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経験値稼ぎの絶好の標的に転生した僕は数千回目の朝日を拝む

作者: 朱色の梟

休載から復活する際に書いた短編です!!


 僕はゲームは好きだ。とても大好きだ。

 しかし、一重にゲームが好きと言っても、勿論好みのジャンルはある。『ゲーム=全てが好き』ではない。

 

 僕が最も好むゲームジャンル。

 それはRPGだ。

 RPG。


 Rocket·Propelled·Grenadeではない。

 Role·Praying·Gameの方だ。


 最近、純正なRPGがやや衰退気味だとつくづく感じる。ゲームはシリーズ物が当たり前だし、受動的にしかプレイできない。

 また、ゲームのストーリーが評価されているのも遺憾である。

 こちとらゲームがしたいんだよ。ストーリーを楽しみたいんならアニメでも映画でも観れば良いじゃねぇかよ。


 僕の掲げる純粋なRPGの思想は、「プレイヤーを楽しませるゲーム」だと断言できる。

 これは僕がその手のゲームが嫌いになった要因でもあるが、ストーリーがギチギチ過ぎて、サブクエスト等がろくに受けられない――というか精神的に受けにくいというゲームと遭遇したことがある。

 それ以来僕は確固たるストーリーのあるゲームがRPGを含めて嫌いになった。


 決められたストーリーを通り、定められた道筋を歩み、自由のない運命を辿っていく。


 ゲームはこんなにも受動的でいいのだろうか?

 それらを踏まえて僕が全データの総合で三十七もの周回プレイを行い、アイテムや武器などもフルコンプした「BONEsummonsKNIGHT」――通称『骨騎士』は最高の神ゲーだ。


 ストーリーは戦乱の続く世界の中、主人公は他国と戦争中の自軍への補給物資を積んだ船の護衛となるが、その船が嵐により転覆。

 そして、漂流の先に辿り着いた先の謎の島が舞台となり、ゲームが開始する。


 主人公が船の護衛任務を請け負っていたというのはゲームの進行にはなんと影響も無く、ほとんどのプレイヤーがその事実を忘れる程だ。

 

 そして、自由性が高いのもこのゲームの魅力だろう。

 何故ならボス――というか全てを飛ばしてLv1の段階でラスボスに挑むのも可能だし、苦手なボスとの戦闘を避けるのだって可能だ。

 自由性が高すぎて不安になるプレイヤーも中にはいる。


 


 


 僕が思う最高のゲーム『骨騎士』。

 この世界に自分がいたらこうするのに、という妄想も膨らませる程に僕はこのゲームを愛している。



 愛していた――けど。


 「流石にこれは無いでしょ.........」


 そういう俺は『骨騎士』内の雑魚敵に囲まれ、別に俺は主人公でこれから無双をする訳ではなく、その雑魚敵の中に混ざり、主人公との戦闘を繰り広げていた。







 あんな事になる少し前。

 僕は死んだ。


 テンプレのトラック事故ではなく、住んでいたアパートが放火され、深夜で深い深い眠りに沈んでいた僕は逃げ遅れ、三人の住人と共に天へと旅立っていった。

 短く儚い人生だったが、最期は煙を吸い込み、激しく咳き込んだ後に気を失ってから焼け死んだのだろう。


 そして、神様と出会った。

 もしかしたら転生ライトノベルが流通している日本ではあまり笑われないのかも知れないが、取り敢えず平成の時代に神様と出会った。


 神様は僕に転生の権限が有ると言っていた。

 確か先祖がなんたら~、みたいな話をしており、どうせなら良いとこの坊っちゃんとして生まれ変わろうと思ったが、現実世界外にも転生が可能だと言われ、即座に『骨騎士』の世界への転送を希望した。


 神様は最初の内は困惑していたが、最終的に納得してくれたらしく、俺は光に包まれ無事『骨騎士』への世界に転送を果たした――筈だった。

 僕が目醒めたのはゲームの初期リス地から少し先の「朝焼けの町」で目を醒ました。

 本来ならば輸送船の上で目が醒めるのでは? と、考えると同時に気が付いた。


 僕の身体が異形な事に。

 周囲を馴染み深いモンスターが囲んでいる事に。


 「!!」


 こいつらは殆どのエリアに出現する雑魚敵の「堕落した兵士」と「腐敗した戦士」の群れだ。どちらもステータスもAIも悪く、苦戦する事は余程の事が無い限りは有り得ない敵だ。しかし、唐突にそんな者が目の前に現れてしまっては退かざるを得ない。

 咄嗟に僕は後方へと跳び、奴等から距離を取るが、本来なら多少の距離は追い掛けてくる筈の奴等が少しも動かなかった。

 

 そして、跳んだ際にもう一度改めて自分の身体を眺める。

 どす黒い肌。

 下品に伸び尖った爪。

 ボロボロの服。

 鋭利な剣。


 僕の記憶の中の「堕落した兵士」との見た目が一致する。




 僕はどうやら主人公ではなく、雑魚敵に転生したらしい。


 「マジか.........」


 現実を知った僕は顔に手を当て、その場に座り込む。

 折角主人公に転生して蓄えたゲーム知識を基に無双を繰り広げようとしていたのに.........。


 ――そんな僕の無意味な思考を遮る様に少し遠くの建物から光が伸びた。


 「あれは.........?!」


 僕はそれに気付き顔を上げる。驚いてはいるが、あの正体を僕は知っている。

 

