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魔力ゼロの無敗者  作者: マンタS
第5章 2つの大国と反逆者
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ソフィア・アルナラ

「さて、一体どこまで逃げたのやら…」



『聖女』から伝説の魔力道具(マジックアイテム)を回収し、『大国会談』でのクレイム法国の発言を全て掌握した。『聖女』に俺の恐怖も植え付ける事が出来たので、結果は上々だ。実践は出来なかったが。



 この国でやる事は終わったので、俺は国を出た。今は国の入り口にいるが、沙霧がいない。少なくとも、俺の目が届く範囲にはいない。



 国の外に出てろとは言ったが、こんなに離れろとは言ってない。



「ハァ…」



 思わず溜息が出た。これから沙霧を見つけ、その場所まで行かなきゃならない。



「…見つける側にもなって欲しいな」



 愚痴を言ったが、見つけるしか無い。魔力(マジック)破壊(ディストラクション)の魔力感知があれば、見つけるのはそこまで難しく無いだろう。



「見つけたらあいつの顔、引っ叩いてやる」



 こうして、俺は沙霧探索に動き出した。



 そしてしばらく歩いていると、魔力を感知できた。沙霧のかは分からないし、複数感知出来たので正直可能性は薄いだろう。だが、沙霧の事を見たかもしれない。



 とにかく、その集団の元まで行く事にした。1キロメートル程先なので、そこまで時間はかからないだろう。だが、あまりスピードを出し過ぎて、集団に不審がられても困る。



 早歩き程度で進む事にした。少し進めば見えてくるだろう。



 進んでいくにつれ、その集団が目視出来るようになってきた。だが、少し妙だった。集団の殆どは寝ていて、いや、気絶している。立っているのは女2人。1人は沙霧で、もう1人は金髪の少女。



 顔は背を向いていて見えないが、着ている服から、身分が高い事が分かる。何やら楽しそうに話しているが。



 それに、妙なのはその集団だけじゃない。周りの景色もだ。気絶している集団の後ろの土が焦げていたりなど、魔法の痕跡が見て取れる。



 どう見ても、()()()()()。というか、恐らく沙霧が勝手に首を突っ込んだ。



「…ったく、何考えてんだあの女…」



 内心かなりイラっとしながら歩いていったが、その気持ちは直ぐに消え去る事になる。なぜなら、利用しようとしていた存在が、自分の目の前に来ていたからだ。



「あ!あの人じゃないですか?」



「え?…あっ!」



 俺に気づいた様だ。何故かこちらを向いていなかった少女の方が先に気づいた様だが。顔をこちらに向けてきた。



「なっ…」



 流石に驚いた。あの顔は、良く知っている。いや、知っている者はかなり多いだろう。



 何故ならその少女は、大国のトップの血を引いているからだ。名は、ソフィア・アルナラ。スレイル帝国皇帝、ブラート・アルナラの長女だ。



 そして、沙霧を嵌めた者達の1人であり、俺が次に()()()()()()()()()()人間だ。



 そういう意味もあって、驚いた。表情には出していない。何故なら、後ろに倒れている集団と、この女を見て直ぐに悟れたからだ。この女の心中を。



 そんな事を考えていると、大きく手を振りながら沙霧が近づいて来た。



「おーーい!コウヤー!」



 近づいて来たところで一発、脳天を引っ叩いた。



「痛い…」



「自業自得だ」



 頭を抱えながら、痛がっている沙霧を諭す。だが、正直今は沙霧なんてどうでもいい。



 今、用があるのは目の前にいる女だ。



「で?なんでこんなところに帝国の皇女がいる?」



「…迷ったんです。国の皆と観光してたら。そしたら、あの人達に襲われて…」



 嘘だ。今はどの大国も『大国会談』の為に大忙しだ。そんな状況で、観光なんて出来るわけがない。大体、『大国会談』前に大切な皇女を攫われる可能性がある観光なんて、一国の王がさせるわけがない。



「嘘を吐くってんなら、ここで殺すが…それでも良いか?」



 驚いていた。2人ともが。沙霧の方は、俺の発言だけじゃなく、ソフィアが嘘を吐いていた事にも驚いている様だ。



「…分かりました。本当の事を話します…」



 その場が静まる。俺も沙霧も、ソフィアの声に耳を傾ける。



「私は、コウヤ・ハラグチと云う者を探すという名目で国を出ました。そして、護衛の者達から離れて、協力してくれる者達を探していました」



「何の?」



「クーデターの協力者です」



 ――――――――――――――――――――



 ースレイル帝国 皇帝の間ー



 その玉座に座る大男、皇帝ブラート・アルナラは、()()()()を待っていた。



 娘のソフィアに調べさせている男、コウヤ・ハラグチの情報の報告だ。



 ブラートの勘が言っていた。あの男は危険だと。



 だからソフィアを行かせた。我が娘であれば、どんな事でも調べ上げる。



 そんな事を考えていると、扉が開いた。入って来たのは、体格の良い金髪の男。息子のブライト・アルナラだ。その手には、鎖が握られている。



 その鎖は、『奴隷の首輪』に繋がっていた。『奴隷の首輪』をつけられているのは、黒いロングヘアーの女。『魔封じの腕輪』もつけられている。着ているのは、汚い布一枚。体のあちこちが傷ついている。



 クールな顔をしているが、その顔は恍惚としている。息を切らし、体が震えている。



 しかしそんな『奴隷』を見ても、ブラートは何の反応も示さない。



「…何の用だ?ブライト」



「それがさぁ…」



 軽快な口調で、明るい声色で話すブライト。まるで、何かをねだる子供の様だ。



 そう言うと、ブライトは『奴隷』の背中を思い切り踏みつける。その勢いに耐えられず、うつ伏せになる『奴隷』。



「…うっ」



「これがもう使い物になんなくなっちゃってさぁ…だから、新しいの欲しいんだけど…」



 苦しむ『奴隷』は気にも留めず、そのままの明るい声色で話すブライト。



「ハァ…分かった。許可しよう……」



「ありがとうございます。父上」



 先程迄とはうって変わって、真面目な声で、敬語を使って礼を言うブライト。



「おい、そこの使用人!」



 後ろに振り向き、扉の入り口に立っていた使用人に声をかける。



「はい」



「『奴隷(これ)』、捨てといて」



「受け賜わりました。ブライト様」



 そう言うと、ブライトは鎖を手放し、廊下を歩いていった。



「『大国会談』か…面白くなりそうだ…」



 そのブライトの呟きは、誰にも聞かれる事はなかった。



 扉が閉まり、皇帝の間に静寂が訪れる。



「早く帰れ、ソフィア。そして、私に情報を齎せ。世界を支配する、この私の為に…」

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