59話.作戦開始
ガイアに帰還したくろむは、アキナの元に向かっていた。
くろむ「アキナ……」
アキナ「バカ…………」
くろむ「すまない、でもみんなを、アキナを守るにはこれしかないんだ……」
アキナ「……」
くろむ「ダインとサラカのほうは無事終わった」
「アキナ…… お願いがあるんだが…………」
アキナ「なに?」
くろむ「今日は一緒に居てくれないか……」
「……さっきから手の震えがとまらないんだ…………」
アキナ「みんなの前で話してるときから気づいてたわよ」
「うまく隠そうとしてたみたいだけど、わたしは誤魔化せません!」
くろむ「さすがだな」
「アキナ、愛してるよ」
アキナ「わたしも愛してるわよ」
2人はそのまま口づけを交わした。
今まで何百回としてきたことではあるが、
今回のそれはいつものそれとは違っていた。
いつも以上に愛情をぶつけ合い、互いを求めあい……
お互いに自分にとって、もっとも大切なものが何なのかを再認識しつつ、
相手にとって自分がその対象でもあることを痛いほど感じ合いながら……
アキナ「ねぇ…… わたし、くろむとの子が欲しい……」
くろむ「俺も欲しいが、今言うなよな、縁起悪い」
アキナ「そうだよね、ごめん」
「わたし、弱気になってるわね……」
くろむ「俺は必ず生きて帰ってくる!」
「帰ったら、俺の子を産んでくれ」
アキナ「… うん!!!」
2人は次の日の朝まで激しく求めあいながら、愛し合った。
2人は名残惜しそうにしながらもルーム内から出た。
くろむ「…… じゃあ、いってくる」
アキナ「うん ……」
くろむ「必ず生きて帰ってくる!」
「アキナも生きて帰ってきてくれ」
アキナ「約束よ」
2人は軽く口づけを交わすと、それぞれ行動を開始した。
くろむは、ダイン獣王国の王都まで空間転移で移動し、
その後、海岸まで空間転移で移動した。
くろむ「さて……」
「どれだけ距離があるんだか……」
果てしなく広がる海岸線を見ながら、くろむはボヤいた。
アキナからいっぱいの愛情と勇気をもらったくろむは、
めいっぱい上空まで空間転移をした。
雲の上まで空間転移し、地上から自分のことが確認できないほどの
上空にいることを確認後、目に映るめいっぱい遠くまで空間転移した。
空間転移
出現ポイントから落下
落下途中で再度空間転移 ………………
何回繰り返したのであろうか、気が遠くなるほど繰り返し、
周りはすっかり暗くなり、夜になったことだけはわかった。
周りが明るくなりだし、朝を迎えても大陸のカケラも視界には入らない。
ホントにこのまま行けば大陸はあるのだろうか……
疲れた……
眠い……
でも、ここで空間転移をやめれば海に落下し、
海の魔物の食事の対象になるだけだ……
疲労と睡魔と孤独により、くろむの思考はネガティブな思考に
支配されそうになっていた。
そこでふとアキナの言葉が脳裏に蘇る。
「生きて帰ってきて」
くろむにとって、アキナの望みを裏切ることは、
自身の死より受け入れがたいものであった。
アキナの言葉を思い出し、くろむは前向きな思考を取り戻すことができた。
くろむの空間転移の旅は、さらにこのあともう1日以上続くことになった。
くろむ「このスピードで移動して2日たっても、まだ大陸が見えやしない」
「こんなもん普通に船で移動とか無理じゃね?」
くろむは、そんなことをボヤきながらも、空間転移を続けた。
その日の日が沈みかけたころ、やっと大陸の端が視界に入った。
くろむ「やっと見えた……」
「さすがに遠すぎるだろ……」
約3日かけて大陸に到着したくろむは疲れ切っていた。
くろむ「さすがにこのまま進むのは自殺行為すぎるな……」
ナビ 「当たり前よ、どんなけ無茶すれば気がすむのよ……」
くろむ「おぉ、ナビ久しぶりだな」
「この3日間一切声かけてこなかったから、どうしたんかと思ってたぞ」
ナビ 「あんたが真剣すぎて、声なんてかけれるわけないでしょ……」
「声かけて集中が切れられても困るし、
そもそも頭の中をアキナでいっぱいにしてたじゃない」
くろむ「お前、俺の頭の中覗けるのか!??」
ナビ 「できないわよ!」
「できないけど、あれだけ譫言のようにアキナ…… アキナ…… って
言ってればわかるわよ…………」
くろむ「そんなこと言ってたのか……」
くろむは、ナビに指摘され恥ずかしくなったのを誤魔化すように
周囲を見渡した。
くろむ「しかし、なにもない場所だな……」
「よし、そこの岸壁の途中に横穴をあけるとしよう」
くろむは、近くの岸壁に深さ2メートルくらいの横穴を開け、
その入り口を光学迷彩の壁を生成して塞いだ。
そして、横穴内にルームの入り口を生成した。
くろむ「これで、この穴が見つかることはまずないだろう」
「一旦、ルームに戻って明日まで寝ることにするわ」
ナビ 「それがいいと思うわよ」
「みんなも今日の朝には進軍してるだろうから、
会うこともないだろうし、ゆっくり寝なさいよ」
くろむ「そうだな……」
くろむは、みんなの安否を気にかけながらベットに横になる。
さすがに疲労しきっていたくろむは、1分とたたずに眠りにつく。
ナビは眠って意識のないくろむに対して、優しい声で話しかけた。
ナビ 「おやすみ、くろむ」
「起きたら、あんたには地獄の試練のような現実が待ってるのよね」
「今だけでもゆっくり休んで、万全を取り戻してね」
「しかし、カオス様ももうちょっとなんとかできなかったのかしら……」
「こんなくろむやアイギスのみんなを試すようなことを……」
「なにか裏の真意があるのかしら……」
すっかりくろむに情が移ってしまったナビには聞こえなかった。
カオスがボソッと「ビンゴ♪」と言ったことを……
くろむは疲れ切っていたため、次の日の昼過ぎまで眠っていた。
ストレージから食事を取り出し、昼食?を済ませて横穴に戻っていた。
くろむ「ナビ~、朝起こしてくれよ……」
ナビ 「あんなに疲れてたんだよ?」
「少しでもゆっくり寝かせてあげたかったの!!!」
くろむ「そっかぁ……」
「ありがとな」
くろむは、ナビにお礼を言いつつ、魔力検知にて周囲の様子を窺った。
この横穴周辺には一切魔力反応がなかったため、くろむは地上へと戻ることにした。
くろむ「誰もいない地域でよかったよ、到着早々に絡まれたくはないしな」
ナビ 「あんた、運のステータスも異常に高いこと忘れてない?」
くろむ「…… そういえばそうだったわ」
ここ最近は慣れ始めていた自分のチートっぷりに久しぶりに呆れつつ、
くろむは、先ほどより広範囲に魔力検知を使った。
その結果、このまま大陸奥地にひたすら進んだ方向で
魔力検知に反応するものが多数見つかった。
くろむ「あっちの方向に魔力を多数感じるから、あっちに向かうかな」
ナビ 「とりあえず、慎重にね?」
くろむは、<魔力操作>と<気配操作>にて、自分の魔力反応と気配を
限界まで薄くして、自分で指を指した方角に歩き始めた。