 あれは、主人公が『教会』を解放した合図だ。

 この世界には教会という建造物が幾つもあり、そこに巣食う敵を全滅させる事により教会を解放できる。解放した教会の中ではLvUPや、武器の強化が可能で、この島の中で唯一安全な箇所だ。

 

 そして、その教会を解放したという光が出た。つまり、僕ではない誰かが主人公という訳で、もうすぐそこまで迫ってきているという事だ。

 それを理解した僕は武器を握り直し、その手に力を込める。


 「堕落した兵士」は短剣と盾を構えており、パリィは可能だが、主人公がその後に行えるカウンターを行えない。攻撃力は三から九の間で、主人公の耐性によりその値が決定する。

 「腐敗した戦士」は大斧を一本担いだ男で、動きが鈍く攻撃は殆ど当たらないが、もしも当たれば必中の攻撃力と高い防御力を兼ね備えており、集団だと少し厳しいモンスターだ。


 そして、僕が今この場にいる敵――いや、仲間の能力を思い出していた時、それは現れた。

 見たところ兜は「戦士の鎖頭巾」を、胴に「騎士の黒胴」を纏い、小手と脚鎧は「木製シリーズ」を装備しており、右手には「山のメイス」、左手には「赤騎士の大盾」という、僕からしたら三点位の装備の主人公がやってきた。

 もし、あれが誰かに動かされているのであれば、絶対に初心者だろう。


 周囲の仲間も主人公に気付き唸り声を上げる。

 主人公が更に近づいてくると同時に彼は、グルンと回避を行い自分達の間を一瞬で埋めて攻撃を行ってきた。

 その一撃により前方にいた兵士が一人死亡。すかさず戦士が斧を降り下ろすが、それを盾によりガード。しかし、そのガードの後ろから兵士が切りつけ、怯むと同時に全員が一斉に攻撃を行い、主人公は死亡した。


 と、同時に僕達は初期配置へと戻された。

 このゲームのシステムでは、主人公が教会に入ったり死亡したりするとボスなどの一部を除いた全てが初期配置に戻る様に設定されているのだ。

 周囲の仲間にそれを不思議に思っている者はおらず、僕だけが覚えている様だった。


 そして、それから数秒後に先程死亡した主人公がこちらへ向かってきたが、見た目が一変していた。

 全ての防具を脱ぎ捨て、脱衣不可の腰布が一枚だけ残っていた。きっと、装備重量を減らし、移動速度を上げようとしているのだろう。

 当然、武器も変わっており、剣と盾のスタイルから「カラクレム」という一本の大剣へと変更していた。


 カラクレムは大剣にしては重量が軽く攻撃力も高いため扱い易い武器の一つにされており、初期の内から手に入る事から人気の武器だ。

 それに後先を考えずに突撃した仲間が悉く殺され、僕へもその剣が降り下ろされるが、攻撃の当たる直前、カラクレムを盾でパリィした。

 パリィをされると一秒間の間、絶対に行動不能となり、戦闘中には大きな隙となる。

 そして、僕の意を縫うように戦士が大斧を降り下ろし、主人公は再び死亡した。


 と、同時に再び初期配置に戻された。

 あれ? これ、終わらないのか?


 ――僕がそう考えた瞬間、足元に黒光りする何かが転がってきた。それは、商人から五十Gで購入が可能で、ダメージが高い爆弾だ。 

 僕達は防御する間もなく爆死した。


 と、同時に数度目になる初期配置だ。

 成程。僕が死亡してもそこで終わりではなく、主人公が死ぬか教会に行けば復活するのか。

 という事は即ち――




 僕は主人公がゲームを続ける限り、永遠に生き、永遠に死に続けるのだ。




 僕が縛られ続けている「朝焼けの町」のここのエリアは教会から近い上にそこそこの経験値を落とす(僕達)が密集している為、経験値稼ぎの良い場所なのだ。

 その為、最初の内は勝てていた主人公にも徐々に差が広がり、死に続けていた。


 死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで殺して死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死に続けていたある日。

 

 どれ位の時間が経ったのだろうか? 

 頭が砕かれた時もあったし、毒死したのもあった。魔法によって燃やされたり凍らされたりした事もあったし、落下死やジワジワといたぶられて殺されたりもした。

 最近はゲームが進んだのだろう。主人公も殆どここを訪れる事が無くなった。


 

 ここ「朝焼けの町」では常に朝焼けが出る時間で止められた町で、あの朝日を何回見ただろう。四桁は軽く越えているだろう。


 死とは何だったのか、もうすっかり忘れてしまった。

 それほどまでに死に過ぎた。


 退屈だ。何か起きてくれ。

 僕は心の中で懇願した。


 その心からの願いに応じるかの様に地面が光始めた。


 

 この現象も知っている。

 ゲームクリアだ。それのイベントにより島が崩壊しているのだ。


 ――次こそは死ねるだろうか?










 

 僕は目を醒ますと同時に気が付いた。自分のステータスが上がっている事に。


 成程。つまり。






 周回プレイだ。


 

 

最近ドハマリしたとあるゲームを元に書いているので、「ん?」となる人がいるかもしれません。

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