2話.転生者としての歩き方
くろむ「とりあえず、森までついたけど魔物1匹すらいなかったな……」
ナビ 「ここらの草原はほぼ魔物がいない地域だからね♪」
「でもこの森の奥のほうにはいっぱいいるから注意してね!」
くろむ「ふぅ~ん」
「ま、なんかいるか軽く探索でもしてみるかな!」
ナビ 「相変わらず軽いね……」
ナビがなんか言ってるけど、放置して森に入ってみることにした。
探索開始数分で遠くの木の陰に真っ白な狼?っぽいのを発見したので、
魔術の威力の確認がてら戦闘してみることにしよう。
くろむ「そういえば<強奪眼>ってどうやって使うんだ?」
ナビ 「自分の目が<強奪眼>であるとイメージして対象を見ること」
「対象の色が一瞬灰色になったら、
<強奪眼>で対象をとらえたことになるよ♪」
くろむ「また、イメージかよ……
この世界はなんでもイメージなのか?」
ナビ 「そういうわけじゃないけどね、
<魔眼>は魔術の亜種みたいなもんなんだよ」
「だから、イメージが大事になるの♪」
くろむ「魔術系はイメージってことね……」
「えっと、<強奪眼>として見てるイメージ…… イメージ…………」
「お! 狼が一瞬灰色になったぞ」
「えっと、ファイヤーランス!」
発声とともに<火の槍>が生成され、狼に飛んで行った。
<火の槍>は見事に狼の頭に命中し、狼は動かなくなった。
くろむ「うん、魔術の威力問題なし!」
ナビ 「初討伐おめでと!」
「<ステータスボード>を確認してごらん♪」
ナビに言われるがままに確認すると……
レベルは1のままであったが、<敏捷>が<+2>されていた。
ナビ 「これが<強奪眼>の効果だよ♪」
「まぁ、なにが<強奪>できるのかは完全な運だし、
いくつ<強奪>できるのかも運」
「くろむはレベルアップ以外にもこうやって強くなれるんだよ♪」
くろむ「やっぱチートな<技能>だなぁ……」
「でもあるものは使わなきゃ損だな!」
ナビ 「……」
「順応性がおかしいよ、ほんと……」
くろむ「ナビの反応はほっとくとして…………」
「ちょっと思いついたこと試してみるか」
くろむは、魔術名を発声せずに<ウォーターボール>の生成を始めた。
生成された水球内に凍らせるイメージを注ぎ込む。
水球は徐々に氷始め、氷球となっていた。
くろむ「おっ!」
氷球に対し、形状を変化させるイメージを埋め込む……
長く薄く引き伸ばすイメージで……
刀をイメージして……
くろむ「アイスブレード!!」
氷球は徐々に形状を変形させていった。
くろむ「できるもんだね~!」
「無事、氷刀の完成!」
ナビ 「<魔術理解>による現象の改変だねぇ♪」
「まさかこの短時間で上位属性<氷>を
扱えるようになるとはねぇ♪」
アイスブレードの成功後、再び森の探索を開始。
くろむ「お! 洞くつ発見♪」
森の中にぽっかりと開けたその空間には、小高い丘にできた洞くつが存在していた。
くろむ「うし、しばらくここをベースとして生活してみるか」
ナビ 「見た目によらず生活力あるのね……」
くろむ「サバイバル生活とかロマンあるじゃん?」
「せっかくの異世界だし、少しサバイバル生活してみるよ」
「まずはあの洞くつの探索だな!」
くろむは、完全にピクニック気分で洞くつ探索を開始した。
くろむ「……」
「5メートル程度の直線だけじゃね~か!!!!」
「…… 寝床に使うには十分だよね」
とりあえずの寝床は確保できたので、食料探すべく森を探索し始めた。
…… そして小一時間が経過した。
くろむ「魔術使えるって便利だね!」
血抜きを施し、<水>魔術で洗浄したうさぎを
2匹担いで、ベースとした洞くつ前に戻ってきたのである。
くろむ「<氷刀>で捌いて~♪」
「<火>魔術で作ったたき火でじっくりと~♪」
「はい! うさぎの丸焼きできあがり♪」
鼻歌混じりで料理?し、この世界にきて初の食事を始めた。
くろむ「ぅんん~~~……」
「やっぱ調味料なしじゃ味気ないな……」
「でもまぁ…… そのうち慣れたら大丈夫でしょ!」
ナビ 「相変わらず気楽というか…………」
