閑話 記憶 神代 恵①
少し時は巻き戻る。それは蓮が国王と対面した時間だ。私は部屋の中で蓮君の帰りを待っていた。私と蓮君の他に8人も一緒にいる。蓮君はトイレに行くと言って帰ってこない。何かあったのか心配です。ふと私は昔のことを思い出しました。
私が彼と会ったのは10年前の小学生の頃です。夏休みを利用してお祖父様の家に来ていた時に、蓮君は春人さんと一緒に来られました。
「お初にお目にかかります。神谷 春人と申します。こちらは息子の蓮です。この度は神代殿にお願いがあり参りました。」
その頃の蓮君は春人さんの後ろに引っ付いている可愛いらしい少年でした。
「ほら。蓮、挨拶して…。まだ他の人には駄目か。申し訳ございません。神代殿。」
春人さんが挨拶出来なかった蓮君に代わり謝罪する。
「別に構わないよ。子供が人見知りするのも当たり前だ。これが孫の恵だ。蓮君、仲良くしてあげてくれ。」
お祖父様が私の頭を撫ぜて紹介する。
「はじめまして、神代 恵です。よろしくお願いします。」
私は元気よく挨拶をして頭を下げる。これが初めて会った時のことです。 そこから長期休暇の間、蓮君はお祖父様の家に預けられるようになりました。何度目かの夏休みの時に驚くべき光景を目に入りました。うちには道場がありいつでも練習出来るようになっています。私が御手洗いに行こうとしたら、蓮君が若い男性と戦っていました。男性の方は少し蓮君に似ている様でしたが、初めて蓮君の元気の姿を見て驚きを隠せなかったです。
「蓮、遠慮はいらないぞ。お前の攻撃は俺には通じないから全力で来い。」
「わかってるよ!【風よ纏え、疾風剣】」
蓮君が何か唱えて木刀に風が渦巻いているように見えます。
「だからいつも言っているだろ。唱えていたら相手に何を使うかバレるって。俺がお前と同じぐらいの時は、それぐらい出来たぞ。」
男性は蓮君の木刀を防ぎながら笑っている。そして何かをする為か蓮君を壁際に飛ばします。
「さてと、今日は可愛らしい観客がいるから見せてやるよ。蓮、これはお前が持つ力の片方だ。この力は誰かを守るため、自分にとって退けない時に使え。」
男性はそう言うと雰囲気が変わりました。今までは何か暖かい感じがしましたが、今は寒い感じです。蓮君は木刀を構えて男性を見てます。
「【我が求めるのは万物を切り裂く剣、我が往く道は覇道である。我の求めに応じよ。聖剣 デュランダル】」
男性の手が光ったと思ったら、いつの間にか1本の剣が握られていました。剣からは冷たい冷気が漂っています。
「蓮、これが勇者に与えられた力の一部だ。俺はこの力で数多の世界を救い守った。だが守れなかったものもある。だからこそ、お前にはもう一つの力がある。それを出してみろよ。今ここで。」
「わかった。【我が求めるのは万物を焼き尽くす力。来いよ。魔剣レーヴァテイン】」
蓮君の手が光って、出てきたのは灼熱の剣だった。しかし男性は満足していないのか、蓮君を挑発する。
「そんな程度か!お前が、俺達が守りたかったものの為に手に入れた力は。まだいけるはずだ。今こそ過去を超えろ!」
「【我が求めるのは襲いくる敵を焼き尽くす力。聖剣クラウソラス。今ここに聖剣と魔剣が揃った。真なる力を見せよ。聖魔剣レーヴァソラス】」
蓮君の両手に持っていた剣が空中で重なり合い、そして一本の剣となっていた。そしてその剣で男性に斬りかかりそして力を尽きた様に倒れた。
「合格だ。忘れるな。それこそ俺が守るために手に入れた力だ。さてディーネ、蓮を治療してやってくれ。」
『わかりましたわ。レン様。』
男性は倒れている蓮君に話しかけた後に、誰かに話していた。終わったと思ったらいきなり青い髪の女性が現れた。そして男性はこちらに向かって歩いてきた。
「どうだった?俺達の出し物は、可愛らしいお嬢さん。一つお願いがあるのだけどいいかな?」
男性が私に問いかける。それに私は頷いて話を進める。
「ありがとう。そしたら君のお祖父さん呼んできてくれる。蓮があんな状態だから動けないんだ。」
「わかりました。少し待っていてください。」
私は了承してお祖父様の書斎に向かった。