『コウヤ・ハラグチ』
4章最終回です
やっと終わった…
「ふぅ…」
今俺は、王城内の一室に居る。何故俺がこんな所に居るのかと云うと、『栄光』の話に付き合っていたら夜になってしまったので、国王が気を利かせて今日は泊まっていけ、などと云う無駄な事を言ってきたので、王城に居ざるを得ないのだ。
別に脱出するのは容易だが、居なくなれば不審がられる。態々そんな無駄な事で目立ちたくはないので、此処に居るのだ。
部屋にあるベッドに寝転がりながら、窓から見える景色を眺める。この王都の景色は、昨日の宿の景色とは違う。宿から見えたのは、精々おっさん冒険者連中が酒を飲んでる様だ。だが、この王都には、そんな連中は居ない。そして、町中に24時間体制の見張りが居るし、何より店などの灯で明るかった。
今は午後8時頃。まだまだ飲食店などはやっている。丁度夕食頃だ。普段なら俺もこの時間に夕食に食べる。
実は国王から夕食の誘いを受けていたのだが、流石に面倒だし、そこまで参加してやる必要も無いと思ったので、断った。
で、俺は今部屋に一人で居る。だが、完全に1人と云う訳ではない。ドアの向こう側には見張りが居る。最低限の警戒はして居る様だ。まぁ、向こうも本気で俺を止める気は無いだろう。本気で俺を止める気なら、見張り1人じゃ足りない。そんな事は分かっている筈だ。
なら、何故見張りが1人だけなのか?別に見張りが強い訳では無い。単に信用されているからだ。俺の実力を認めているのは明らかだし、俺を夕食に誘った事からも信用されているのは分かる。
そして、俺はこれを利用してやりたい事がある。それは、国王との一対一での話し合いだ。『神』からの使者を呼び寄せるには、世界を平和にするのが1番近しい。そして、それを実現させるには、大国のトップと話をする必要がある。
これを実現させる為にも、今は余り問題を起こさない方が良い。だが、素直に寝ると云う選択肢は俺には無い。この状況で寝るなんてあり得ない。
これは余り知られていない事だが、王都にも迷宮の入り口がある。別に普通の迷宮と変わった事は無いのだが、俺は王都外の迷宮の係の人間に顔を覚えられている。あいつらは、俺が死んだと思っている筈なので、そこに堂々と入っていくのはマズイ。
だが、王都の迷宮には初めてくるので、止められる事は無いだろう。まぁ、係の人間達に見えないスピードで入ると云う方法もあるが、出来れば法を犯したくない。
俺が迷宮に行きたいのには、理由がある。それは、ある事を確かめる為だ。だから、迷宮に入らざるを得ないのだ。
そう決めると、俺は立ち上がり、無音で部屋の窓を開けて王城を脱出し、迷宮の入り口へと向かった。
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「それにしても、まさか『勇者』にあんな秘密があったとは…」
そう呟いたのは、ヘイズ国王だ。
「私がやった事ですが、単に離れた村から1人の人間を呼び寄せたに過ぎないので、『勇者』である事も疑わしいですが…」
それを無表情で、冷たい目をしながら答えたのは、『栄光』の二つ名を持つオリビアだ。この反応には、ヘイズも表情を引きつらせながら、苦笑いをするしかなかった。
彼女は、ヘイズに呼び出されて王の間にいる。
「まぁ、そう言うな。確かに異界の者ではなかったが、『勇者』と呼ばれてもおかしくない才能を持っているだろう」
「ええ。その才能が、あんなゴミに渡ってしまったのは非情に残念です」
「…」
彼女がそう言うのはおかしくない。彼、斎藤康太は多大なる才能と『勇者』の資格を持つが、召喚されてからやっている事と云えば、高級料理を食べたり、城内の女性の使用人をナンパしたりと、やりたい放題だ。
少し気になるのは、彼が召喚された直後に自ら『勇者』と名乗った事だが、懸念する必要もないだろう。
更に、今までにやってきた『勇者』の悪行をコウヤ・ハラグチが齎したことにより、オリビアの好感度パラメーターは0を下回った。流石に、これを多くの人間に知らせる訳にはいかないので、王国の人間で知っているのは此処に居る2人だけだ。
「ですが、得たのものもありました」
「コウヤだな」
「はい」
そう、『勇者×剣術祭』で優勝したコウヤ・ハラグチの存在だ。彼の実力は、最低でも騎士団団長と肩を並べる、とされている。
間違いなく、『脅威』に対抗できる。正直に言うと、『勇者』よりも圧倒的に高い実力を持っている。
「彼が我々に協力してくれるのであれば、『脅威』や『四天王』達、復活した『魔王』や、その部下を名乗り、騎士団団長を超える実力者『死神』などの、我々に敵対する実力者達に対抗する事が出来るかと」
「ああ……決めたぞ」
その言葉に少しの動揺を見せたオリビアだったが、直ぐに何時ものポーカーフェイスに戻った。
「『大国会談』の開催を」
今回、少なめでした
前回と前々回が多かったからです




