信用
長かった6章も、今回で最終回です
「と、言うわけだ。分かったか?」
静かな部屋に、俺の声だけが響く。ここはドルス魔国、魔王城内の会議室。部屋に居るのは、この国の中心人物達が殆ど。
居るのは、現魔王たるシーナ、『四天王』リューク、イリア、ルドー、ライアの4人。そこに『幻影』テノムと、『神のゲーム』参加者の沙霧に、俺だけだ。
『慈愛の皇女』のスピーチが終わって、俺は直ぐこの国に戻った。クレイム法国程遠くは無いので、割と直ぐに着いた。
そして、俺は国に戻ると直ぐにこの話をする為、この会議室に居る人間達を集めた。直ぐにでも、話す必要があると考えたからだ。
話したのは、この数日間に俺が行った事についてだ。それと、ソフィアの計画について。
『魂喰い』でデストの魔力を取り込んだので、リュークにブチ切れられる可能性を考えていたが、それをする事は無さそうだ。
リューク、いや、この場にいる俺とイリア以外の全員が俯いていた。まぁ、無理もないだろう。
沙霧やシーナはソフィアを信じ切っていて、友達だと思っていた。
とは言え、リュークら『四天王』や『幻影』の場合は、彼女が裏切った事にショックを受けているのではない。ソフィアがそう云う人間だったと云う事を見抜けず、剰え掌の上で転がされていたのだ。事実俺が気づいていなければ、この国はソフィアの思惑通りになっていただろう。
慰めはしない。これは、こいつらの自業自得だ。人間を、嫌悪はしていないのかも知れない。だが、人間を受け入れる事と人間を信用する事は違う。
その意味を履き違えていた。人間を信用し過ぎてしまった。それらのせいで、国が危機に陥ったのだ。
その事実をきちんと理解し、改善する為には、慰めはしてはいけない。まぁ、俺は最初からそんな事をする気は無いが。
この国など、潰れたって構わない。ただ、シーナさえ生かしていれば、俺の目的は達成される。無駄に時間がかかる事になるが。
その点に関して、イリアは問題無かった。きちんとソフィアの嘘には気づいていた。ソフィアの計画を見抜く事は出来なかったが、嘘にはちゃんと気づいたし、それを俺に報告してきた。そして、見事に侵入者を一掃してみせた。
シーナもだ。こいつは馬鹿だが、直感力はある。ソフィアを信用し、友達だと思っていたようだが、その裏で違和感には気づいていた様だ。こいつはこれで良い。まぁ、変えようと思って簡単に変えられる様な奴じゃないしな。
だが、沙霧は駄目だ。こいつは、既に1度帝国に騙され、帝国の思惑通りに奴隷に堕とされている。
人間と云うのは、1度騙されると、警戒心が強くなる。だが、沙霧は違う。沙霧は大抵の事は出来る。俗に言う『天才』だ。だが、人を信用し過ぎる。それが、沙霧の最も大きな欠点だ。
人を信用する。それは大切な事だ。だが、し過ぎては駄目だ。人を信用すれば、相手も自分を信用し易くなる。だが、その相手に騙され易くもなる。
大抵の人間は、1度他人に騙されて、人を信用し過ぎない事と、人を疑わなければならない事を自覚する。
沙霧にはそれが無いのだ。それは長所でもあるが、短所でもある。
だが、流石におかしい。確かに、友達にちょっと揶揄われたぐらいなら気にしないかも知れないが、沙霧は1度奴隷に堕とされている。危機感と警戒心を持たない訳が無い。
それなのに、1度騙された相手すら信用する。流石におかしい。本当にそうならば、『異常』と言える。
少し、注意した方がいいかも知れない。
「…何も質問が無いのなら、俺は行くぞ」
事実、俺が話し終えてから既に数秒が経過している。質問があるのなら、もっと早く言うはずだ。
そのまま、俺は会議室のドアに手を掛け、部屋を出た。
それに、『大国会談』まであと3日。そうのんびりはしてられない。
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「あと3日か…」
そう呟いたのは、レースティリ王国国王であるヘイズ・レイリだ。王の玉座に座り、窓の外を眺めていた。
「はい。あと3日です」
答えたのは、『栄光』オリビア・ユーティリティだ。『大国会談』までは、ヘイズに付きっ切りで警護している。もしも会談前に何かあれば…。
だから、下手な警護の者よりも自分の方がマシな警護が出来る、と云う言い分で無理やり警護についている。
「会談が行われる白の領地は世界の中心地です。ここからはそれなりに時間がかかるので、そろそろ出発した方が良いと思います」
「そうだな。直ぐに手配を…」
「そう言われると思っていたので、既に用意させています」
流石に驚いたヘイズだが、既にこう云う事は何度かあったので、ハハハと笑って答えた。
「良く分かってるじゃないか」
そう言って、微笑んで見せた。
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『大国会談』の開催は、参加するそれぞれの者達が、それぞれの思いを持っていた。
世界を平和にしたい王国国王。
魔人族の地位向上と世界平和を望む魔王。
「あと…3日……」
その恐怖にただ震える聖女。
「あと3日か……!」
その心を創り変えられ、利用されるだけの皇女。
それを利用して『神』の打倒を模索する『異常者』と、
そして―
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「…さぁ、どう踊る…原口コウヤ…」
『神のゲーム』を掻き立てようとする『神』の存在があった。




