52話.謁見
クラス孤児院を後にしたくろむたちは、ダイン王との謁見までの数日間、
王都中をまわり、同様の扱いを受けている孤児院を数件発見していた。
発見する度にクラスに話した内容と同じ内容を説明し、お願いして回った。
どの孤児院の責任者もみな、クラスと同じ反応であった。
そして、くろむたちは謁見当日の朝を迎えていた。
くろむ「ふはぁ~~~、みんなおはよう!」
アキナ「謁見は今日なのよ!!!??」
「気の抜けた挨拶しないの・・・!」
くろむ「ごめん、ごめん」
カルロ「そろそろ迎えの馬車が着くと思うから
しっかりしてくれよ、兄貴・・・」
くろむが眠気を覚ましていると、迎えの馬車がついたとの連絡が入る。
くろむたちが馬車に向かうと、思いがけない人物が立っていた。
カルロ「ま、マイン!???」
「なんでお前が迎えに??」
マイン「他国の王が謁見のために来ているのを迎えにいくのじゃぞ?」
「さすがに4騎士が迎えに行かないとマズイじゃろう」
カルロ「普段は粗暴な国のくせに、そういうとこだけはしっかりと配慮するのな」
マイン「これでも<国>じゃからな」
「くろむ王、お待たせしてしまって、申し訳ありません」
「こちらの馬車にお乗りください」
くろむたちが案内された馬車に乗ると、王城に向けて出発した。
迎えにきた馬車は、
まさに<絢爛豪華>という言葉がふさわしい存在感の馬車であった
しばらくすると、王城に到着し、謁見の間へと導かれた。
謁見の間に入ると、正面の王座に虎人族の男が座っている、
おそらく彼が獣王ダインなのであろうとくろむは思った。
そして、マインがその左隣に移動していた。
獣王ダインの左右に2人づつ屈強な戦士が並び立つという
威圧感すら感じる謁見の間。
くろむは、2人を引き連れてダイン王の前まで歩を進める。
くろむが立ち止まり、ダインに目を向けると、
アキナとカルロは反射的に跪いた。
しかし、くろむは立ったままであった。
くろむ「ダイン王、お初にお目にかかる、魔道国家アイギス国王のくろむです」
「急な申し出に対応してくださって、ありがとうございます」
ダイン「くろむ殿よ、こちらこそご足労願ってすまなかった」
「余が獣王ダインだ」
「そちらのカルロ殿から話は伺っておりますかな?」
くろむ「えぇ、概ねはね」
「そして、こちらに到着後数日でご相談したい内容も増えました」
「しかし・・・・」
「とりあえずは、<力を示せ>ですよね?」
ダイン「話が早いのは助かる」
「このあと演舞場にて演舞をしてもらうことになるわけだが・・・」
「<誰と、どんなルールで>がまだ決まっておらん」
くろむ「お相手はダイン王が自らしかないと思いますよ」
「4騎士殿たちでは実力差がありすぎる」
ダイン「余はそういう強気な男は好きだ」
「だが、ハッタリであった場合は・・・・」
「その身で大層な暴言を吐いたことを贖わせる」
くろむ「この場でそんな脅しはいらないですよ」
「ルールですが・・・・」
「色々と細かいことは面倒なので・・・・」
「1:1の殺し合い」
「仮にどちらがどちらを殺しても恨みっこなし」
「これでいいのではないですか?」
ダイン「死にたいのか?」
くろむ「ダイン王、あなたじゃ俺を殺せませんから安心してください」
「俺はダイン王をできるだけ殺さないように努力はしますけどね」
ダイン「・・・・・」
「余を怒らせたい・・・ というわけか」
「わかった、そのルールで良い、後悔するなよ」
マイン「ダイン様!」
ダイン「だまれ!!!!!」
マイン「申し訳ありません、演舞場にご案内します・・・・」
演舞場につくと、マインとカルロが立ち合い人を務めることになった。
マイン「両王の御意向ですので、
<1:1の殺し合い>とはさせてもらいますが・・・・」
「どちらかが降参した場合に限り、
両者生存のまま演舞終了とさせて頂きます!!!」
カルロ「兄貴、悪いがこの条件は飲んでくれ・・・・」
くろむ「別に殺したいわけじゃないから、こちらはそれでOKだよ」
ダイン「ふんっ! 余も飲んでやる」
マイン「ありがとうございます」
「では、演舞を開始しますので、中央で対峙してください」
マインの指示に従い、演舞場の中央にて対峙する二人。
互いの視線が交差した瞬間、
ダインはカルロ戦のときの数倍の闘気を放ち、自身に纏った。
くろむもまた、先日のカルロたちのときの数十倍の魔力と闘気を放ち、
混じり合った<魔闘気>を身に纏った。
あまりの出来事に一瞬あっけにとられたマインであったが、
マイン「演舞、はじめ!!!!」
マインの宣言と共に、ダインは巨大な戦斧を両手で持ち、突進してきた。
くろむは、先日ソイソたちに放った拘束に特化にした<聖凍土棺桶>で迎え撃つ。
ダインの身体は纏った闘気ごと氷づけとなった。
その氷の棺は、
