。
「きっと大丈夫だよ。」
そう言った時、部屋の扉が開かれた。そして柄の悪そうな兵士5人が入ってきた。
「お前らの中に神代 恵って女いるだろ。そいつを出せ。隠したらわかっているよな。」
兵士の1人が気味が悪い笑い方をして伝えてくる。
「探している者は私です。他の人には手を出さないでください。」
私は震えながら立ち上がった。結衣ちゃんは私の服を掴んで首を振っている。心配してくれているのだろう。
『フィーちゃん。みんなを守る為に障壁をお願い。』
『わかった。恵、蓮が来るまで無茶なことだけはしないで。』
私は契約している風の精霊にみんなの守りをお願いした。これである程度の安全が確保された。
「ひゅ〜。結構当たりじゃないか。ブレッド伯爵も喜ぶぜ。勇者の野郎も言いなりに出来るしな。さぁ、来い!」
兵士が私の手を掴んで引っ張る。私は怖くて涙が出て来たが、昔のことを思い出してネックレスを掴む。そして呼びかける。私の勇者に。
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視点は蓮へと戻る。俺は恵の呼びかけに応えて部屋へと戻ってきた。そこで見たのは兵士の1人に掴まれている恵だった。
「お前、俺の女に手を出しているじゃねー!」
俺は一気に詰め寄り一瞬で恵を取り返す。そして掴んでいた兵士を蹴っ飛ばし後ろに距離を取る。
『やっぱりキレているよ…。レンは女に手を出されるとダメだね。恵、こっちにおいで。そこにいたら巻きこまれるよ。』
風の精霊が恵にそう伝えて障壁の中に入れる。
『レン、こっちは守っているから安心して。ただし全力を出さないでね。そうしたらここら一帯吹っ飛ぶから。』
「わかっているよ。心配しないでいい。この身体では全力を出したくても出せない。では行くぞ。覚悟出来てるよな?下郎ども。」
俺は一気に抑えていたものを解放する。兵士達はどんどん顔色が悪くなっていき、終いには失神してしまった。なんて呆気ない結末だろうか。
『レン。何かする前に終わってしまったね。』
「うるさい。ここまで兵士の質が落ちているとは思わなかった。昔の俺の兵士だったら耐えていたのにな…。」
『たぶん彼等も最初の頃は一緒だったよ。それと後数分したら伯爵が兵士を引き連れてここに来るよ。』
「わかっている。この国に腐った者は要らない。初代国王として断罪しよう。」
俺の風の精霊の忠告を聞き王としての風格を纏う。他の学生には悪いが眠ってもらった。これからすることを見せる訳にはいかないから。そして全ての準備が整った時に伯爵が現れた。
「これは一体?私の兵士に何をした!」
伯爵は周りの様子を見て、俺に怒鳴ってきた。
「見たらわかるだろ。俺の女に手を出そうとしたから始末しただけだ。」
俺は恵を見ながらそう言う。伯爵は後ろに合図を送って兵士達が俺の前に立った。俺は質問をした。そしてある物を見せた。ただそれだけだ。しかしそれを聞いた兵士達は臣下の礼をする。
「兵士達よ。お前たちは国に反乱するのか?そして私に剣を向けるのか?これを見て私の指示に従う者は剣を下ろせ。」
「なんだ?どうした?お前たち、早くしろ!家族の命がどうなってもいいのか!」
ただ1人理解できてなかった伯爵が喚いている。
「兵士の家族を人質に取るとはな。ホント腐っている。公爵の名の下に命じる、反逆者を捕らえよ。」
俺はただそう言うだけで兵士達は伯爵を捕まえる。これで終わりだといいな。溜息をして近づいてくる人物の所に行く。