くろむ「深く悩んでも仕方ないし!」
「今日はもう寝るよ!」
ナビ 「……」
そういって洞くつ内にはいったくろむは、そのまま眠りについた。
宣言通りにサバイバル生活を楽しむくろむ。
気づけばその生活も2週間ほど続けており、
森の探索もかなり進んでいた。
その結果、この森はかなり棲み分けが行われていることがわかった。
洞くつの近く(森の入口付近)はうさぎや狼といった獣系がメイン。
もう少し奥まで進むと<ゴブリン>を中心とした亜人系が
集落を形成していた。
さらに奥地には<オーク>などの集落も小規模ながら存在していた。
くろむは、それらを発見し次第、すべて討伐していった。
ナビ 「くろむは容赦ないねぇ……」
くろむ「レベルアップや<強奪眼>の餌食になってもらわなきゃね♪」
この二週間で多種多様な森の住人たちを壊滅させた結果……
俺のステータスはこんな感じになっていた。
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名前 : くろむ
種族 : 人族
職業 : 魔術師、狩人
レベル : 28
HP : 625
MP : 4560
筋力 : 254
耐久 : 480
敏捷 : 752
魔力 : 3080
幸運 : 890
技能
・魔術理解(Lv4)
・魔術適性(Lv4)
・魔眼(Lv2)
・身体強化(Lv3)
・剣術(Lv2)
・槍術(Lv3)
加護
・空間神の加護
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魔眼
各種効力を持つ魔眼を使える
(レベルアップごとに1つづつ開眼する)
Lv2 :従属眼
(対象をこの眼で見ることにより、
その相手を従属させることができる)
(ただし、相手が従属に承認していることが条件)
(従属者は主に危害を加えることが不可能になり、
<命令>には絶対服従となる。)
空間神の加護
空間術を扱うことができる
(扱える空間術は本人のレベルなどにより変化)
【現在扱える空間術】
・ルーム
使用者が許可したもののみ出入り可能な空間を作り出せる。
空間の規模は術者の魔力に依存される。
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二週間でとんでもない成長である。
特に<MP>と<魔力>……
<MPバカ><魔力バカ>に一直線すぎる……
<身体強化><剣術><槍術>は森の住人を壊滅した際に
<強奪眼>により強奪したものである。
そして、新たに覚えた<従属眼><ルーム>をそろそろ試してみることにした。
くろむ「従属させるなら何がいいかなぁ……?」
最初、狼を従属させ、騎獣としようかとも考えたのだが……
くろむ「…… さすがに乗るにしては、あいつって小さすぎるよな?」
ナビ 「くろむがあれに乗ったら……」
「虐待しているようにしか見えないかも……」
くろむ「デスヨネェ……」
「食材回収の手伝いでもさせる目的で
<ゴブリン>でも従属させるかなぁ」
「でもいずれ町にも行く予定だしなぁ……
その時邪魔になる気が……」
ナビ 「新しく覚えた空間術<ルーム>で専用の部屋を作って
そこに住ませれば解決では?」
くろむ「…… !!!!!!」
「ナビ・・・・
お前頭よかったんだな……」
ナビ 「し、しつれいな!!!!!」
くろむ「あ、ごめん……」
「ナビって軽くてちょっと頭の弱い子ってイメージだったわ……」
ナビ 「………………」
くろむ「で、でも!」
「ナビのおかげで<ゴブリン>の住ませる場所も解決だし!」
「き、きのう見つけた小規模の<ゴブリン>の集落にでもいこ!」
「うん! いこう!!」
ナビ 「…… ソウデスネ」
かなりご機嫌ナナメになってしまったナビを流しつつ……
小規模な<ゴブリン>の集落を目指すことにした。
くろむ「あった、あった♪」
小規模な<ゴブリン>の集落が視界に入るところまで到着。
視認できる<ゴブリン>の数は5匹である。
くろむ「<従属眼>で<ゴブリン>を見ながら
