開催
「…やっと、戻って来たぞ」
コウヤは、そう呟いた。
今コウヤが居るのは超迷宮。それも、1つの町程の広さを持っている、超迷宮にしては珍しい場所である。
だが、この場所を訪れた人間は、そんな事はどうでも良いと感じるだろう。なぜなら、この場所の中心には、超迷宮の地面から天井まで繋がっている、大きく太い柱があるからだ。
その柱は、まるで木の様な形をしている。根のような物が地面を這っており、下の方は半径50メートル程の太さがあるが、上にいけばいくほど細くなっている。また、枝の様な物が地面や天井に網の様にくっ付いている。
そして、その柱の中心は金色に光り輝いており、かなり離れたところにいるコウヤの目を細めさせる程だ。中心から離れていけばいくほど超迷宮の色に近くなっていき、天井と地面にくっ付いている箇所は同じ色になっている。
そして、コウヤがここに来るのは2度目である。1度目は、コウヤがレースティリ王国滞在中に城から抜け出し、超迷宮に入った時である。
とは言え偶然見つけたのではなく、予想していた事なのだが、それでも始めて来た時はかなり驚いた。一瞬、目を奪われる程だ。
そして、ここに再び来たのは観光などでは無い。必要な事だからだ。
もっとも、この場所の重要性を知る人間など、殆ど居ないだろうが。
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「皆様、全員席に着かれましたね?」
そう言ったのは、騎士団団長ヘルト・レスターだ。『大国会談』には、必ず騎士団団長が立ち会わなければならないと云うルールがある。
これは、それぞれの意見がぶつかり合う会談において、中立となる立場の者が必要である、と云う理由から作られたルールだ。
今、この『大国会談』の為に用意された会議室は、U字形に作られた机とその空いた部分に1人用の机が1つずつ。そして、会談の出席者の数の椅子が並べられている。
1人用の机に騎士団団長のヘルト・レスター。U字形の机には、右から順に、レースティリ王国国王ヘイズ・レイリ、スレイル帝国皇女ソフィア・アルナラ、ドルス魔国魔王シーナ・ロード、クレイム法国聖女マデリン・プロマーが座る。
彼らの後ろには、1人の護衛が付いている。なぜなら、『大国会談』には護衛は1人のみ、と云うルールがあるからだ。本来ならばもっと護衛をつけるところだが、このルールがあるので、皆様1人ずつ護衛を付けている。
ただ、護衛は会談には参加出来ず、口を挟む事も許されない。そう云うルールなのだ。因みに、シーナの護衛には『黒氷の魔人』イリア・サナサードが付いている。
「ヘイズ殿の呼びかけで、この会談は開かれた。そして、この会談を取り仕切られてもらう、騎士団団長の、ヘルト・レスターと申します。ではこれより、『大国会談』を始めさせて頂きます」
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正に『大国会談』が始まろうとしていたその時、白の領地を、遥か上空から眺めている者がいた。
黒髪の一部が青黒く変色しているその少年は、まるで空中に立っている様に見える。腕を組んで、そこを眺めている。
「『大国会談』か…まんまとコウヤの思い通りになっちゃったけど、大丈夫なの?」
自分の背後に空いた『穴』、そこから出て来た『天使』ソレイに向かって質問した。『穴』を消滅させたソレイは、口元に手を当てて答えた。
「そうね…だけど、心配無いと思うわ。確かに彼は異常よ。だけど、それは人間ならって云う話。私や貴方はともかく、あの方の前では無力よ」
「…そうだね。いくらコウヤでも、彼には敵わないかな。文字通り、次元が違う」
「分かっているのなら、態々こんな所に来る必要はないんじゃ無い?」
ソレイが当然の疑問を問うと、少年、朝比奈裕翔は馬鹿にするように笑ったから、答えた。
「彼は『四獣』を使うと言った。僕でも勝てなかった奴らに、コウヤがどう勝つのか、見てみたくてね」
成る程、とソレイも納得した。確かに、それは気になるところだ。
「それに、元々やらなきゃならない事があるし」
「やらなきゃならない事?」
ソレイが問うた瞬間、裕翔の背後に再び『穴』が開かれた。出て来たのは、白いローブを見に纏った者。ローブが大きく、顔もフードで見えず、体型も性別も分からない。
「…ああ。そう云う事…それなら私は戻るわ。そんなに暇じゃ無いしね」
ソレイは再び『穴』を開き、中に入って、この場所から姿を消した。
「…さぁ、僕らに見せてくれ…!君のショーを…!」




