勝機
ここまで戦闘して分かった事は主に2つ。
1つは、戦闘能力が極めて高いと云う事。これは元々予想していた事ではある。1体1体の戦闘能力が高いのもあるが、それより危惧すべきは奴らのコンビネーションだ。
勿論、それぞれの実力もかなり高い。1体だけでも、騎士団総出でやっても殺す事は出来ないだろう。だが、そこにコンビネーションが加わる事によって、更に厄介になる。
同時攻撃や、囮に陽動。合成魔法も使ってくる可能性がある。一刻も早く1体でも倒さなければ、かなりヤバい。
単純に4体を相手にするのとは訳が違う。熟練の冒険者パーティーでも、ここまでのコンビネーションは出来ないだろう。
だが、それ以上に危惧すべきなのが2つ目。奴らの魔法は、俺の『魔力破壊』の効果を受けていない。
『白虎』の魔法で『破壊の盾に』が破壊されたのもそのためだろう。
つまり、奴ら相手に『魔力破壊』を絶対の能力とは思ってはいけない、と云う事だ。『魔力破壊』では、奴らの魔法を破壊する事は出来ない。
だが、全く通用しないと云う訳でも無い。事実、『青龍』の魔法は『破壊の盾』で防ぐ事が出来た。
つまり『魔力破壊』の、威力の大小に関係なく魔力を破壊出来る、と云う力は発揮出来ないが、それ以外の事は通用すると云う事だ。
俺の『魔力破壊』が無効化される、と云う訳では無い。要は、威力や強度の問題なのだ。
『青龍』の魔法の威力よりも、『破壊の盾』の強度の方が上だったから防げた。逆に、『破壊の盾に』の強度よりも、『白虎』の魔法の方が上だったから防げなかった。
それだけの事だ。であれば、まだ勝機は残っている。勝機が残っているならば、いや、残っていなくとも、俺に敗北は無い。
負けは無い。負けてはならない。俺はもう2度と、約束を違わない。
「…絶対に」
ーーそう思うなら、変わった方が良いんじゃないか?ーー
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俺はまた、この深層心理の世界に来ていた。
奴が望めば、俺は強制的にこちらの世界に連れて来られる。本当に鬱陶しい。
「前にも言ったが、約束を守りたいんなら俺に交代しろよ」
そしてもう1人の俺は、いつもの通りにふざけた感じで話しかけてくる。
「何度同じ事を言わせる気だ?俺がやらなければ何の意味も…」
「けど、今回は違ェだろ?」
「っ!」
「今のお前じゃ、奴らに勝てるかは五分五分。対して俺なら100パー勝てる。負けたら意味ねェんだろ?なら俺と代われ。確実に勝てる」
確実に痛いところを突いてくる。だが、ここで譲るわけにはいかない。そうすれば、約束を違う事になる。
それだけは避けなければならない。
「断る」
「…そうかよ。まぁ、精々殺されんなよ。俺も死にたかねェんだ」
奴がそう言うと、俺は現実世界に戻された。
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「…安心しろ。どれだけ勝率が低かろうとも、俺は負けない」
そう呟くと、俺は『青龍』に向かって駆けた。
「『破壊の斬撃』」
左下からそれを放つ。案の定、奴は尻尾に氷を纏わせ、それで俺の攻撃を受け止めようとする。
だが、そうする事は予想できた。だから、予め奴の背後に5つの『破壊の波動』を展開していた。
そして、奴が俺の攻撃を受け止めた瞬間にそれを放った。
完全に奴の死角。それに魔力感知も出来ず、奴の魔法では防ぐ事も出来ず、その短い手足では届かない位置に放った。
避けようとすれば、その隙に俺に斬られる。逆に避けなければ、5つの『破壊の波動』が命中し、力が弱まったところを俺に斬られる。
魔獣の様に核を持っている訳では無いだろうが、幾ら奴でも身体を両断されれば、少なくともダメージにはなるだろう。
(さぁ、どちらを選ぶ?)
『青龍』は、5つの『破壊の波動』を避けなかった。結果全て命中し、『青龍』は奇声を上げた。
「オオオオォォォ!!!」
そして、力が弱まったその瞬間を見逃さず、尻尾ごと両断しようとする。
だが、そこに『朱雀』がその超スピードで飛び込んで来た。
「チッ」
コウヤは回避を選択し、『青龍』から離れる。『朱雀』はコウヤと『青龍』の間を通って行った。
やはりあのスピードでは、急な方向転換も停止も出来ない様だ。
だが、今度は『白虎』向かってきた。その爪に風を纏わせている。
恐らく、俺の『破壊の斬撃』と似た様な技だろう。今度はただ纏わせているだけだ。
当然、何もしない訳じゃない。こちらも『破壊の斬撃』で受け止める。
だが、やはり『白虎』の爪を斬り裂く事は出来ない様だ。だから俺は、『白虎』が今の攻撃をしている右腕の関節付近で、威力を抑えた『破壊の爆散』を発動した。
これにより、『白虎』の攻撃が軽くなった。それを見逃さず、『白虎』の右腕を打ち上げ、顔面に蹴りを入れる。
『白虎』はコウヤの蹴りで飛ばされたが、当然『朱雀』が強襲してくる。それを見越していたコウヤは、『青龍』の方に向かう。
だが、コウヤのスピードは『朱雀』より遅い。このままでは、コウヤは『朱雀』に攻撃を受けてしまう。
「【空間直結輪】」
コウヤは進行方向に『空間直結輪』を発動。『青龍』の頭上に出口を創り、その輪を潜る。
「『破壊の蹴り』」
『魔力|破壊《ディストラクション』を纏わせた右足で、『青龍』の頭を地面に向かって蹴り飛ばす。
当然、それで追撃を抑えるほどコウヤは甘く無い。『青龍』に向かって、全速力で向かう。
そしてある程度近づくと、『魔滅』を手放して両手の拳を開き、『青龍』へ向かって手をかざす。
「『破壊の全・波動』」
まだまだ、戦闘は続きます