「俺に従属しろ!」と念じればOKだったよな?」
ナビ 「ソウデスヨ」
「ただ、素直に承認はしないと思うので、
殺さない程度に弱らせる必要はあります。」
くろむ「…… なんかまだ機嫌わるそうね…………?」
ナビ 「そんなことありませんよ」
くろむ「…………」
ナビ 「……………………」
くろむ「ま、まぁ!」
「<従属眼>で睨みつけてから
ぶん殴ればOKってことだね!!!」
ナビ 「……」
「…… クスクスクス」
「怒ってることがバカらしくなる人だよね、くろむってさ」
「かなり適当な言い方だったけど、その方法で概ねあってるよ!」
くろむ「よし、じゃあいってくる!」
くろむは木陰より集落にむかって飛び出す。
<ゴブリン>たちは状況の把握が追いつかず、あっけにとられていた。
呆然としている<ゴブリン>に対し、
くろむは<従属眼>で睨みつけ、次の瞬間にぶん殴った。
それ見て怒り狂った<ゴブリン>たちであったが、
くろむは、すべてを<従属眼>で睨みつけた上で、殴り飛ばした。
力の差を痛感した<ゴブリン>たちは、
倒れながらも<従属>を受けいれていた。
受けいれた瞬間、<ゴブリン>の右腕の甲に<氷の結晶>のような
<紋>が浮かび上がった。
ナビ 「<従属>成功おめでと♪」
「その<紋>は従属の証となるものだよ~」
「主従間では<念話>と言われる会話が可能になるよ♪」
「この念話はどれだけ離れていてもできるらしいわよ」
くろむ「そうなのか!」
「じゃあ、さっそく……」
くろむは<ゴブリン>たちに念話を試してみた。
くろむ「聞こえるか?」
ゴブリン「ん!? なんか聞こえるぞ……?」
「ひょっとして主様の声!??」
くろむ「そうだ、聞こえてるようでよかった」
「いまから命令を伝えるけど、お前がこの群れのリーダーか?」
ゴブリン「はい、そうです。」
くろむ「全員に命令するのは、めんどうだからお前に命令する」
「残りの4匹の管理はお前に任せる。」
「命令はとりあえず一つ。」
「俺の食糧になりそうなものを洞くつまで集めてこい。」
ゴブリン「了解しました、主様。」
くろむ「名前なしだと個体識別もしにくいし、めんどうだなぁ……」
「よし! お前はいまから<ゴブ太>な!」
くろむがそういうとゴブリン(ゴブ太)は光につつまれた……
なんかMPが吸われた感覚がした……
光が徐々におさまり……
ゴブ太「!!!!」
「まさか<従属>早々にお名前をいただけるなんて……」
「ありがとうございます! 一生尽くします!!!」
くろむ「????」
ナビ 「くろむ……」
「魔物に名前を付けるってことの意味わかってないよね……?」
くろむ「ん? なんか特別なことなのか!??」
ナビ 「名前を付けることにより魔物は<ネームド>持ちと呼ばれるものになり、
通常種より強力な個体に変わるの」
「だから、魔物にとって名づけは特別な意味を持つのよ……」
くろむ「そうなのか……」
ナビ 「しかし…… 普通は名づけって失敗するもんなのよ…………」
「<上位種>から<下位種>への場合でも数割しか成功しないのよ」
「よほど相性がよかったってことになるのかしらね……」
「あーあと!今後も名づけることがあるのならの注意だけど……」
「<名づけ>を行う際、
相手の魔物のランクに応じたMPを魔物に吸収されるわ」
「<ネームド>はそのMP分強化されるって感じね」
「高ランクの魔物ほど、
ガッツリと奪われるらしいから気をつけてね!♪」
くろむ「覚えとくよ……」
そんな<名づけ>によるトラブル?もありながらも、無事<従属>は成功した。
後日、<ネームド>の主となったものには
<ネームド>のステータスや技能の共有が発生し、
主はステータスアップや新しい技能を取得するらしいと、
ナビから説明があった。
くろむ「なんか疲れたから今日はもう帰って寝る」
ゴブリン5匹を引き連れて洞くつまで帰ったくろむは
<ルーム>により生成した部屋に<ゴブ太>たちを住ませることにした。
この時くろむは、自分もルーム内の部屋に住めば快適なのでは?
という疑問を抱えることになった。