閑話 記憶 神代恵 ②
私は先程の男性に言われた通りにお祖父様をお呼びに来ました。
「お祖父様、失礼致します。蓮君が道場にてお呼びになっています。」
私は男性のことをどう言ったら良いのか分からず、とりあえず蓮君が呼んでいることにした。
「わかった。すぐに向かおう。これじゃな春人殿が言っていたことは。」
お祖父様が最後に何か呟いていたが、小さ過ぎて聞こえなかった。そして道場に入るとお祖父様は片膝をついて頭を下げました。
「お初にお目にかかります。私の名前は神代 藤次郎と申します。レン=アースティア国王陛下。」
「いや、こっちの世界に来てまで陛下って呼ばれたくはないな。気楽に呼んでくれ。それと傅かなくてもいいぞ。俺の臣下でもないし。」
男性は笑いながらお祖父様を立たせた。
「では、レン殿とお呼び致します。大方の話は春人殿に聞いております。蓮君を鍛える為に顕現すると。」
「そうか。こっちに来てもらったのは礼を言いたかったのと、隣にいる御令嬢についてだ。」
男性とお祖父様は話を進めていた中で、私の方を見て話始めた。
「恵のことですか?何か問題でも?春人殿は何も申していなかったのですが…。」
「親父からは何も聞いてないか…。精霊と契約してないし神族でもないから気付かないか。神代殿、精霊について話を聞いたことはありますか?」
男性はお祖父様の問いに対して1人で何か呟いていたが、質問を返してきた。
「少しだけは。神が作った世界の管理者と言われている。そして精霊と契約出来た者は大いなる力を持つと。」
「契約の話は本当だが、神が精霊を作ったのは間違いだ。精霊が神族を作った。その神族が様々な種族を作り出した。これが本当の話だ。そして精霊達を束ねる存在として精霊王がいる。御令嬢はその巫女みたいだな。」
「それは本当の話ですか⁈恵が巫女だなんて…。」
「ああ。彼女はこれから大変な事態に巻き込まれるだろう。そのことについて神代殿にお伝えしたくてな。」
「質問があります。どうしたらそれを回避出来るのですか?数多くの世界を救ってきた貴方は何か知っているのでしょう。どうか恵が巫女にならない方法を教えてください。」
お祖父様が私の為に頭を下げている。私も隣で一緒に頭を下げる。
「そんなに巫女にしたくないのか?そっちのお嬢さんには好都合だと思うだけど。それと否定されると俺が泣きたくなる。」
男性は頰をかきながら苦笑いし言う。
「それはどういうことですか?」
私は思わず質問してしまう。お祖父様も同じ疑問を持ったのか何度も頷いている。
「さっき言った精霊王は俺のこと、そして次代精霊王はそこで寝っ転がっている蓮のことだよ。お嬢さんはアイツのことが好きだと思ったが、見当違いか?」
男性は蓮君の方を指差して笑っている。私はそう言われて耳まで真っ赤になった。
「あの…。その…。わ、私。」
「今はいいさ。いつかアイツに伝えてあげてくれ。それがアイツの救いになる。」
「はい!」
私は元気に返事をする。
「いい返事だ。これは俺からのプレゼントだ。自分の身に危険が迫った時にこれに呼びかけろ。そしたらアイツが駆けつけてくれるから。」
私は男性から貰ったものを見た。それは星型をしたネックレスでした。
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話は現実へと戻る。