64話.ベルゼブブ
悪魔たちの3番手として舞台に上がったのは、レヴィアタンとはまた違った意味で
異形な姿をしていた。
くろむ「あぁ……」
「お前はベルゼブブだな……」
ベルゼブブ「確かに我はゼルベブブなり」
「人間どもに姿恰好まで知れておったとはな」
くろむ「この世界の人間がどうかは知らないけど……」
「俺のいた世界では7大悪魔であり、蠅の王のベルゼブブは有名だな」
「しかし、まんま蠅をでかくした姿ってどうなんだよ……」
「確か魔力は王であるサタンを凌ぐっていう話だったな」
ベルゼブブ「なかなか詳しいではないか」
くろむ「ささっと、俺の養分として死んでもらうわ」
「お前を長くみるのは、耐えれない……」
ベルゼブブ「失礼なやつめ!!!!!」
ベルゼブブはそう言うと、大量の蠅を使役し、くろむに対して放った。
しかし、1匹たりともくろむに近づくことさえできなかった。
全ての蠅は、くろむが周囲に展開していた冷気により一瞬で凍り付いていた。
くろむ「そんな気持ち悪いもの飛ばしてくんじゃねーよ!!」
ベルゼブブの攻撃に気分と機嫌を悪くしたくろむは、
ベルゼブブの足元より巨大な土の塔を出現させた。
出現速度が異常なほど高速であったため、ベルゼブブはそのまま上空に
吹き飛ばされることになった。
しかし、ベルゼブブは自身の持つ羽根によって、姿勢を制御し、
上空よりくろむを見下ろすと、くろむが膨大な魔力を練りこみ始めているのを
見つけた。
ベルゼブブ「我と魔力勝負とは笑止」
「その勝負受けてやる!!」
ベルゼブブは上空に静止し、魔力を練りこみ始めた。
くろむはその様子を地上より眺めながら、にやりと表情を崩した。
くろむ「悪魔王サタンを凌ぐといわれるその魔力、
たっぷりと堪能させてもらうぞ!!!!!!!」
「指向性を持たせた…… 地獄大業火釜!!!!!」
ベルゼブブ「くらえ!! 暗黒炎獄!!」
くろむとベルゼブブは、奇しくもどちらも地獄の黒炎を
使役する魔術を選択していた。
くろむからは、黒炎が極太のレーザーのように照射され、
ベルゼブブからは、巨大な黒炎球が放たれた。
互いの黒炎が衝突した瞬間、ベルゼブブの黒炎球がくろむの黒炎レーザーを
飲み込みながらくろむ目掛けて飛翔を続けた。
くろむは注ぎ込む魔力を倍増させ、黒炎レーザーの太さを2倍にした。
すると、黒炎レーザーは黒炎球を押し返し始めた。
ベルゼブブ「魔力に自信があるだけのことはありますね」
「では、これではいかがでしょうか?」
ベルゼブブは、先ほどと同等の黒炎球を自身の周囲に10個浮かべた。
くろむ「まじかよ……」
「このクラスを10個も追加とか……」
「あいつもかなりの魔力バカだな…………」
「なら、こっちはこうだ!」
「聖凍土棺桶!」
くろむは、ベルゼブブの周囲に浮遊している黒炎球を1つづつ
聖凍土棺桶で包み込んだ。
そして発光ののち、黒炎球は消滅した。
ベルゼブブ「これだけの魔術を使用中にさらにそんな魔術まで使えるのですね!」
「楽しくなってきてしまいましたよ!!!!!」
ベルゼブブはさらに魔力を練りこみ始め、さっきの黒炎球の10倍のサイズの
黒炎球を5つ作り出して、くろむに放った。
まもなくベルゼブブに到着するであろうというところまで、
押していたくろむの黒炎レーザーであったが、
これにより一気に押し込まれ出した。
くろむ「やっべぇな……」
「あいつ半端ない……」
「しかもさっきから強奪眼で力吸い出してるのに、底がいまだに見えないな……」
「レヴィアタンから吸収した<闇>属性の魔力も試してみるかな」
くろむは、黒炎レーザーにさらに魔力を込めて、少しでも拮抗させつつ、
どうするかを思案していた。
