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魔力ゼロの無敗者  作者: マンタS
第6章 奴隷落ちとクーデター
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信念

 一切躊躇はしなかった。止める理由もなければ、助ける義理もなかったからだ。既に、何の罪もない人間を大量に殺して来ている。今更迷うことも無い。



 加えて、彼女の傷は深すぎる。生かす為には『自動再生(オートリブート)』を使うしかない。そんな事をする訳にはいかない。



 ただ、俺に助けを求めて来た少女は、奴隷としている頃にはずっと見つめて来ていた。俺を見て、何か感じるものがあったのかも知れない。



 その内容までは分からないし、知ろうとも思わなかったが、ブライト皇子を殺したのが『死神』だと云う情報を知っている時点で、こいつは殺す事を決めていた。



 そして、その他の奴隷達も例外では無い。元よりこいつらは、既に周りからは死んだと思われているはず。ここで死んだとしても、()()によって悲しむ人間はいない。



 元々ブライトに殺される運命だったのだ。例え俺がブライトを殺してしまったとしても、彼女達の運命は変わらないはずだ。



 そして彼女らも、このまま生きていても辛いだけだ。




 だからと言って殺人を正当化するつもりはないが、()()()()()()()と云う事は理解してくれるだろう。



 その思いで、俺は俺に手を伸ばして助けを求めて来た少女の心臓を『魔滅』で刺し貫いた。彼女には何の罪も無い。だから、意識を未だ残している彼女には、せめて()()()()()()()()()()()()()。そう思って、『暗殺の斬撃(アサシン・スラッシュ)』は使わなかった。



 彼女の心臓から『魔滅』を引き抜く。と同時に血液が勢い良く吹き出し、彼女の目から光が消えた。



 吹き出した血液が俺にかかる事は無かったが、周りを赤く染めるのには十分な量だった。



 部屋を見回し、まだ息のある少女達は4人である事を確認し、1人ずつ『暗殺の斬撃(アサシン・スラッシュ)』で殺していく。



 意識が無い彼女らにとっては、首を刈り取られるのも心臓をくり抜かれるのも同じだ。だから、『暗殺の斬撃(アサシン・スラッシュ)』を使った。



 自らの死の瞬間は意識を持っていて欲しいが、彼女らに意識は無いし、既に心が壊れているようだった。城にいる人間は、出来るだけ同じ殺し方をしたかった。だから、『暗殺の斬撃(アサシン・スラッシュ)』を使った。



