79話.バベルの塔①
眼前に広がる巨大な塔を前にしたくろむは、呆然としていた。
くろむ「目の前で見えると異常な高さだな……」
「これの最上階って何階なんだよ……」
ナビ 「1000階ぐらいと思っておけばいいんじゃない?」
くろむ「軽く言う階数じゃねーよ……」
ナビ 「文句言っても仕方ないんだから、
とりあえず1階1階いくしかないんじゃない?」
くろむ「素直にそうするのはなんかシャクだなぁ……」
くろむは少しでもショートカットをしようと、
見えるギリギリの高さまで空間転移で移動した。
移動そのものは可能であったが、バベルの塔の表面はツルツルであり
つかまろうにもつかまる場所もなく、そのまま地上へと落下するのみであった。
そのまま地上に激突するかと思われたが、
ギリギリのところで地上に空間転移し、無事に着地した。
ナビ 「あのさぁ……」
「仮にどこかにつかまれたとしても、この塔傷つけれそうにないのは
さっきの攻撃でわかってたじゃん…… ?」
「どうするつもりだったの?」
くろむ「あ……」
ナビ 「ばか……」
バベルの塔は見える範囲内において、入り口以外に扉やドアの類は一切なく、
壁を破壊できない限りは外からよじ登っても無駄であることに
ナビに突っ込まれてから気づいたくろむだった。
くろむ「ナビにそういうの指摘されると凹むわぁ……」
ナビ 「どういう意味よ!!??」
くろむ「ナビっておバカちゃんキャラじゃん?」
ナビ 「!!!?????」
くろむ「まぁ、拗ねるなよ」
「しょうがないから入り口から行くさ」
くろむは目の前の門らしきもの場所に向けて歩き出した。
くろむが門に近づくと、門は勝手に開き出した。
くろむ「ようこそってことかね?」
ナビ 「そういう意味にとるべきでしょうね」
くろむ「んじゃ、気合いれていきますか!!」
気合を入れなおしたくろむは、両手に1本づついつもの氷槍を持ち、
ゆっくりと門をくぐり塔の中に入った。
塔の中に入ったくろむは、目の前に広がる光景にびっくりした。
なんとそこには、<森>が広がっていたのだった。
くろむ「なんというかさ……」
「ここって塔の中なんだよな?」
ナビ 「今、門をくぐって入ったところだし、そのはずだけど……」
くろむ「そりゃ普通じゃないだろうとは思ってたけどさ!!!」
「なにも初っ端から森とかおかしくね???」
ナビ 「塔の中は別空間ってことなんでしょうね」
「こうなると、フロアあたりの広さも塔の階数も謎になってくるね」
くろむ「神になろうっていう狂ったやつへの試練なんだから、
会場も狂った場所ってことかね……」
「なんとなくだけどさ」
ナビ 「ん?」
くろむ「カオスってこの塔造るのに絶対絡んでるよな?」
ナビ 「知らないから断言はできないけど……」
「僕もそんな予感はするね……」
くろむ「だよな……」
「とりあえず上の階への階段? を探してみますかね」
くろむは、上の階に上がる手段を探すために森の中に入っていった。
しばらくすると前方に何かの気配を察知し、近くの茂みに身を潜めた。
そこでくろむの目に入ったのは、10人のゴブリンだった。
くろむ「塔の中に森っていうのは狂ってるけどさ……」
「最初の敵がゴブリンであり、ゴブリンだから居場所は森……」
「塔の中であるということさえ除けば、普通なのな……」
「こういうところに変に拘っていそうなのもカオスっぽいな……」
ナビ 「まぁ、そういうこと言わずにさっさと倒しちゃいましょうよ」
くろむ「そうだな、ゴブリンだし近くにいくまでもないな」
くろむは、茂みに潜んだまま氷槍を10本生成させ、
ゴブリンたちに向けて発射した。
ものすごい速度で放たれた氷槍は全弾ゴブリンの頭部にヒットし吹き飛ばした。
しかし、頭部を失ったゴブリンはそのまま倒れることはなかった。
倒れる前にゴブリンは消滅したのだった。
くろむ「は???」
「なぁ、あそこにゴブリンが居たのって、俺の見間違い??」
ナビ 「僕にもいるように見えたし、くろむの攻撃で瞬殺したように……」
くろむ「だよな?」
「死んだ瞬間に消えた??」
「それって、生物としてオカシイよな……」
ナビ 「生物では…… ない?」
くろむ「そういうことになるな」
「外にいる魔獣や魔物と見た目や強さは一緒だけど、
そいつらのコピー、実体のある幻影…… ってとこかな」
「命を冒涜する神が悪乗りしたイタズラって感じかね、胸糞悪い……」
ナビ 「同感だね……」
「これはカオス様の趣味とは方向性が違うね……」
くろむ「だな……」
「あいつはムカつかせはするけど、胸糞悪いことはしないからな」
「まぁ、文句言っても先に進むしかないか……」
初っ端から気分の落ちたくろむであったが、
目的のためにも上に行くしかないと思いなおし、
上に行く手段を探すことを再開した。
森をかき分け進んでいくと、ゴブリン・狼・ウサギ・でっかいムカデなど
この世界に転生した当初によく見ていた魔物たちが多数生息した。
くろむは発見するたびに、氷槍を投擲し倒しながら進んでいた。
くろむ「やっぱり全部消えやがるな……」
「なんかゲーム感覚になってくるな、これ」
ナビ 「ゲームっていうのを僕は知らないけど、
くろむがそういうならそうなのかもね」
「だけど、油断はしないでね?」
くろむ「わかってるよ、一番の目的は生きて帰ることだからな」
探索を続けるくろむは、前方に小さな小屋を発見した。
警戒しながらも中に入ると、そこには小型の魔法陣が設置されていた。
くろむ「小屋の中に魔法陣のみ……」
「竜人族の隠れ里の入り口の魔法陣に見た目は似てるな」
「乗れってことだよな……」
ナビ 「たぶん?」
くろむ「もぉ……」
「なるようになりやがれ!!!」
くろむは思い切って魔法陣の上に乗ると視界が一瞬真っ白になったあと、
目の前には海岸が広がっていた。




