属性魔法
「イーちゃん…」
「シーナ様。下がっていてください」
シーナは、イリアの言う通りにした。震える体をなんとか動かし、その場から離れて遠くからイリアを見る。
それを確認したイリアは、不死鳥へと目をやる。
と、不死鳥は『魔力状態』を発動し、こちらへ急接近してきた。それと同時に、イリアも不死鳥へと向かっていく。
「【黒・氷の剣】」
イリアは魔法で創った黒氷の剣を、不死鳥は燃え盛るその鋭い爪で、互いに攻撃を仕掛ける。
互いの攻撃が重なり、激突する。それにより、とてつもない衝撃波が辺りを包む。その威力は、シーナですらたじろぐ程だった。
数秒競り合い、イリアは跳躍、不死鳥は大きく羽ばたいて後退する。
一瞬の沈黙が訪れ、それを破ったのは不死鳥だった。先程同様、口から豪炎を吐いた。
だが、イリアの冷静さが覆る事は無かった。剣を持たない左手をその炎に翳し、
「【黒・氷の波動】」
それを放った。その攻撃は真っ直ぐに不死鳥へと向かっていく。そして、その氷の波動は豪炎の中心を吹き飛ばしながら突き進み、そのまま不死鳥の頭部を吹き飛ばした。
だが、それでも不死鳥羽ばたきが止まる事は無かった。そこから少しだけ移動し、黒く凍ってしまった首の付け根を、他の体から切り離した。
そして不死鳥の頭部は炎の様に再生し、まるで何も無かったかの様に羽ばたき続けた。
その様子を見たイリアは、今度は自分から攻めた。不死鳥に向かって跳躍し、剣を振るう。
それは不死鳥の爪によって塞がれてしまうが、そもそもイリアの攻撃はこれが本命ではなかった。
「【黒・氷の矢】」
そう。イリアの本命はこちらの攻撃だった。黒い氷で創った矢。これを、不死鳥の核に向かって放つ。
超スピードで飛んで行くその矢は不死鳥の核を貫いたが、貫通し切る事が出来ず、核を突き刺したまま止まった。
その攻撃に対応仕切れなかった不死鳥は、その事実に一瞬力が弱まった。それを見逃すイリアではない。
そのまま剣を振り切り、不死鳥の爪を斬り落とした。
更に追撃を加えようとしたが、眼前で豪炎を放たれたので、それ以上の追撃は不可能になり、後方へ移動する。
これまでの戦闘で分かった事がある。
1つはその炎の火力だ。リュークと同等である事は間違いない。黒氷は、『接触したものを凍りつくすまで溶けない氷』だ。不死鳥の魔法で溶ける事は無いが、凍しつくす事も出来ないという事だ。
現に、黒氷で奴の核を貫いたが、倒れる気配は無い。これは、私の黒氷が奴の身体を凍らせようとするのを、奴の火力で押さえ込んでいるという事だろう。
2つは、強いという事。奴の全力は分からないが、少なくとも私達『四天王』クラスの実力を持っているだろう。
(これがSSSS級か…)
そして、シーナも似た様なことを考えていた。以前戦闘した時は、コウヤが倒してしまうのをボーッと見ていただけだったが、今回は勝つ為に情報を分析していた。
まず前提として、今目の前にいる不死鳥は以前会った不死鳥よりも強い、という事だ。と同時に、不死鳥が2体いる事に驚いていた。
それにしても…と思う。属性で劣る氷が、良く火に対抗出来るなと思っていた。
属性魔法には種類がある。そして、そこには優劣の関係がある。火は氷に強く、氷は土に強く、土は雷に強く、雷は風に強く、風は火に強い。
これに当てはめれば、氷の属性魔法を使うイリアは火の属性魔法を使う不死鳥に不利だ、という事になる。だが、実際にはイリアが押している。
これは、属性魔法が覚醒しているからだと考えられる。中でも、イリアの覚醒の色は不死鳥に対して有効なのだろう。
属性魔法の覚醒は5つの色に分かれる。覚醒した属性魔法はその色に変化し、その色特有の効果が追加される。
黒の覚醒は、『対象に一定の効果を与えるまで消滅しない』という効果が追加される。これはどの属性でも同じである。
そして、シーナは思う。これなら勝てると。イリアが勝ってくれると。
だが、それと同時に頭によぎった。
――それは魔王として正しいのか―――
属性魔法の優劣
氷→土→雷→風→火→氷




