26話.離脱
3時間くらい経過した頃、ダンと一人の男が部屋に入ってきた。
ダン 「待たせたな」
「こやつがルインの議長をしておる<サラカ>じゃ」
サラカ「くろむさん、はじめまして」
「ルイン自治議会の議長をしているサラカです」
くろむ「はじめまして、くろむです」
「ご足労頂きありがとうございます」
サラカ「ダンからとんでもない新人が入ったとは聞いていましたが、
想像なんて軽く超えてしまうお人ですね」
「歓談を楽しみたいところではありますが、
それを許される状況ではないため、さっそく本題に入りますね」
「まず現状についてですが・・・」
「冒険者くろむが魔物討伐の感謝の意を伝えるために呼び出した
バラド侯の右腕を切断し逃亡した」
「これが<カロライン王国>出身の3議員から
議会に報告された内容です」
「実際の状況はダンより聞き把握しておりますが、
現在、僕以外の全議員がくろむ討伐の決議を迫っています」
「おそらく、<カロライン王国>からも
数日以内に抗議の使者が来ると思われます」
くろむ「まぁ概ね想像通りではあるが、貴族ってのは相変わらずだな」
サラカ「あははは・・・、くろむさんは貴族がお嫌いみたいですね」
「まぁ僕も大分、苦汁を飲まされてはいますが・・・」
くろむ「でしょうね」
サラカ「僕個人としてはくろむさんの助けになりたいと思っています、
ダンの頼みでもありますしね」
「しかしこの現状において、打てる手は正直多くありません」
「議会でのくろむ討伐の議決はほぼ避けられません」
「よって僕はその議決を受け、ギルドマスターであるダンに
冒険者くろむの捜索および討伐の依頼を出します」
「数週間後、ダンよりくろむは消息不明であると報告してもらいます」
「この報告をもって、この件は有耶無耶にするつもりです」
「くろむさんを救うためにはこれ以外に手はもうありません」
くろむ「俺が暴れるっていうこと以外ではそうだろうな」
ダン 「お前なぁ・・・」
「そうなったらワシらには止める手段はありはせんが、
頼むからそれは辞めてくれないじゃろか・・・」
くろむ「冗談だよ」
「第一、そんなことして迷惑がかかるのは貴族以外のやつらだろ?」
「そんなことをする趣味はないよ」
サラカ「ありがとうございます」
「そこでくろむさんには少なくとも数週間の間、
行方不明でいて頂く必要があります」
「非常に申し訳ないのですが、至急街をでて頂き、
一旦どこかの街道の外れにでも滞在していただけないでしょうか?」
くろむ「まぁ俺たちの場合、野宿も苦ではないから別にいいけど」
サラカ「おススメとしては<ダイン獣王国>側の街道かと思います」
「あの国は強きものを尊敬する国ですので・・・」
くろむ「わかった」
サラカ「まだ数時間程度、この件は街には広がらないと思います」
「その間にダンとの連絡用の奴隷を購入して
街を出て頂けますでしょうか?」
くろむ「でるのは構わないが、なぜ奴隷を?」
サラカ「今後是非とも連絡を取り合い、情報の共有をさせて頂きたいこと」
「そのためにはどなたがダンの元を訪れる必要があること」
「その役目は必ず裏切らない者でなければならないこと」
「以上のことから、
街の外をある程度一人でうろつけてダンの元にくるのが不自然でなく
裏切らない人物・・・」
「元冒険者の奴隷がもっとも適当であると思います」
くろむ「もっともな話だな」
サラカ「これが僕個人と繋がりのある奴隷商への紹介状です」
「街の外で落ち着いたころに一度ダンへ連絡をお願いします」
くろむ「色々ありがとな」
「時間もないようだし、急いでその奴隷商のところにいくよ」
「礼は落ち着いたときに必ずさせてもらう」
サラカ「あはは、期待しておきますよ」
サラカたちと別れたくろむたちは急いで紹介された奴隷商の元に向かった。
奴隷商「いらっしゃいませ」
「本日はどのようなものをお求めで?」
くろむはサラカより受け取った紹介状を手渡す
奴隷商「サラカ様のご紹介でしたか!」
くろむ「元冒険者の奴隷と家事全般が得意な奴隷を1人づつ見繕ってくれ」
「人選はお前センスに任せる、サラカの名に恥じないのを頼む」
奴隷商「旦那はズルい言い方をおっしゃいますな・・・」
「わかりました、ご要望にそう最上の奴隷をお連れしますよ」
しばらくすると、奴隷を2人連れてやってきた。
奴隷商「この二人でいかがでしょう?」
くろむ「お前があそこまでいって連れてきたんだ、信じるよ」
「いくらだ?」
奴隷商「サラカ様のご紹介でありますから・・・」
「合わせて金貨10枚でいかがでしょうか?」
くろむ「わかった、さっそく奴隷契約してくれ」
奴隷契約を済ませた2人を連れて西門をでた。
街道を外れた場所に小さめの洞窟を発見したくろむたちは、
そこを拠点とすることにした。
くろむは奴隷2人を見て、
くろむ「いきなりこんなとこに連れてきてごめんな」
「いまからお前たちに従属契約を行う、受け入れてくれ」
頷く奴隷たちに向け<従属眼>を使った。
くろむ「ちょっとルームの設置とかしてくるから、二人に色々説明しといて~」
くろむはナビにそう頼むと洞窟の奥へと向かいルームの入り口を生成した。
ナビ「はぁ・・・」
ナビに一通り説明をうけた2人は混乱しつつも状況を理解した。
<家事担当として購入した奴隷>
・名前はエレンで、犬人族の♀
・家族の借金返済のために奴隷落ちしていたらしい
<元冒険者の奴隷>
・名前はニーナで人族の♀
・奴隷落ち前は<C>ランクであり、
悪徳商人にハメられて奴隷落ちしたらしい
くろむは二人に今後のことを説明した。
・エレンには、くろむたちの家事全般を担当してもらうこと
・ニーナには、エレンが街への買い出しを行う際の護衛と
ダンとの連絡役をしてもらうこと
・秘密の遵守や裏切らないことなどの制約は課すが
それ以外では奴隷としては扱わず、仲間の一人として扱うこと
くろむ「とりあえず今日はドタバタして忙しかったから今日は休息とする」
ナビ 「この洞窟って街道から一応見えるけどこのままでいいの?」
くろむ「さすがにまずいか・・・」
くろむは認識阻害効果を持たせた擬似光学迷彩魔術を生成し、洞窟を隠した。
ナビ 「こんなもんをサクッと作っちゃうなんてね・・・」
くろむ「うっさい、うっさい!」
「今日はもうルームで休むぞ」
そしてくろむたちはそのまま翌日まで
<ルーム>の中で休息をとった。




