第9話 夜会②
「こほん。それでは夜会を始めたいと思う。」
陛下が咳払いをしてさっきまでの雰囲気を変える。そして国の方針を決める会議が始まる。
「まずは新たに加わった七龍公の召喚を行おう。1人目は全員知っているが、青龍公ハルト=クロスフォード。白龍公は知らないと思うが、ハルト殿はこの国を救った英雄だ。この国の民は全員が憧れる存在だ。」
「そんな大したことしてないけどな。荒れ狂った先代魔王を倒して融和関係に持っていっただけだ。それも大勢の仲間がいたから出来たことだ。」
父さんは大したことしてないって言っているけど、十分凄いから。
「それにイシスの力もあったからな…。あいつの力がなかったら最後死んでたな。マジで。」
父さんはなんか遠くを見てそんなことを言ったが、ただ1つ聞き捨てならないことを言った。何で母さんの名前が出てきたのだろうか?とりあえず置いておこう。嫌な予感がする。
「まぁ白龍公も慣れるまで大変だと思うが、頑張ってくれ。続きに戻ろう。2人目が勇者ハルト殿の息子であり、自身も勇者の証を持つ。白龍公 レン=クロスフィールド。皆も見ただろう、魔法使用不可のこの部屋で容易に使って見せたことを。そして戦闘能力もハルト殿を超える。我との問答でも納得させた傑物だ。七龍公爵筆頭に相応しいと我は思っている。」
「それは俺も同感だ。」「あれだけのことを見せられたのだ。我も認めよう。」
陛下の言葉に他の5公爵が同意する。それより公爵筆頭ってなんなの?さっきの盟主と関係あるの?
「これで紹介は終わりだ。すまないが他の公爵の挨拶は個別にしてくれ。次に役職の異動についてだ。青龍公ハルト殿が戻ってきたので、緑龍公マリク殿が軍務元帥。ハルト殿が近衛騎士団総長に復帰。赤龍公ラーク殿は宰相、黄龍公アリス殿は財務長官、紫龍公カイヤ殿は外務長官、銀龍公ナタク殿は隠密筆頭。そして白龍公レン殿には監査役として門外顧問に就いてもらう。何か異論はある者は挙手を。」
陛下が言い終わると七龍公全員に確かめる。ここで反論が出たら話し合いがあるのだろう。
「異論はないみたいだな。では次は今回の騒動についてだ。ブレッド伯爵が暴走して勇者召喚を行ったことは知っているな。その結果、異世界より学生が30人召喚された。まぁそのお陰でハルト殿とレン殿がいるのだが。銀龍公、説明を頼む。」
「私が調べたところ、ブレッド伯爵はアイリス王女殿下を人質に取りシャルル王女に召喚を強制しました。それにより異世界から学生30人の召喚され、伯爵に勇者を1人確保されました。能力値は初期ランクSとなっております。他の学生については、Aランクが7人、Bランク5人、Cランク10人、Eランク6人となっております。あとは白龍公が隠蔽していたのでランクがわからないです。合計30人になります。そして厄介なことにその勇者にブレッド伯爵は、黒龍の証を与えました。以上です。」
「報告ご苦労。貴公らも聞いての通りだ。勇者を取り込まれたのは、良いとしても黒龍を渡されたのは痛手だ。」
銀龍公の報告が終わり、陛下のお言葉も終わったのを見計らってさっきから疑問に思っていたことを聞いた。
「少し宜しいでしょうか。先程からの黒龍ってそれほど危険なものなのですか?」
「そうか。レン殿は知らないか…。あれは九龍の力を合わせないと勝てない。」
「七龍ではなく九龍ですか。あと2人いるのですね…。」
そう僕は考えた時、腕につけていた通信機から緊急アラートが鳴り始めた。即座に通信を開く。
『蓮君、助けて…。』