地震
コウヤが超迷宮の柱を破壊する少し前。
シーナは『大国会談』において、『神』や『神のゲーム』の事など、自分が知り得る情報を全て開示した。コウヤが『死神』である、という事を除いて。
「「「「…」」」」
その場に居た『大国』のトップ達が沈黙した。そして、その状況は暫く続いた。彼等の側に居る護衛達も、『大国会談』のルールに関係無く、言葉が出なかった。
そんな沈黙の中、最初に口を開いたのは『慈愛の皇女』だった。
「…私も、皆さんに話しておく事があります」
沈黙を破ったその言葉は、また新たな沈黙を生んだ。
『慈愛の皇女』は立ち上がり、高らかに宣言した。
「私達スレイル帝国と、彼女の国ドルス魔国とは今、協力関係にあります」
「…!」
意外にもその言葉に驚いたのは、たった3人だけだった。
ソフィアは再び席に座り、落ち着いて話し始めた。
「もうご存知かもしれませんが、私はクーデターを起こしました。父親の独裁政治を終わらせ、民を救う為に」
「…それと、ドルス魔国との協力関係には何の関係があるんだ?」
意外にも、ヘイズは余り驚かなかった。何故なら、この『大国会談』に皇女であるソフィアが現れた時点で、ヘイズは予感していたからだ。帝国の噂は聞いていたし、その可能性がある事も予想していた。
だが、ドルス魔国との協力関係というのは、全く予想できなかった。だからこそ、疑念の色を加えて質問した。
「…私の力だけでは、クーデターの成功などあり得ませんでした。そんな時『死神』と出会い、彼にドルス魔国との橋渡しになって貰い、彼等の力を借りる事で、クーデターを成功させる事が出来ました。全ては彼等のお陰です」
「『死神』が…?」
この発言には、騎士団団長ヘルトですら驚かされた。『死神』と戦ったヘルトは、『死神』への考えを改める必要があるのでは?という考えが頭をよぎった。
そして王国国王ヘイズには、ある可能性が頭をよぎった。
「私がこの『大国会談』に来たのは、この事の報告と、ドルス魔国…魔人族の地位向上の為です」
「えっ!?」
1番驚いたのはシーナだった。思わず声まで出してしまう程に。
「これはまだドルス魔国の方々にも言っていない事ですが、私は彼等を助けたいと考えています」
また、場が沈黙に包まれた。
「…確かに彼等は戦争を引き起こし、それによって多くの人々が犠牲に遭いました。ですが、今話された魔王殿の話が本当なら、彼等よりも、彼等の言う『神』とやらの方が、よっぽど罪深いと私は考えます。
それを抜きにしても、今の彼等には人に対しての悪意は無いように思えます。寧ろ私を、私達を助けてくれた彼等は、信用出来ると思います」
再びソフィアは立ち上がり、宣言した。
「言わせていただきます!彼等と!魔人族と!全ての『大国』とが協力し!『神』に対抗するための勢力を作らなければ!この世界は終焉を迎えてしまいます!だから!」
その『慈愛の皇女』の演説に、その場に居た誰もが聞き入っていた。
『慈愛の皇女』は涙を流し、机に頭を擦り付ける程に頭を下げた。
「お願いします!彼等を許して!協力して下さい!お願いします!」
その言葉は、とても演技に見えるものでは無かった。
その言葉は、彼女の本心から出た言葉だった。
「私は…賛成します」
始めて口を開いた『聖女』マデリン・プロマーは、酷く怯えながら、答えた。もっとも、その心境を悟らせる事は無いが。
「…何故だ?」
「彼女の言う通りだと思うからです。それ以外に必要な理由は無いと思います」
ヘイズの問いに、マデリンは強い口調で答えた。それ程に、コウヤが恐ろしかったからだ。
「みんな…いや、皆さん!」
思わず出てしまった言葉に、シーナは慌てて訂正した。
「…ヘイズ国王殿、貴方はどう思われますか?」
威圧的な口調で、ソフィアはヘイズに聞いた。
ヘイズは目を瞑り、暫く考えた。手に汗を握り、焦りに焦った。
確かに、あの『慈愛の皇女』が嘘を吐くとは思えない。あの話が本当だとすれば、彼等と牽制し遭う事は無駄だ。それよりも彼等や、他の『大国』や国々と協力して、彼等魔人族を貶めた『神』とやらと戦う必要がある。
考えに考え抜いた結果、ヘイズは決断した。
「…私は、彼等魔人族と…」
その瞬間、大地が揺れた。
「っ!?何だっ!?」
建物に皹が入り、倒壊し始めた。地響きが鳴り響き、地面に皹が入り、建物が、人が倒れ、あらゆる物が崩壊していく。
そして、割れた地面から、地下から、迷宮から、超迷宮から、無数の影が這い出てきた。
C、B、A、S、SS、SSS、SSSS。今迄に発見されたのも、発見された事の無いものも、例外無くその全てが這い出て来た。
この次元で始めて地震が起こり、全ての魔獣が地上に現れた瞬間だった。
これから、怒涛の展開が続きます




