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魔力ゼロの無敗者  作者: マンタS
第6章 奴隷落ちとクーデター
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魅了

 ずっと、演じ続けてきた。何故かと問われても、上手く答えられない。だけど、その方が都合が良いとは思う。



 それに、自分の周りにいる奴らは全員クズ共。そんな奴らに自分の本当の姿を見せる気はない。



 野心に駆られる父親に、何も考えていない兄。父親の命で命を奪われた哀れな母親に、父親の権力目当てに擦り寄る売女共。



 家族だけじゃない。地位にしがみ付く貴族達に、その日生きる事もままならない貧民達。哀れに奪われるだけの近隣諸国の連中。



 この世界は腐ってる。自分以外は全てが腐ってると思った。そう思いながら、ずっと生きてきた。



 周りには『優しい皇女様』のイメージをつけさせた。豚みたいに汚らしい目で見つめてくる貴族達にも常に笑顔を見せ、ゴミみたいな民衆達にも笑顔を振りまき続けた。



 結果、本当の私を知る者は存在しなくなった。全員、私の()()に騙されている。



 だが、こんな事を続けていても何の意味も無い事ぐらい分かっている。父親を真似る訳では無いが、この世界には『支配者』が必要だと思った。



 そしてその存在になる資格を持つのは、唯一腐っていない自分だけ。そう思った。



 それに気づいてからは早かった。各国の重鎮達と会う機会ぐらいは幾らでもある。その度に、吐き気を抑えながら『魅了』を使って自分の支配下に置いた。



 今ではこの世界の権力者達の半分は支配下に置くことに成功し、未だ誰にも気づかれていない。



 そして全てが順調に進んでいた頃、ある女の名が耳に入ってきた。



 雨露 沙霧。実力のある冒険者の様で、皇帝自らが依頼をしているとも聞いた。だが、皇帝はそもそも使い捨てにするつもりの様で、『三槍』とパーティーを組ませて逐一報告させていた。



 そして一定の成果を出させた後で、高値で奴隷商人に売り渡していた。国では人気があった様だが、居なくなった存在などこの帝国では直ぐに話題から消える。彼女の存在を口にする者は、彼女が国から消えた僅か3日後にいなくなった。



 それよりもその頃興味を持っていたのは、ドルス魔国が再興される事についてだった。クズの中のクズである魔人共の国だ。



 これは利用できるのでは無いか?と、思った。



 例えば、魔人共の王を『魅了』で支配し、魔人共を使って厄介な『大国』を襲わせる。その後で、帝国が魔人共を抑えた事にする。そして疲弊した国々は、唯一被害の無い帝国に屈服する他なくなる。あとは皇帝と皇子を殺せば、世界を支配する帝国の支配者となり、実質的な世界の支配者になれる。



 大まかだが、この策でいくことにした。問題は、魔人共の誰を最初に『魅了』するか?魔王を『魅了』するにしても、そこに近づくための駒が必要となる。



 そんな事を考えている矢先に、皇帝からの命令が下った。内容は、『コウヤ・ハラグチ』を調べろ、というものだった。



 だが、その調査中に思わぬ情報が転がり込んできた。コウヤが雨露 沙霧と共に行動している、というものだった。



 これだと思った。コウヤの実力はかなり高いと聞く。ならば、コウヤを『魅了』し、魔人共の誰かを捕らえさせ、そいつを『魅了』する。これが、魔王を『魅了』する為の第一歩だと考えた。



 そして、雨露 沙霧を見つけた。意外にもクレイム法国近郊にいるところを発見した。だが、普通に近づいても警戒されるだけ。彼女は帝国を恨んでいるはずなので、話も聞いてくれないだろう。



 だから、一芝居打つ事にした。部下達に自分を襲わせる振りをさせ、それを沙霧の前で行い、自分を態と助けさせた。


 

 そして、向こうから話を聞いてくる様に仕向け、得意な話術と演技で自分を信用させた。



 更にコウヤとの接触に成功し、()()()()()()()()()()と云う演技でコウヤに協力させた。



 ここで、嬉しい誤算があった。コウヤはドルス魔国と通じていたのだ。1つ手間が省けた。そして、ここで計画を少し変更した。



 コウヤには『魅了』をかけずに、皇帝城内の人間を全て殺させ、その後に『魅了』をかけてドルス魔国を襲わせる。



 彼は信頼されている様だし、良い奇襲になるだろう。また、コウヤに『皇帝城』を殲滅されている間に、私の軍を使って奇襲をかける。この軍は各国から集めたもので、実力のある者だけを選出している。



 突然の奇襲で、対応するのがやっとの魔人共に、信頼しきっていたコウヤに攻撃される。コウヤの実力の高さだけでなく、コウヤの裏切りによる動揺も狙っての策だ。



 これで、魔王に『魅了』をかけるのも簡単だ。帝国の支配も可能となるし、『大国会談』で『大国』の『聖女』やレースティリ王国国王を『魅了』すれば、世界は完全に支配できる。



 そして、コウヤは『皇帝城』に居る私と部下以外を皆殺しにした。そして、『魅了』にもかけた。



 計画完了は、目前に迫っていた。



 ――――――――――――――――――――



「大丈夫かな…?」



 心配そうに呟く幼いシーナ様を、元気付ける一言を伝える。



「大丈夫です!彼の実力は相当な者ですし、万が一にも彼に失敗なんて事はあり得ません」



 そう言って慰めるイリアも、心配ではある。彼に失敗は無いと分かっていても心配せずにはいられない。



(この感情は…なんなのだろう…)



 そう思いながら、吹雪しか見えない外を見ていると、突然、爆発音と共に城が揺れた。



「…これは…!…シーナ様は、ライアさんの元へ行ってください」



「イーちゃんは…どうするの?」



 悲しげな表情で問うてくるシーナ様。頭が回らないこともあるが、こう云うことに関しては恐ろしく頭が回る。



「…行ってきます」



 直ぐに城外に飛び出し、()()の前に出る。200人程の集団で、いずれも人間ランク銀相当の実力者。



「…()()()……()()()()()



 ――――――――――――――――――――



「お願ーい!」



 さて、今はこれからを考えておこう。帝国の支配者は自分になり、ドルス魔国は支配下におけるだろう。



『大国会談』で、レースティリの王と『聖女』を『魅了』して『大国』を操る。その後は小国。



 とにかく、問題は『大国会談』だ。ここでしくじれば、今までの努力は水の泡と化す。



 それにしても、レースティリの王には感謝しなければならない。世界の支配の目処が立ったのも、彼が開催を提案してくれた『大国会談』のお陰だ。



 などと考えていると、ソフィアは()()()に気づく。まだ、コウヤが立ち尽くしているままだったのだ。



 とっくに出て行ったと思っていたが、まだ一歩も進んでいない。



「何をしているの!速く行きなさいっ!!」



 思わず感情が表に出て、声に怒りが走る。



 言い終わった瞬間、背後で何かが倒れる音がした。首を動かして後ろを見てみると、部下の2人がうつ伏せに倒れているのだ。



「え?」



 一瞬我を忘れていると、突然腹に痛みが走った。それも、尋常じゃ無いレベルのものが。



 その衝撃で、ソフィアは壁に叩きつけられる。そして両掌、両足の甲、服の色々な部位を赤黒いナイフが貫き、ソフィアを壁に固定していた。



 そして、私は気づくことになる。



「残念だったな。ソフィア・アルナラ」



 自分の過ちを。

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