剣術大会
「で、どうするんだ?」
「なにが?」
「だから、王都に入るのだろう?どう入るんだ?」
俺は此処に来るまでの間、この国ですべき事を既に彼女に話していた。あと、適当な店で服も買った。入国する時は、沙霧に一旦『奴隷の首輪』と『魔封じの腕輪』を付けて貰い、奴隷の振りをして貰った。その後、きちんと沙霧が選んだ下着や服を俺が買った。着替え場所など無いので、人目のない路地で着替えて貰った。
話を戻すが、疑問を持つのは分からなくもない。
「先にこの辺りで情報収集を行う。で、その後に侵入する」
俺達が居るのは、前回俺が来た時に居た辺りの場所だ。迷宮の入口や、様々な宿屋、飲食店や武器屋がある。情報も、集めようとすれば、簡単に集められる。
「けど、まずは宿だ」
「宿?」
「暫くは此処に居るからな。それに、以前泊まった事がある宿がすぐ近くにあるから、取り敢えずそこに行く」
「分かった」
こうして、俺達は宿屋に向かった。
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宿屋『パラダイス』。この名前の意味は分からないが、この宿の店主が付けたらしい。全く意味が分からない。
まぁ、かなり良い宿だから、特に気にしないし気にする奴もいない。
宿の前まで来た俺達は、ドアを開け、受付へと向かった。
「すみません。暫く泊まりたいのですが…」
どう返されるのかだいたい分かっていた俺は、心の中で溜息をついて、どう返事をするかを考えた。
「おや、コウヤ君じゃない!久し振りね!」
「たった6日ですけどね」
「細かい事は良いのよ!…それより、そっちの子は?新しい彼女?」
「こいつもあいつも違いますよ」
「へ〜。まぁ、良いわ。それより、部屋はどうする?また、1つ?」
「…金額は?」
「残念ながら、今回は1人部屋2つの方が安い」
「なら、1人部屋2つで」
「OK!で、何泊にする?」
「そうですね…取り敢えず3日泊まります。また増えるかもしれませんが…」
「良いわよ。じゃあ、お金は出て行く時で良いから。はい、これ鍵」
そう言って鍵を差し出された。普通に受け取ったが、どうせならこの人にも、と思ってこんな事を聞いてみた。
「ありがとうございます。あと聞きたいのですが、何かこの国で変わったことってありました?」
「変わった事?う〜ん…あっ!そう云えば…」
「何かあるんですか?」
「ええ。それがね、『勇者』が召喚されたんだって!」
(やはり…)
「それが、ついこの間発表されてね。なんでも、2週間前には既に召喚されてたんだって。丁度、コウヤ君がこの宿に来た時ぐらいに」
(2週間前…俺や沙霧がこの次元に来た時期と重なる…と、なると…)
コウヤが思考を巡らせている間も、店主のおばちゃんは話し続ける。
「発表された時、勇者様はその場に居なかったのだけれど、なんでも金髪で両目が違う色をしているって話だ」
(金髪のオッドアイか…)
「それ以上に驚いたのは無限の魔力を持ってるって事と、全魔法属性持ちって事だね」
これは、俺は薄々分かっていた事だったが、沙霧は驚いた様だ。
「固有魔法は?」
「それは公表されなかったんだよ。まぁ、凄い魔法ってのは分かるんだけどねぇ」
(固有魔法だけは公表しなかった、か…)
「それと、もうひとつ重要な事も発表されたよ」
「重要な事?」
「あぁ。なんでも、人間ランク銀以上の人間だけを対象に、剣術大会を開くんだって」
「剣術大会?」
「あぁ。なんでも、勇者様は剣を使うらしくてね、その大会に優勝すると、かなりの賞金と自由に王都に出入り出来る権利。それに加えて、勇者様と剣を交える事が出来るんだってさ」
「…それはどこでやるんですか?」
「王都よ。普通は、ただの人間が入る事は出来ないんだけど、大会参加者は特別に入れるって話だ。まぁ、自分で勝手に入っちゃダメで、王都から迎えの馬車が来るらしいけど」
「…となると、観客は無しですか?」
「あぁ。けど、国王様とかの凄い偉い人達が観戦するらしくてね、貴族でも観戦が許されないって話だ。それにしても、なんでそんなに気になるんだい?」
「まあ、ちょっと気になりまして…その流れで、いつ開催するかとか分かったりします?」
「あぁ、えっと、受付は迷宮の受付で出来る。開催は3日後、受付は今日までだ。参加するならって…そんな訳ないか!」
「はい、流石に無理です」
今は午後5時ごろ、急いだ方が良いだろう。
受付から離れ、誰にも聞かれない位置まで狭霧と移動した。そして、小さめの声で狭霧に言葉をかける。
「…お前は先に部屋に行っててくれ。俺は例の大会にエントリーしてくる。直ぐ戻るから、部屋で待っててくれ」
「本当に参加するのか?」
「あぁ。その辺も、帰って来てから部屋で話す。じゃあ、俺はもう行く」
「えっ、ちょっと!」
その声が響いた頃には、既にコウヤは宿を出ていた。
――――――――――――――――――――
コウヤは大会のエントリーに成功し、自分の部屋に荷物を置いた後、沙霧の部屋の前に来ていた。
ドアを叩き、声をかけた。
「おい。居るか?」
そう言うと、直ぐにドアが開いた。
「遅かったじゃないか」
「そうか?20分ぐらいしか経っていないと思うが…」
「人を20分も待たせているんだ。ちゃんと自覚しろ」
「…分かった」
そう言って、俺は部屋の奥へと進み、置いてある椅子に座る。沙霧はベットに座っていた。
「きちんと説明して貰うぞ」
「それで、最初に何を聞きたい?」
と言っても、聞いてくる内容はだいたい分かっていた。この宿の店主が言っていた剣術大会に何故参加したのか、だろう。正式名称『勇者×剣術祭』と云う、高校の文化祭みたいな名前の大会だが、参加者は全員が人間ランク銀以上と云う過酷な大会だ。
観客が国王ぐらいしか居ないとはいえ、いずれ指名手配される人間が出るような大会ではない。普通に考えたら俺も参加しない。
彼女が口を開き、この声が部屋中に響いた。
「魔王と一緒の部屋に泊まったと云うのはどう云う事だ!!」
「…は?」




