不利
「くっ…」
この次元に来てからで、ここまで重い攻撃は無かった。流石は『四獣』といったところか。
両者の攻撃は同等のもので、その衝撃で両者共弾かれる。数メートル弾かれた両者だが直ぐに静止し、体制を立て直す。
だが、コウヤは1人で全ての『四獣』を同時に相手にしなければならない。彼等の実力は同等。単純に考えて、コウヤは今かなり不利な状況と言える。
「キャャャァァァァ!!!!!」
甲高い咆哮と共に、『白虎』が2度目の攻撃を仕掛けてくる。と、それに合わせて『青龍』が数十もの氷のかけらを自らの前方に創成し、それをコウヤに向かって放つ。
「っ!」
コウヤは、少し迷った。前方から来ている『白虎』の攻撃は自分と同等。そして『青龍』の放った氷属性魔法は、それまでに見た全ての魔法の中で最も速く飛んで来た。
コウヤはそのまま『白虎』の攻撃を『破壊の斬撃』で受け止め、『青龍』の魔法は『破壊の盾』で防いだ。
そうして、コウヤと『白虎』は再び衝撃で両者共弾かれる。
と、今度はいつのまにか上空に移動していた『朱雀』が、体に纏っている炎を燃え上がらせてコウヤ目掛けて急降下して来る。
「なっ!?」
そのスピードは、コウヤや『白虎』を超えたものだった。コウヤはそのスピードに対応しきれず、ただ『魔滅』で『朱雀』の嘴による攻撃を受けることしか出来なかった。
「くっ…」
その攻撃でダメージは受けなかったものの、その反動で地面に急降下していく。空中で勢いを殺すのは無理だと判断し、受け身を取ろうとコウヤが体制を変えようとした時だった。
「…!」
いつのまにか大地に足をつけていた『玄武』が、その立派な尻尾を大地に突き刺した。
すると、『玄武』の魔法が発動し、急降下してくるコウヤを包み込む様にして、大地がまるで生き物の様に形を流動的に変化させた。
「くそっ!」
コウヤはダメージ覚悟で、自分の近くに『破壊の爆散』を発動し、それによって急降下していた身体を直角に吹き飛ばした。
当然、前方には『玄武』が操る大地が迫っている。
「『三連・破壊の波動』」
コウヤは『破壊の波動』を3発同時に打ち、迫って来る大地を吹き飛ばす。
「良し…!」
なんとかコウヤはそこから脱出に成功し、その勢いのまま『白虎』の方へと向かう。だが、行手に『青龍』が現れ、氷で纏った尻尾でコウヤに攻撃する。
「…!」
コウヤは『魔滅』で受けきるが、背後に回っていた『白虎』が魔法を発動した。それは、爪に纏った風を振り下ろすことで、その纏っていた風を対象にぶつけると云うものだった。
その風は、風による斬撃が無数に集まって出来たものだった。正直、『青龍』の攻撃を受け止めるのに精一杯で、その攻撃に直接対処する事は出来そうにない。
やむなく『破壊の盾』で背後を覆う。
これで防げると思っていた。『魔力破壊』は全ての魔力を破壊する。そこに例外は無いと、少なくとも『四獣』相手にはそう思っていた。
だが、そうはならなかった。『白虎』の放った魔法は『破壊の盾』を粉々に吹き飛ばし、コウヤに迫った。
「なんだと!?」
コウヤは咄嗟に身体を曲げて、それを避けようとする。だが当然避けきれず、左腕が吹き飛ばされた。更に、腕が1本なくなった事で力が弱まり、『青龍』の尻尾による斬撃を胸に受けてしまった。
「くっ…」
数メートル退き、体勢を立て直す。捥がれた左腕と切り裂かれた胸は、『自動再生』で一瞬で治したが、状況が不利である事に変わりはない。
「ここまでとはな…」
そう呟かずにはいられなかった。
そして、それを眺める裕翔は呟く。
「流石『四獣』、コウヤ相手にここまで……さあコウヤ、見せてくれ。この逆境から『四獣』全員を皆殺しにする…その力を…」




