全・魔力破壊
「発言、良いでしょうか?」
最初に手を挙げたのは、帝国皇女ソフィアだ。
「どうぞ」
ヘルトが了承し、ソフィアが話し始める。
「ヘイズ国王に、質問があります」
その言葉にヘイズが反応し、首を少し傾ける。
「私に?」
「はい。2つ程、よろしいでしょうか?」
「…良いだろう。それで、何が聞きたいのかな?」
ヘイズは予感していたのだ。必ず2つの質問をされると。この会談の開催を提案した少年が言っていた。
まず、1つ目の質問は、
「何故、魔人族を入れての『大国会談』の開催を提案したのですか?」
当たりだ。それを確認すると、既に用意していた返答を出す。
「…『真の平和』の為だ。今の世界は、そうなっているとは言い難い。『真の平和』の為には、他の国と比べ圧倒的な国力を持つ『大国』全てが、手を取り合う必要がある。ドルス魔国を含めてね。そう考えた」
だが、事実は少し違う。この会談の開催は、自身が発案したものでは無いからだ。
――――――――――――――――――――――――
その理由は、コウヤ・ハラグチが我が国を発つ日。その報告の為に、彼が私に会いに来た時まで遡る。
「レースティリ王、貴方に一つ、提案があります」
「…提案?」
「はい。『大国会談』を開催してはどうかと、それも、全ての『大国』で」
「…つまりドルス魔国も入れる、という事か?」
正直、困惑しかなかった。ドルス魔国は現在『魔王』が復活し、『四天王』が再び集結。更には『死神』という新たな実力者を得た。個々の実力ならば、100年前と同等のものになっている。
そんな危険な国を入れての『大国会談』など、正気では無い。だが、それを言ったのは実力者のコウヤ・ハラグチ。無策でこんな事をいつ程にバカでは無いと、この数日で理解している。
「はい。現在、ドルス魔国は確かに危険な国です。しかし、彼らは何もしていません。こちらが勝手にそう思っているだけなのです」
「…だから、その真意を知る為に『大国会談』を開くべきだと?」
「はい」
確かに、彼らは何もしていない。しかし、やはり危険である事に変わりはない。
「危険過ぎる。『大国会談』では、各国の主権者が集まる。そこで、全員が殺される様な事があれば…」
「そんな事はあり得ない」
今までに聞いた事が無い程に、芯の通った声だった。その声に、大いに驚いた。
「何故、そう言い切れる?」
「俺が『死神』だからだ」
――――――――――――――――――――――――
そして彼に説得され、この会談を開いた。だが、この事はまだ話せない。ドルス魔国との同盟、それが確定するまでは話す事は出来ない。
一方、シーナはヘイズの発言に喜んでいた。
強張っていたシーナの表情が少し緩み、緊張がほぐれた。
「分かりました。有難うございます。2つ目の質問、よろしいでしょうか?」
「ああ」
そして2つ目は、
「今、貴方の後ろに立っている少年。『勇者』について説明を求めます」
これも当たりだ。全くあの少年は、どこまで読んでいるのか。
そしてソフィアが言った通り、ヘイズの護衛は『勇者』斎藤 康太だ。如何にも勇者っぽい鎧を纏っている。
「彼の名は斎藤 康太。『栄光』オリビア・ユーティリティが、その固有魔法で我が城に召喚した少年だ。風 火 土 雷 氷、全ての属性魔法を操り、『光』の固有魔法を持っている」
「「「「…!」」」」
この事実には、会議に参加している4人全員が少なからず驚いた。
「質問は以上か?ソフィア殿」
「…はい」
「…そうか。なら、今度は私が質問させて貰う。魔王殿、貴方に」
「わ、私っ!?」
シーナはその言葉に完全に意表を突かれたようで、かなりテンパっている。
「ああ。この会談を開いたのも、貴方と話をする為と言っても過言では無い」
「は、はい…」
シーナのその態度に、ヘイズも困惑していた。この少女らしい少女が、今この世界そのものを恐怖に陥れている魔王なのか?そんな疑問が、ヘイズの頭の中で回っていた。
「貴方はこの世界を、人の事をどう考えているのかを教えて欲しい」
「私がこの世界と、人の事をどう考えているかを知りたいんですか?」
心底不思議そうにヘイズに聞き返すシーナ。
「ああ。頼む」
「…分かりました!」
シーナは目を閉じて、自分の考えを再確認する。今までにあった事を、コウヤと一緒にいて感じた事を緻密に思い出していった。
目を開き、その全てを話す。自分の父が、そして自分が今まで生きてきて感じた事を、ありのままを伝える。
「…私は、父が死んでからずっと、自らの実力を上げるために、迷宮の更に下にある超迷宮に100年程篭っていました。そして、超迷宮でコウヤ君、いや、コウヤ・ハラグチと出会い、魔人族の地位向上のために地上に出てきました」
その場に居た誰もが、シーナの話に衝撃を受けていた。
「ですが、私の目的はそれだけではありません」
「…それはどういう?」
それから、シーナは語り始めた。『神』や、『神のゲーム』の事を。そして、自分も世界の平和を望んでいる事と、人との共存を望んでいる事も話した。
――――――――――――――――――――――――
「…」
コウヤは、その大きい柱に手をかざした。そして、掌に小さく球状の『魔力破壊』を展開した。
(…無理だ)
柱の破壊は無理だと悟った。『魔力破壊』では如何なる技を使っても、この柱の破壊は無理だ。
柱の強度は超迷宮の壁や地面と同等の物だ。そして、何よりデカすぎる。『魔力破壊』での破壊は不可能だ。
だが、
「…丁度いい。実験台にしてやる」
方法はある。
『魔力破壊』は、そのコントロール力によって威力や精密性が上がる。そして、考えた。あの柱を見つけた時から、どうすればあの柱を破壊できるのかをずっと考えていた。
一度に使える『魔力破壊』は、今の俺には限られている。今までの俺は、ただでさえ限界がある『魔力破壊』の力を、更に分散させてきた。
ならば、一点に集中させれば良い。一度に使える『魔力破壊』の全てを、1つの技として発動する。
「『全・魔力破壊』」
掌に展開していた『魔力破壊』が、どんどん膨張していく。
片腕しか使っていなかったが、もう片方の腕も使い、技を発動する。
「『破壊の全・波動』」
コウヤの背丈の倍ほどの直径となった球体は、柱に向かって超スピードで放たれた。その威力は圧倒的で、柱を貫通し、中心部分のほぼ全てを抉り取り、柱は天井と地面の二つに分断された。
直後、辺りがいきなり揺れ始めた。壁や天井、地面に夥しい数の皹ができ、超迷宮は今にも崩れそうになっている。
パラパラと天井が少しずつ剥がれて、埃のように宙を舞っている。
その様子を見て、コウヤは口角を釣り上げた。
「さぁ、舞台は整えてやったぞ。来るなら、仕掛けてこい、『神』!」




