51話.王都のオモテとウラ
くろむたちは、市場から漂う<いい香り>に惹かれながら、市場に辿り着いた。
丁度昼頃というのもあり、市場は非常に賑わっていた。
くろむ「いい香りだなぁ~」
「とりあえず、先に飯にするか!」
アキナ「さんせ~~い♪」
「わたしもお腹すいたよ~」
カルロ「兄貴!! これにしようぜ!!!!」
カルロが肉串の屋台を指さした。
屋台からは、様々な香辛料の香る大振りな肉が
串にささった肉串を販売していた。
肉串屋「にーちゃん、安くしとくぜ!」
くろむ「たしかにこれは旨そうだな」
「んじゃ、この肉串を8本くれ」
肉串屋「まいど! 1本5銅貨だから、40銅貨な!」
くろむは、お金を支払い、肉串を受け取る。
一人に2本づつ渡し、2本をストレージに入れる。
くろむ「ギンジ、お前の分の肉串をストレージにいれておいたから、食べてくれ」
ギンジ「ありがとうございます」
アキナ「これ美味しそうだけど・・・」
「このサイズだと2本も食べれるかな・・・・」
くろむ「余ったら、俺が食うから食べたいだけ食べなよ」
アキナ「ありがと♪」
カルロ「どこでも隙あれば、イチャつくよな、兄貴たちって・・・」
ナビ 「もう背景のように扱うべきよ」
「リアクションするのも面倒・・・・」
カルロ「だな・・・」
くろむ「・・・」
アキナ「あそこに小さな公園があるよ♪」
「あそこで食べよ~よ♪」
くろむ「ん、そうだな」
くろむたちは、公園に向かい設置されていたベンチに座る。
各々、周囲を眺めながら肉串を食べ始めた。
くろむ「美味いな!!!」
「今度、エレンにも作らせてみよ♪」
アキナ「それいいね~♪」
「美味しい食事は大事だよね!!」
カルロ「それは賛成だな!」
くろむ「しかし、この国は色んな獣人がいるのはもちろんだけど、
人族を始め結構な多種族が住んでるんだな」
「やっぱり、いろんな種族が一緒に住む場所って俺は好きだわ」
アキナ「そうだよね~」
カルロ「俺も初めてきたときに、それ思ったよ」
「この風景が兄貴の目指す風景に近いものなのかもなぁってな」
「でもな・・・」
「あそこの屋台の横を見てみ・・・」
カルロが指示した場所を見てみると、そこにはやせ細った犬人族が
狼人族の男に殴られながら、怒られていた。
内容に聞き耳を立ててみると、屋台の商品の仕込みに失敗して
材料を無駄にしたという内容であった。
カルロ「多種族が一緒に住む光景はたしかに心地よくて俺も好きだ」
「ただ、この国は<力><強さ>が全てだ」
「そのせいで、弱者は強者に虐げられる・・・」
「そして、周りもその光景を当然のことだと受け入れてしまっている」
「この光景は胸糞悪い・・・・」
アキナ「・・・・・」
くろむ「確かにな・・・」
「強き者が支配するというわかりやすい構造の弊害か・・・」
カルロ「あぁ、俺たち3人はアイギスで3強だと思っている」
「そんな俺たちはこの光景を自戒として心に刻まないといけないと
この間この街を見て思ったよ・・・」
くろむ「カルロのくせに、正論じゃねーか・・・」
カルロ「・・・・」
くろむ「ただ・・・」
「言っていることは正しい、この光景は胸糞悪い・・・・」
アキナ「たしかにね・・・・」
くろむ「特にうちは俺を中心にしすぎているくらいにしている」
「俺がどんなけ横暴しても通る、<従属>もあるしな・・・」
「・・・・・・・ カルロ、ありがとうな」
「この光景を自戒として、どんな国家運営をするか改めて考え直すよ」
カルロ「へっ、兄貴なら大丈夫だと思うからこうやって従ってるんだけどな」
アキナ「そうだね!!」
「くろむなら大丈夫だし、もしものときは・・・」
「わたしが、めっ!!!! ってするから♪」
くろむ「あはは、それは怖いな!!」
3人は笑い出した。
それぞれ思うところはありながらも笑い合いながら、肉串を食べつくす。
くろむ「しかし、これはどっから手をだすべきかね・・・」
「さすがにさらって行くわけには行かないしな・・・」
アキナ「それはマズいことにしかならないね」
カルロ「ダイン王に筋を通した上で、ついてきたい奴のみ連れて行く」
「ぐらいしかないんじゃないか?」
くろむ「まぁなぁ・・・」
「正攻法としてはそれだよな」
「他に妙案があるわけでもないしな・・・」
「そういえば、カルロが案内してもらった狐人族には会えるのか?」
カルロ「どうだろうなぁ・・・」
「会えば話くらいできるんだろうけど・・・」
「マインの部下だし、どこにいるやらだぞ?」
くろむ「まぁそうだよな・・・」
「結局は、ダインをぶっとばして話をするしかないか・・・」
カルロ「勝つことは決まってるんだな」
くろむ「当たり前だろ?」
カルロ「確かに兄貴は底が見えないくらいに強いけどさ・・・・」
アキナ「油断しちゃダメだよ??」
くろむ「あぁ、それはしないよ!」
