77話.調印式
くろむは調印式までに一か月を国民のみんなと交流を深めることに費やしていた。
多種族間の交流は順調であり、くろむが望む助け合いが当たり前に
行われていることを確認できて満足していた。
そして調印式の日を迎えることになった。
アキナ「いよいよだね♪」
カルロ「ついにこの日が……」
くろむ「まぁいよいよではあるけど、実質もうすでに平定されてるしなぁ」
「紙に印がポンポンっと5個押されて終わりだよ?」
アキナ「くろむはすぐそういう言い方するんだから……」
「3国が建国されて以来、互いに相容れぬ国同士だから
平定されることはないって、ずっと言われてたんだからね?」
くろむ「なんとなくそうなるように操作されていた感が拭えないけどな?」
アキナ「そうかもしれないけど……」
「歴史的な偉業の瞬間なの!!!」
くろむ「わかったよ、すまなかったよ……」
アキナ「わかればよろしい!!」
カルロ「…… 最強の兄貴もアキナ嬢には相変わらず弱いな」
くろむ「惚れた弱みってやつかもな!」
アキナ「もぉ……」
ナビ 「ツンデレ……」
くろむ「うっさい!」
会議室でそんな他愛もない話をして過ごしていると、
各国の要人たちが次々と集合を始めた。
それぞれのトップ同士が顔を合わせるのは10年ぶりであったらしく、
全員がどこかよそよそしい態度であった。
くろむ「お前らなぁ……」
「めでたい席に各国のトップが集合したんだ、シケた顔をしてるなよ……」
―――「くろむ王、お初にお目にかかります、
カロライン王国、国王のタロトと申します」
タロト「この度は大陸の平定おめでとうございます」
くろむ「はじめまして、タロト王」
「今後友好関係を築く間柄だし、気楽にいきましょうよ」
ダイン「くろむ王は相変わらずじゃの」
サカラ「くろむさんが変わるとか考えたくないですよ、不気味ですよ」
カッツ「くろむ王はどの王に対してもその姿勢だったのですね……」
くろむ「あのなぁ…… 褒めてるのか貶してるのかはっきりしろよ……」
カイン「ゴホン…… 各国首脳がお集まりの場で恐縮ですが……」
「わたくし、カインがこの場の司会をさせて頂きます」
くろむ「カイン、よろしくな」
「みなさんにも紹介しておきます、うちのNo.2のカインだ」
カイン「お見知りおき頂けましたら、幸いです」
タロト「よろしくな」
ダイン「よろしくじゃ」
サラカ「宜しくお願いします」
カッツ「よろしく」
カイン「では、始めませて頂きます」
「同盟の内容につきましては事前に同意する旨の回答を皆様より
頂いておりますが、問題ございませんね?」
……
カイン「問題がないと解釈させて頂きます」
「それでは、こちらの用紙に各国の印をお願いします」
最初にくろむが調印する。
それに続いて各国の王たちが調印を続けた。
カイン「皆様、ありがとうございます」
「これにて、アイギスを盟主とするロンダルディア同盟は無事成立し、
ロンダルディア大陸の平定は実現されました」
くろむ「みんなありがとな、これからもよろしく」
くろむの言葉に参加者全員が頭を下げ、答えた。
くろむ「さ、お堅いのはここまでだ!」
「このまま平定祭開始とするぞ!」
「カイン、ゴドラ、アキナ、カルロ!」
「ガイア内に開始のお触れをだせ!」
「フウカ! 国賓の皆様を宴会場にご案内してくれ」
カイン「承知しました」
ゴドラ「承知しました」
アキナ「はーい!」
カルロ「おう!」
フウカ「承知しました」
くろむの合図で大陸平定祭が開始された。
各国の王たちには、フウカたち狐人族による接待を受けることになった。
見た目麗しい上に、普段から接客業に慣れ親しんできた彼女たちの接待は
各国の王たちを大いに喜ばせることになった。
美味しい料理と美味しいお酒と最高の接待にて、警戒心を解いた王たちは
互いに談笑を始め、親交を深め始めていた。
料理やお酒が尽きるころには、フウカたちが先導してガイアの観光を始め、
気が付けば夜更けとなっていた。
くろむ「もういい時間になったので、お祭りも終わりにするけど、
時間が許すなら明日以降も観光したりして楽しんでくれ」
「俺は明日から所用があるから付き合えなくて申し訳ない」
「フウカ、皆さんを宿泊施設までご案内してくれ」
フウカ「承知しました、皆様どうぞこちらになります」
フウカに先導される王たちを見送ったくろむは自室に戻ると
アキナがくろむを待っていた。
アキナ「ねぇ…… くろむ」
「明日からカオス様の試練を受けにいくことになるのよね?」
くろむ「そうだな、こっちもひと段落したし、
与えられてる時間もあまりないみたいだからな……」
「明日から試練に挑むつもりだよ」
アキナ「そうだよね……」
「心配で仕方ないけど…… しょうがないよね…………」
くろむ「すまないな、これは避けてはいけなさそうな気がするんだ……」
アキナ「謝らないで…… くろむが必要と思うことはするべきだと思う」
くろむ「ありがとな」
「アキナ、今日は一緒にいてくれ」
「試練で俺の心が折れたりしないようにアキナで俺を満たしてほしい」
アキナ「……くろむ」
くろむとアキナは静かに抱きしめ合った。
悪魔大陸に行く前以上の緊張をお互いにつぶし合うように
相手と触れ合い、自分を相手で染めようとしていた。
くろむは試練の内容の他にも不安に思っていることをアキナに聞くことにした。
くろむ「なぁ、アキナ」
アキナ「ん?」
くろむ「この試練をクリアして帰ってきたときには、
俺は半神になっているんだと思う……」
「つまり、人間じゃなくなる」
「そんな俺だけど、大丈夫か…… ?」
アキナ「そんなことを不安に思ってたの??」
「神だって所詮種族違いの生き物でしょ?」
「アイギスはどんな国なんだっけ?」
くろむ「……多様な種族が共存共栄する国…………」
アキナ「うん! だから大丈夫!!」
くろむ「アキナ……」
「なぁ、試練から戻ったら俺と結婚してくれないか?」
「盛大な式とかは全てが片付いてからになるけど……」
アキナ「嬉しい、やっと言ってくれたね♪」
「もちろん、OKだよ♪」
くろむ「ありがとう!!」
くろむとアキナは改めて互いの愛情を確認し、全身で感じ取りつつ
共に眠りに落ちた。