数秒後にはヒビが走り、パリンっ!!!!!という音と共に砕け散った。
くろむ「さすがにその程度じゃ止められないか!」
「さすがに弱めに打ちすぎたみたいだ、すまんな!!」
ダイン「ふざけたマネをしやがって・・・・」
くろむの言葉にイラッとしたダインは、
自身が纏っていた闘気を全て戦斧に纏わせた。
くろむに1撃を入れるために、戦斧を両手で持ちあげようとしたが、
持ちあがらなかった。
ダインは自身の両手が凍らされていることにその時初めて気が付いた。
そして、次の瞬間両足が土塊によって拘束されていた。
ダインは、闘気を再び全身で纏い、それを外側に向け、解き放った。
それにより、
両手・両足の拘束は解かれたが、その瞬間にくろむは魔術を発動させた。
くろむ「アイスピック」
直径10センチ程度まで圧縮させた氷鋲を生成し、ダインに向けて放つ。
放たれた氷鋲は、
両肩/両肘/両掌/両膝/両足首 を貫いた。
四肢をもがれるような痛みを感じたダインはたまらず、片膝をついた。
ダイン「こいつめ・・・・・、ぶっ殺してやる」
「!!!!!」
ダインは、悪態を吐いた瞬間、
自身の首筋に冷たいものがあたっていることに気が付いた。
くろむ「チェックメイト! かな?♪」
ダインの首元にアイスランスの穂先を軽く当てながらくろむは言った。
ダイン「くっ・・・・」
「余の負けじゃ・・・・」
マイン「・・・・・!!!」
「勝負あり!演舞終了じゃ!!!」
あまりの事態に呆気にとられていたマインであったが、
すぐに状況を理解し、演舞の終了を宣言した。
くろむ「大した傷じゃないと思うけど、一応な」
「ヒーリングウォーター」
くろむの治癒魔術によって、アイスピックで負った傷が全回復する様をみて、
ダインは驚いていた。
ダイン「くろむ王よ、治療魔術まで使えるのか」
くろむ「まぁ魔術は得意なのでね、色々と使えるよ」
ダイン「悔しいが、ここまでの差を見せつけられては認めるしかない」
「余の負けじゃ・・・・」
「謁見の間に戻るのも面倒なので、話はここで聞くでもよいか?」
くろむ「えぇ、聞いてくれるなら場所は選びませんよ」
演舞場の床に直接座り、向き合う二人の王。
くろむは自身の要求を全てダインに伝えた。
・建国を認めること。
・迷いの森の領有権を放棄し、くろむに譲渡すること。
・今後、ルインと不可侵と通商と防衛の条約と同盟を締結するが、
ルインに敵対しないでほしいこと。
・この王都内で虐げられている者たちを本人たちの同意のうえで
アイギスに受け入れたいこと。
ダイン「また、カルロ殿の話よりだいぶ大きな話になっておるな」
くろむ「まぁあのときは決めてなかったことも今回含んでいるからな」
「それに詳細は王同士で話したほうが早いだろ?」
ダイン「否定はせぬ」
「本来なら呑み込めぬ内容だらけだが・・・」
「<力を示した>者であり、しかも余が完敗したものの意見・・・」
「ダイン獣王国の王としては聞くしかないな・・・・」
くろむ「なら、全部承認ってことで?」
ダイン「いや、全部のむ代わりに1つ条件がある」
くろむ「聞こうか」
ダイン「ダイン―アイギス間でも
<不可侵条約>と<通商条約>を含んだ同盟を結ぶこと」
「くろむ王に本気で攻められるとか考えたくもないわ」
くろむ「じゃあ、ダイン―ルイン間でも同じものを結んでくれ」
「3国同盟ということにしようぜ」
「ルインの防衛は、アイギスとダインの2国で受け持つこと」
ダイン「悪い条件ではないな」
くろむ「よし、じゃあルインを説得後に
書類を作成して、正式に調印ってことでいいか?」
「調印の場所はどこにしような」
ダイン「ガイアが妥当であろうな、同盟の盟主はアイギスだろうしな」
くろむ「ダイン王がそれでいいならそれでいこうか」
「今日はこれで退席させてもらうよ」
「さっき言った俺についていきたいと言ったものたちを
このままアイギスに連れていくけどいいか?」
ダイン「好きにせい、連れていきすぎないようにはしてほしいがな」
くろむ「そんな大量に連れて行く気はないから安心していいよ」
「調印の連絡を送るときに、何人ほど連れていったかは報告する」
ダイン「わかった」
そう言い残し、王城を後にしたくろむたちは、
クラスたちを迎えに行き、ダインと合意した内容を伝えた。
くろむは、このままとりあえず<狐人族の隠れ里>に向かうことを告げた。
くろむ「ゴドラ~」
「そっちはどんな感じだ?」
ゴドラ「くろむ殿、申し訳ございません」
「まだ説得の最中でございます。」
「実際にくろむ殿にお会いしてみないことには決められないと・・・」
くろむ「もっともな話だな」
「むしろ、よくそこまでは話を進めてくれた」
「ありがとうな」
「で、その里の場所どこなんだ?」
くろむたち一行は、ゴドラに教えてもらった
<狐人族の隠れ里>に向かい、歩き出した。




