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魔力ゼロの無敗者  作者: マンタS
第6章 奴隷落ちとクーデター
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黒の状態

「大丈夫ですかっ!?」



 思わず叫んでいた。彼を心配する事など今まで殆ど無かったが、今回は心配してしまった。



 彼が魂喰い(ソウルイーター)を使用したと感じた瞬間、いきなり全身から血飛沫をあげたのだ。



 叫び声こそあげてはいないが、かなり辛そうだ。今まで彼をそこまで見てきたわけでは無いが、あんなに苦しそうにしている姿を見るのは初めてだ。



 隣にいるシーナ様は見ていられないようで、顔を覆って甲高い声を出している。



 だけど、それは数秒で終わった。血飛沫が辞めば直ぐに傷から蒸気が発生して傷が再生していく。全ての傷が治るのに、5秒もかからなかった。



「良かった…」



 思わず安堵の声が漏れてしまった。それに気づいたようで、シーナ様も胸を撫で下ろした。



 だがそれが終わった直後、彼は沈黙していた。そして彼の目は、今まで見てきた彼の目とは()()()()()()



 だけど、それは一瞬。直ぐに今までの彼の目に戻った。だから、見間違いだと思った。気のせいだと、思うことにした。



 ――――――――――――――――――――



「…分かった」



 誰にも気づかれないようなか細い声で、自分でも気づかない内にそう呟いていた。



 何故かは分からないが、()()()()()()()()()()()と思った。



 自分の右掌を見ながら、そう思った。



「ご主、コウヤさん。大丈夫ですか?!」



(こいつ…今何言おうとしたんだ?)



 いや、まぁだいたい分かるんだが、考えないでおこう。そう思った。



「…あぁ。大丈夫だ」



 だが、見た目はとてもそんな風には見えないだろう。傷は治っているが、垂れ流した血液はそのまま。だから、血だらけなのに変わりはない。



「…それで、目的のものは手に入れられたのですか?」



「ああ…と言っても、完全じゃ無いがな…」



 イリアにとっても、俺にとっても、これが1番重要な事だ。イリアにとっても苦渋の決断だろうし。



「完全じゃ無い…とは?」



「…デストの魔力は得たし、属性魔法も得た。けど、固有魔法は2つだけだ」



 今回の件はかなりややこしいのだが、簡単に説明するとしよう。



「『黒の状態(ブラック・モード)』」



 そう呟くと、コウヤの体に『魔力状態(マジックモード)』の様なオーラが現れた。しかし、そのオーラは魔人族の『魔力状態(マジックモード)』と同じ様に漆黒に染まっている。



「それは…!?」



「属性魔法は、この状態でしか使えない。身体能力上昇や飛行能力は『魔力状態(マジックモード)』と変わらないが、使える魔法は(ブラック)に覚醒した属性魔法と固有魔法2つのみ。そして最大のデメリットは…」



 そこまで言うと、コウヤは『黒の状態(ブラック・モード)』を解除した。だが、



「フー…」



 コウヤはかなり消耗しており、珍しく息を切らしている。



「過剰な体力の消費だ。何もしなくても発動出来るのは20分程度。全力戦闘なら10分ももたない」



「…それは、例えば私が発動したら何分もつのですか?」



 ()()()()()()()()がどの程度のものか知りたい様だ。



「…良くて20秒ってとこだな」



「にじゅっ…!そ、そうですか…」



 流石にショックだった様だ。単純計算で、俺の体力の1/60しか無かったって事になるからな。まぁ、実際はもっと開きがあるんだが。



「そ、それで、2つの固有魔法と云うのは?」



「1つは『空間直結輪(ゲート)』。皆知ってる様にな。もう1つは『遺伝子創り変え(DNA・リビルド)』。これは、要は人体改造の固有魔法だ」



「えっと、よく分からないのですが…どの様な事が出来るのですか?」



 うん。まぁ、分かってた。中世程度の科学力しかもたないこの次元の人間に、人体改造なんて分かるわけないしな。



「簡単に説明すると、予め遺伝子を設計しておいて、その遺伝子で自分が成長した姿を創るって云う魔法だ」



「…?」



 うん。まぁ、分かってた。この説明で分かるわけないって。だから、もっと簡単に説明する。



「要は、もう1つ自分の体を作るって事だ。そしてこの魔法はそれだけじゃなく、1度創るといつでも体を変異させられる。変装にはもってこいの魔法だ」



「…成る程」



 ギリギリ分かった様だが、完全には理解できていない様だ。この次元の人間に、現代の地球の科学の常識を教えるのはかなり困難だ。



「そしてこの魔法こそが、今回の計画の鍵を握っている」



「それはつまり、その魔法で変装して帝国に侵入するって事ですか?」



 まぁ、及第点だな。惜しくはあるが、正解では無い。



「少し違う。俺はこの魔法で人体そのものを変化させ、帝国に侵入、いや買われる」



「???」



「…順を追って説明しよう。まず、俺は『遺伝子創り変え(DNA・リビルド)』で人体改造し、顔バレしていない奴隷商人に俺を奴隷として奴隷市場に売らせる。そしてブライト皇子に俺を買わせ、皇帝城に侵入。ソフィアとその従者を除く、そこにいる奴らを皆殺しにする」



「えっと…それは…」



 何も分かってないって顔だ。不思議そうな顔をしている。



「良いか?ブライトは黒髪ロングのクール系女子が好きなんだ。そして、奴の行動パターン的にもう直ぐ奴隷市場に来る」



「……えっと…」



 まだ同じ顔をしている。つまり、まだ分かっていないらしい。



「…『遺伝子創り変え(DNA・リビルド)』は性別さえ超越する。そして髪の色、身長、声帯、その全てを創り変える。つまりだ、俺が女になれば皇帝城に侵入するのは容易だって事だ」



「え!?あっ、そうですか…でも、そこまでするのは必要があるのですか?」



 それもそうだ。だが、これは()()()()だ。



「この作戦が、最も容易に皇帝城に侵入出来る。そして、それを出来るのは俺しかいない」



 そう。ブライトが買う奴隷は黒髪ロング。黒髪ロングを持つのはこの国にはシーナしかいない。当然、シーナにそんな事をさせる訳にもいかない。



 そして外見を除いても、『奴隷の首輪』『魔封じの腕輪』を付けられた状態でまともに戦えるのは俺ぐらいのものだ。



 だから、俺がやるしか無い。



 そして、それを納得させる必要がある。だから、



「【遺伝子創り変え(DNA・リビルド)】」



 ここで、予め設計していた身体に変化させていく。身長はさほど変わらないが、体格は小さくなる。ウエストも細くなり、胸も膨らむ。イリアと同レベルぐらいには。髪を黒く染めて、長くした。顔はさほど変えていない。



「どうだ?まぁまぁいけるだろ?声も高くしたしな」



「…」



 …何も言ってこない。コメントしづらいのか?



 ――――――――――――――――――――



 そしてその計画を忠実に遂行し、現在に至る。計画はもう終わったも同然だ。



 そして、()()を使うのも久しぶりだな。



「『次なる境地(THE・NEXT)』」

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