隷従の指輪
「そうする事で、お前は俺を騙していると思い込む。そして、全てが終わった後に俺を自室に来るように予め言っておき、俺が部屋に来たら『魅了』を使って俺を支配。
後は、俺にもドルス魔国を襲わせ、魔王と実力や位の高い者達に『魅了』をかければ、ドルス魔国の支配は完了。と、同時に国に邪魔な者共がいなくなってスレイル帝国も手中に。
そう云う作戦だったんだろ?」
問う形で、目の前に居る座り込んだ皇女に言葉をかける。少し前から俯いたと思ったら、一切口を挟んでこなくなった。
とにかく、最後まで説明を終わらせようと口を開く。
「俺はそれに乗っかった。邪魔な皇帝共を一掃するのに大義名分が立つしな。
だが、結末だけは変えさせて貰うことにした。お前はここで俺を操るつもりだったんだろうが、そうはならない。そもそも、俺の持つ『魔力破壊』という能力は、直接干渉魔法を全て無効化する力がある。
どの道、お前の計画が完遂されることは無かった」
事実、ソフィアの『魅力』にかかっている事を証明する首の痣は、既に消滅している。
「まず朝に、お前にクーデター成功を国民に宣言させ、同時にドルス魔国が協力した事にする。
お前がドルス魔国に差し向けた奴らの事だが、既に『黒氷の魔人』に情報を渡している。もう撃退されているだろう」
ここで、ソフィアが立ち上がった。ヨロヨロとしていて、今にも倒れそうだが、なんとか立ち上がっていた。
そして、振り絞るように声を出した。
「私が、お前の言う通りに動くとでも?
…舐めるのも大概にしろォ!どんな拷問を受けようが!どんな弱みを握られようが!私はお前の言う通りにはならないっ!!」
「…」
今までに無い程の、怒りを含んだ声だった。既に思考は停止しており、ただ感情を吐き出しているだけなのだろう。
俺は、無言でソフィアの腹に蹴りを入れ、再び壁に叩きつけた。
「ガハッ…」
手加減したので、死ぬことはないが、痛みは尋常なものではないだろう。
ソフィアが血を吐き出した時に、『魔力破壊』のナイフで左掌を壁に刺しとめた。
「ぐうううぅぅ……」
「残念だが、お前はずっと俺の掌の上で踊っていた。そしてこれからも踊り続ける」
「…………………コロス」
「ん?」
「殺す!殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!!!」
その痛みにか、それとも利用された事にかは分からないが、更に怒りが増したのが分かった。
涙を流しながら、ありったけの殺意をぶつけられた。その目は、最早『心優しい皇女様』の影も形も無い。
だが、流石に煩かったので、一発腹に拳を入れて黙らせた。
「ヴッ……」
「調子に乗るな。大体、お前は色んな人間達の夢や希望、命や愛情を奪ってきた筈だ。なら、自分が奪われても仕方がないだろ?
騙したなら、自分が誰に騙されても文句は言えない。
殺したなら、自分が誰に殺されても文句は言えない。
そして誰かを利用したのなら、自分が誰に利用されても文句は言えない。
そうだろ?」
「…黙れ。黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れダマレダマレダマレダマレダマレダマレダマレダマレダマレダマレダマレダマレダマレダマレェェェェ!!!」
「煩い、黙って聞け」
そう言うと、俺はポケットからあるものを取り出した。
それは、指輪だった。銀色で、中心には朱玉のガラスが埋め込まれている。
その指輪を、ソフィアの目の前に、見せつけるように持って行く。
「これは、ただの指輪じゃ無い。指輪の形状をした『魔力道具』だ。名は『隷従の指輪』。
この指輪の装着者は、装着させられた相手の命令を、装着者自身の意思として執行する。
更に、この指輪にはもう1つ力がある。それは、装着者の記憶改竄。つまり、装着者の記憶を自由に書き換えられるという事だ」
それを聞くと、漲っていたソフィアの殺意が一瞬で崩壊した。怒りに染まっていた表情も、みるみる内に青くなっていく。
恐らく、自分の運命を悟ったのだろう。恐怖で体が震えている。
因みに、この『隷従の指輪』はドルス魔国にあったものだ。余りに古い物で、どんな文献にも載っていなかった。
「…や、止めて…お願い…止めて…」
先程までの怒りが嘘のように怯え、泣き始めた。
「…な、なんでもするから…貴方の言う事…何でも聞くから…だから…」
「…お前、俺に何されても俺の言う通りにはならないんだろ?」
「う…嘘ですっ!…何でも言う事聞きますっ!…だから、お願いします!それは…それだけはっ!」
泣いて懇願されても俺の答えは変わらない。大体、こいつ自身答えを変えてこなかったのだから、俺が変える必要は無い。
「駄目だ。そんな簡単に意見が変わる奴を信用出来ない。それに今のお前より、記憶を弄った後のお前の方が扱いやすい。
それに、もう分かってるだろ?あの時俺の手を握った時から、こうなる事は決まっていた。
ゲームオーバー、そう言った筈だ。
じゃあな、ソフィア・アルナラ」
そう言って、俺はソフィアの左手を握り、指輪をはめる為、指の方へと移動させる。
「やっ…止めて!お願いしますっ!止めて下さいっ!何でもしますから!靴の裏も舐めますし!言われた事何でもしますから!!」
泣き叫びながら懇願してくるソフィアを無視しながら、左手の人差し指に指輪を触れさせる。
薬指にするのはヤバイと思ったので、人差し指にしておいた。
「お願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますオネガイシマスオネガイシマスオネガイシマスオネガイシマスオネガイシマスオネガイシマスオネガイシマスオネガイシマスオネガイシマスオネガイシマスオネガイシマスオネガイシマスオネガイシマスオネガイシマスオネガイシマスオネガイシマス!!」
正直煩いので、早く指に入れようと思った。この指輪は、指の第2関節まで入れないと効果が発揮されないのだ。第2関節なのは足の指でも出来るように、と云う事だと俺は思っている。
まぁ、不自然無い様に第3関節まで入れるが。
「止めて止めて止めて止めて止めて止めて止めて止めて止めて止めて止めて止めて止めて止めて止めて止めてヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテェェェェェェェェェェェェ!!!!!!!」
第3関節まで指輪が入った事を確認すると、俺は命令を下した。
「装着者に命ず。これから言う事全て、記憶から抹消せよ」
そして、ソフィア・アルナラの記憶改竄を行なった。
ソフィアの狂いぐらいに驚いた方がいるかもしれませんが、色々とご了承下さい




