魂喰い
何故コウヤが女になっているのか?その説明をする為には、数日前まで遡らなければならない。
その日は、コウヤがドルス魔国に戻った日である。
この日に、コウヤはシーナや『四天王』、沙霧やソフィアを1つの部屋に集めていた。それは、スレイル帝国のクーデターについてを話す為だ。もっとも、沙霧とソフィアは眠っているが。
「で?クーデターと云うのはどう云う事だ?」
やっと冷静になってくれた様だ。さっきスレイル帝国でクーデターをやると云う爆弾発言にすっかり興奮していたが、今は冷静の様だ。
「…まず、何故やるのかを教えておく」
これを今話すのには理由がある。それは、ソフィアと沙霧が眠っているからだ。2人は今、確実に眠っているのは分かっている。
まず、沙霧はまだ信用しきれないと云う事。裕翔の事にしてもそうだが、こちらの次元に来て以降の事を俺は知らない。つまり、その間に何かあれば俺はその行動を予測しきれないと云う事だ。
だから、計画の全貌をまだ話す訳にはいかない。まぁ沙霧に関しては、もうほぼ信用できると考えている。
「当然、この国と俺に理があるからだ。スレイル帝国がクーデターを起こし成功したとすれば、ここにいる帝国皇女ソフィア・アルナラが主権者になる、と云う事になる。
そうなれば、この国とスレイル帝国は友好的な関係を作る事が出来る。そうすればこの国、ひいては魔人族の地位向上が望める、と云う事だ」
「…それは安易じゃないか?幾らスレイル帝国と友好関係を築けたところで、その他の大国が黙っていないだろう?」
口を開いたのは『黒風の魔人』ライア・クローラーだ。彼女の頭脳は『人魔大戦』時に大いに役立った、と云う話をリュークから聞いていたので、中々頭が回るやつだと思っていた。そして、この中の奴等では確かに頭が回る。
「…いや、そこは既に解決している」
「どう云う事だ?」
疑問があると云うことは、分かっていないと云う事だ。やはり、そこまで頭が回っていないらしい。あくまで俺から見たらだが。
「じゃあ何故レースティリ王国が、『大国会談』の誘いをこの国に寄越したと思う?」
「…!まさか!」
流石に気づいたようだ。まぁ、別に馬鹿じゃないが、少なくとも俺が教えを乞う事はなさそうだ。
まぁ、他の奴等は気づけてもいないが。
「そう。俺は既にレースティリ王国とクレイム法国と友好関係を築いている。クレイム法国に関しては、既に俺の支配下にあるも同然だ」
別に嘘はついていない。クレイム法国に関しては、『大国会談』での発言は俺が掌握しているし、『聖女』には命令すれば従う程度の恐怖は与えている。国の支配者を支配しているので、実質国を支配しているのは俺だ。
この発言にはこの場にいた人間は全員驚いた様で、暫く黙っていた。誰もいつまでも口を開こうとしないので、俺が口を開いた。
「つまり、あとスレイル帝国と友好関係を築けさえすれば、この国以外の全ての大国と友好関係を結べた事になる。そして、こちらに戦闘の意思が無い事を『大国会談』を通して全世界に伝えれば、ドルス魔国と魔人族が認められる様になる日が近づくと云う事だ」
まだ黙ったままだが、喜んでいるのは簡単に分かった。全員の表情が明るくなってきているし、何より、
「やったーーーーー!!!!」
大はしゃぎしている魔王がいるからだ。飛び上がったと思えば、『四天王』全員とハイタッチして部屋の中を走り回っている。
何故か俺にはしようとしなかったが。
「落ち着け。それで終わるって事じゃ無い。あくまでスタートラインに立ったってだけだ。
今まで0だった可能性が、1になっただけ。根本は何も変わっていない。ドルス魔国や魔人族に恨みを持つ者は多くいるだろう。そう云う人間達に、自分達のした事を許させるって事だ。寧ろ、大変なのはこれからだ」
「そう…だよね…」
露骨にがっかりしだした。まぁ、シーナ以外は最初から理解していた様なので、そこまでリアクションは無いが。
「分かった。そう云う事なら構わない」
リュークの許可が得られた様だ。別にどうでも良いが。
「で、どうするんだ?」
このリュークの問いは、全員が気になっている事だろう。具体的な考えを聞いているのだ。
「まず、ソフィアに国に帰ってもらって、皇帝に命令された通りに俺の情報を渡す。ただし、どうでも良い情報だけ。
次に、誰かがスレイル帝国、皇帝城に侵入。ソフィアを除く国の重要人物を皆殺しにする。
そしてソフィアに手柄を譲り、女帝となってもらう。
これで終わりだ。分かりやすいだろ?」
かなり簡易的に説明したが、最初はこんなもので良いだろう。シーナなんてちゃんと説明しても理解出来ないのだから、説明するだけ無駄だ。
そして、一旦はここで解散にした。各自やる事があるし、俺もやらなければならない事があるからだ。
そして、次はイリアとの会話に進む。俺は、イリアだけにはこの計画の全てを知っておいて欲しいと思っている。何故なら、最も情報がバレにくいからだ。
まず、情報をバラす様な性格では無い。そして、どんな拷問も彼女には効かない。(ドMなので)そして、常に自分を偽っているからだ(ドMを)。
つまり、情報を1番守ってくれるのだ。だから、彼女に協力者になってもらう事にした。
今回の計画は、ソフィアを除いて2人が必要だ。絶対に。その1人を、イリアに任せる事にした。
「伝説の魔力道具?どう云う効果があるのですか?」
イリアの疑問も仕方が無い。これは、普通の人間が知っていて良いものでは無い。無論、魔人族のイリアが知っている筈はない。
「この魔力道具は魂喰い。他の人間の魂を喰らい、それを己の物に出来る魔力道具だ」