奪ったばかりの<闇>属性を単純に使ってもベルゼブブに通じる気がしなかった。
そこでくろむは、<光>と<闇>という相反する属性を
混ぜ込むとどうなるのだろうと考え始めた。
元いた世界にあった話では、相反する属性が相殺しあって、
使った魔力そのものが消滅して、何の反応を起こらない可能性。
相反する属性が互いを互いに高め合って、全てを消滅させる力が生まれる可能性。
予想される結果が真逆の結果すぎて、実際に試すことにくろむは躊躇していた。
しかし、ベルゼブブの放った黒炎球が徐々に自分に迫ってきている現状において、
そんなことに迷っている暇はなかった。
くろむ「くそが!!!! なるようになりやがれ!!!!!!」
くろむは、目いっぱいの出力で、<闇>と<光>の属性の魔力を自分の頭上に
集め、混ぜ合わせ始めた。
相反する属性の魔力は互いに反発しあい、はじけ飛ぼうとする。
くろむは、魔力が集まり反発しあっている場所に空間断裂で次元の壁を生成し
密封した。
そして反発してはじけ飛ぼうとする魔力のベクトルを捻じ曲げ、
ぶつかりあうように空間を操作する。
このときのくろむは夢中であったため、自分がそこまで空間を
制御できるようになっていたことにこの時は気づけなかった。
この戦いを自分の空間より傍観し続けていたカオスは、思わず声を上げた。
カオス「なんて奴だよ!!!!」
「くろむって、空間神になる才能あるじゃん♪」
カオスのそんな驚きなど知るはずのないくろむは、必死だった。
ベルゼブブの黒炎球に押し切られないように、黒炎レーザーを維持強化しつつ、
自身の頭上に作り上げた空間内で暴走し続ける2属性の魔力を
必死にコントロールする。
時間にすればおそらく1分程度の時間であったが、
くろむには1時間ほどの時間に思われた時間が過ぎたころ、
相反する属性の魔力が綺麗に混ざり合っていた。
くろむ「ふぅ…… 相反する属性の混ぜ方のコツを少しつかんだわ……」
「…… さてと、ベルゼブブ待たせたな!!」
ベルゼブブ「大して待っていませんよ」
「むしろ、次の手であろうその魔力の塊に興味が尽きませんよ!!」
くろむ「これ以上は待たせないから安心しなよ!!!!!」
「だけど、これ食らったらたぶん死ぬと思うから、がんばれ!!!!」
「原子分解光線!!!!!!」
くろむが魔術名を叫ぶと、頭上の空間より半径2メートルの七色の光のレーザーが
ベルゼブブの黒炎球に向かっていった。
七色の光のレーザーが、黒炎球に触れた瞬間に、黒炎球は消し飛んだ。
そして、その勢いをまったく落とすことなく、ベルゼブブに牙をむく。
予想をはるかに上回る事態が起こったことにより、
ベルゼブブは呆気にとられていたが、自分を上回る魔術の使い手とその魔術に
出会えた喜びと悔しさに複雑な表情をしながら、七色の光のレーザーに包まれた。
七色の光のレーザーが上空に消え去ったとき、
ベルゼブブの姿はどこにもなかった。
くろむ「はぁ…… はぁ…… はぁはぁ……」
「さすがにこいつはキツイな……」
ナビ 「キツイだけで済んでるのが可笑しいけどね」
くろむ「お、ナビか」
「ありがとな、少し元気でた♪」
ひょっこり声をかけてきたナビの声で、疲労困憊であったくろむは
少し元気が出た気がした。
くろむ「サタン、俺の勝ちだよな?」
サタン「えぇ、そうですね……」
「すごいものを見せてもらいましたよ……」
「しかし、かなりお疲れの様子、このまま連戦でよろしいので?」
くろむ「どうせ、次はお前なんだろ?」
「この程度なら戦いながら回復するから心配ねーよ」
サタン「ほほぉ…… 我もだいぶ舐められたものだな!!!!」
サタンは怒りを込めた魔力を一気に爆発させ、舞台に飛び乗った。