「むしろ、殺しちまったり、後遺症が残ったりとか、
そうさせない調整をどうすべきか悩んでるよ」
「ある程度は本気ださなきゃ勝てないだろうしな」
アキナ「・・・自信まんまんなのね」
カルロ「まぁそこは俺も不安視してたところだけどな・・・・」
くろむ「ま、そこはそことして今は観光と視察をしようぜ」
アキナ「う、うん」
くろむたちは、王都の中を回ってみることにした。
多種族が住む国家というのは伊達ではなく、
それぞれが手を取り合って生活しているのをそこかしこで見ることができた。
しかし、路地に入ると、<力>の横暴が支配する世界が顔を出す。
強者が弱者から搾取する世界。
くろむは自分の理想の裏側を、思いもよらず見せつけられる結果に
気分を落とす。
路地の奥より、子供たちの楽しそうな声が聞こえてきた。
落ち込みつつあるくろむに、無邪気な声がやけに優しく聞こえた。
くろむ「子供のはしゃいでる声が聞こえるな」
アキナ「この奥からだね」
くろむたちは、声の聞こえるほうに歩いて行った。
すると、かなり老朽化の進んだ一軒家が見えた。
その家の庭では、
犬人族のご老人と4人の子供たちが楽しそうに遊んでいた。
門には<クラス孤児院>と書かれていた。
くろむ「孤児院なのか」
「あの老人が責任者かな」
「すいませーーん」
老人 「ん? どなたかな?」
くろむ「突然すいません、くろむと申します」
「孤児院について少しお話を伺いたいなと思いまして」
老人 「こんな見捨てられた孤児院に珍しいお人だ」
「わたしは、クラス」
「この孤児院の責任者です」
「狭いとこですが、中でどうぞ」
クラスに導かれるまま、建物の中に入るくろむたち。
クラス「何もないとこで、申し訳ありませんが、お座りください」
くろむ「おかまいなく」
クラス「話を聞いたいとのことでしたが、どうなさいましたか?」
くろむ「路地での光景で落ち込んでいたところ、
ここの子供たちの声に癒されましてね」
「少しお伺いしたいなと思ってやってきたのですが・・・・」
「先ほど言われました<見捨てられた孤児院>とはどういうことですか?」
クラス「そのことですか・・・」
「この孤児院は国からの援助を打ち切られて、
潰れるしかない孤児院なのです」
くろむ「なぜ援助を?」
クラス「孤児が4人しかいない、
しかも大人になっても強い戦士にはなりにくい
狐人族の孤児しかいないから、と言われました」
くろむ「・・・・」
アキナ「酷い・・・・」
カルロ「これがこの国の実情ってことかもだな」
くろむ「クラス殿、折り入ってご相談があります」
くろむは、自分の立場や想いをクラスに伝えた。
・自分が先日建国した魔道国家アイギスの国王であること。
・今はダイン王との謁見待ちであり、数日後には謁見できること。
・アイギスは多種族が手を取り合って共存する国を目指していること。
・ダイン王との謁見の際、この孤児院および
同様の扱いを受けている全孤児院をアイギスで引き取る話をしたいこと。
・孤児院に関わらず、<力>が低いばかりに冷遇されているもののうち、
アイギスへの移住を希望するものを移住させたいという話をしたいこと。
くろむ「もちろん、クラス殿の同意がとれたら・・・とはなります」
クラス「ありがたいお話ではありますが、
そもそもアイギスという国を知りません」
くろむ「現段階では、人族/獣人族/獣族/ゴブリン族/竜人族/ドワーフ族が
共存してます」
「そして、狐人族の隠れ里に対しても移住のお誘いを
だしているところです」
「俺はこの国に来て、表通りなどの光景から
この国が自分の理想の国を体現しているように見えました」
「しかし、街の片隅や路地では、
強者が弱者から搾取するという裏の顔も見ました」
「<力>を全てとするのではなく、互いが互いを補い支え合って共存する」
「それが自分の理想とする国であると、改めて思いました」
「その理想の実現を目指すものとして、
この状況の孤児院を見捨てるという選択肢は俺にはありません」
「だから、今回こういうお願いになりました」
クラス「あなたは良いひとのようですね」
「しかし、ダイン王がそれを許可するとは思えません」
くろむ「普通ならそうでしょうね」
「ダイン王が望む通り、<力を示して>話を通しますよ」
クラス「あの王に勝てるとでも・・・・」
くろむ「もちろんですよ」
クラス「・・・・・・・・・・・・・」
「わかりました、くろむ殿がダイン王より許可を取れたのでしたら
わたし含め、孤児院ごとくろむ殿のお世話にならせてください」
くろむ「その言葉を聞けて安心しました」
「では、ダイン王を説得後にまた伺いますね」
くろむは、クラスにそう告げると、孤児院を後にした。
ダイン王に勝たなければならない理由を一つ増やしたくろむは、
その責任を噛みしめながら、宿への帰路についたのであった。