 城の人間で『暗殺の斬撃(アサシン・スラッシュ)』で殺さないと決めていたのは、皇帝、皇子らだけだったが、もう1人増えるとは思っていなかった。



 ――――――――――――――――――――



 ブライト皇子の部屋の扉よりも、更に大きい扉。『皇帝の間』に繋がる扉だ。中にはブラート皇帝と、その護衛が3人いる事は分かっている。



 そして向こうも俺の存在を知っているようなので、そのまま扉を開く。まぁ、実際は俺が態と気配を掴ませてやったんだが。



 これには理由がある。クレイム法国の時のように、実力者と戦っておきたいのだ。今回は正直期待していないが、一応やっておこうと思った。



 この国の最高の実力者であり、支配者のブラート・アルナラは騎士団(ナイツ)程度の実力を持ち、護衛の『三槍』は3人がかりならばブラートに勝てると聞く。



 扉を開けると案の定、中央の椅子に皇帝が腰掛け、その横に『三槍』が控えるようにして立っている。



 彼等に向かって、ゆっくりと歩いていく。皇帝との距離が10メートル程になったところで歩みを止めた。



「侵入者よ。何が目的だ?」



 最初に沈黙を破ったのは皇帝。こちらを見下すように聞いて来た。



「貴方の娘の頼みを引き受けた。それだけだ」



「…ソフィアか。何か企んでいるとは思っていだが、まさかここまで大きく出るとは思ってもみなかった…」



「そこまで彼女が本気だという事。既に皇子も殺した。後は貴方方を殺せば、クーデターは終わる」



「フッ…我ら全員を相手にして、勝てると思っているのか?」



 椅子から立ち上がりながら発言したブラート。言い終わると、こちらに近づいて来た。当然、後ろから『三槍』も来ている。



「…何故お前らを暗殺では無く、正面戦闘で殺そうと思ったか分かるか?」



「つまり、我らと戦いたかったという事か?」



 間違ってはいないが、正解でも無い。



「ああ。暇潰し程度にはなると思ったからな」



 実際は、世界に名を馳せる皇帝と『三槍』が、どこまで俺を戦わせられるのかを知りたいだけだ。



 『神』対策の一環である。実力者との戦闘は元より期待していない。帝国ならば、他国に隠している秘密兵器ぐらいはあると思ったが、皇帝達を見ている限りでは、それは無い。



 そう考えていると、突然『三槍』が全員同時に飛び出して来た。余程さっきの言葉が気に障ったのだろう。



 3人は、上、右、左からの3方向同時攻撃をやって来た。タイミングはバッチリで、良く連携がとれているのを理解出来る。



 それに、会話の途中に攻撃を仕掛けてくるという不意打ちも、中々良かった。



 だが、それならもう戦闘は始まっていると考えて良い。そういう事になる。



 だから俺は『魔滅』を抜き、3人全員がほぼ同時に攻撃して来たので、『暗殺の斬撃(アサシン・スラッシュ)』で全員の首を斬った。



 当然、返り血も無ければ首が飛ぶ事もない。ブラートには、ただ『三槍』が突然倒れたように見えただろう。だが、流石は皇帝。彼等の死にはちゃんと気づいている。



 表情にも態度にも出さないが、内心はかなり焦っている。それは、()()()()()()



「悪いがこの通りだ。貴方方では相手にならない。大人しく首を飛ばされてくれると嬉しいんだが?」



「……断る!」



 案の定断ってきた。と、同時に『魔力状態(マジックモード)』を発動してきた。



「【筋力倍加】」



 それに加えて、固有魔法で筋力も上げてきた。力の差は歴然なのは分かっているはずだが、それでも勝とうとしている。それだけ強い信念を持っているという事だ。



 やり方は汚いし、その志も褒められたものではない。だが、それを目指していく信念だけは、認めても良いと感じた。



「オオオオオオオオオオ!!!!!!!!」



 奴は全速力で、拳を握りしめて向かってくる。その一撃をまともに受けたとしても大したダメージにはならないが、その()()を認め、そんな事はしないと決めた。



「じゃあな、皇帝」



 その言葉と同時に、『魔滅』でブラートの首を斬り飛ばした。



 ――――――――――――――――――――



 扉を開く。そこまで大きい扉じゃないが、そもそも入る人間が少ないのだろう。中は、15歳の少女の部屋にしては質素で、生活に必要な物しか置いていない、という感じだった。



 中央には机1つと椅子が向かい合わせにして2つ置いてある。奥の椅子にはこの部屋の家主が座り、その後ろには2人の女性の従者が控えている。



「…終わったぞ。ソフィア」



 それを聞いたソフィアはすぐに笑顔になり、近くに駆け寄ってきた。



「ありがとうございます!これで、クーデターは成功ですね!」



 そう言いなが俺の手を握ってくる。今までに聞いたことのないような高い声で、その笑顔は誰もが魅了されるほどに光り輝いていた。




 瞬間、ソフィアが唇を俺の唇に重ねた。



(これは……)



 そのままで数秒経つと、俺の口から()()()()()()()()()()()()。その痣が首に巻きついた事を確認したソフィアは、俺の唇から離れた。



「…成功ね。いくら貴方でも予想出来なかったでしょう?」



 コウヤから答えは返ってこない。ずっと俯いたままで、首に巻きついた痣が薄紫色に光り続けている。



 そんな事は御構い無しに話し続ける。



「私の固有魔法は『魅了』。キスした相手を私に惚れさせられる事が出来るの。性別は関係なくね。後ろの2人もそう。私の部下達はみんなそうなの」



 話し始めたソフィアは、先程とは別人の様な冷たい表情と暗い声だった。



「そして私の目的って、クーデターじゃないの。まぁ、貴方ならもう理解してるだろうから何も言わないけどね。なら、今からドラス魔国に行ってくれる?もう私の部下達が戦ってるはずだから急いでね」



 そして、突然ソフィアの表情は明るくなり、満開の笑顔になった。そしてとても明るい声で言った。



「お願ーい!」

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