封印
3章最終回です。
「それで、コウヤ君は何処に行きたいの?」
今、俺とシーナは魔王城の廊下を歩いている。如何にもな太く、長い廊下を歩いている。
「先代魔王と朝比奈が戦った部屋だ。何か痕跡が残っているかもしれない」
その部屋は、俺がずっと行きたかった場所の1つだ。何故なら、『人間最強』デストと、朝比奈が戦った場所だからだ。そこに行けば、抱いていた疑問が解けると思ったからだ。
「そうなんだ…実は、私もずっと行きたいって思ってたんだ…」
シーナの気持ちは、分かる。自分の全てが狂わされた場所だ。それに、最後に父親と会った場所だ。行きたいと思うのは当然だろう。
しばらく歩いていると、その部屋への入り口が見えてきた。無駄に大きい扉は、損傷が殆ど無く、綺麗な金色の装飾が光っていた。
「…あれから、まだ殆ど誰も入っていないらしい。だから、此処は100年前とほぼ同じ部屋の筈だ」
「…」
シーナの目は、今までに見たとこが無い程に澄んでいた。俺は扉に両手を当て、力を入れて扉を開く。ギィと音をたてながら、少しずつ開いてゆく。
「!これは…やはり…そうか」
コウヤは、抱いていた疑問の答が分かり、少し笑みがこぼれる。
「…戻って…来た…」
そう呟いたシーナは、しばらく黙っていると、両目から涙が溢れた。
「やっと…やっと…」
その気持ちは、コウヤには良く分かる。それが分かっていたので、コウヤはシーナをそっとしておく事にした。
泣いているシーナを置いて、コウヤは部屋の奥へと進んで行く。この部屋を見ていると、100年前に行われたであろう戦いが感じられる。壁にあるキズや、床に出来たクレーター。その部屋にある全てが、戦いの激しさを知れる。
だが、コウヤが知りたかったのはそんな事では無い。コウヤは、この戦いにあったであろう事を知りたいのだ。そして、それは知る事が出来た。もうこの部屋に用は無いが、シーナの気持ちを汲んで、少し留まっておく事にした。
と、廊下から大きな足音をたてながらイリアが部屋に入って来た。
「ハァハァ…大変です!」
イリアにしてはやけに焦りながら声を出していた。
「ライアの魔力が封じられてたって事か?」
「っ!何故分かったのですか?」
「『魔力封印』…その力が文字通りの意味であれば、予想は出来る」
奴と戦っている時から感じていた事だ。先代魔王を殺せたのであれば、俺の破壊とまではいかなくとも、無効化する事ぐらいは出来るだろう。『魔力殺し』には、それ相応の『能力』があると予想していた。俺の『魔力破壊』が『破壊』ならば、奴の『魔力封印』は『封印』だと分かる。
恐らく、ライアはともかく、デストを倒せたのはその能力あってのものだろう。だから、ちょっと出血が酷いぐらいでデストが死んだのは、『魔力状態』による再生が出来なかった為と考えられる。無限の魔力を持つデストがそれで死んだのは、『魔力状態』や魔法を使えないからだ。
「…ちょっと待って。もしお父様が同じ様に魔力を封じられていたとしたら、どうしてあの時【空間直結輪】を使えたの?」
「…それは、自分の魔力を封じられる前に、自分の魔力を体外に出していたんだ。例え魔力を封じられていたとしても、既に体外にある魔力を操る事は可能だ。魔法を使う事もな。そしてそれは、今もこの部屋にある魔力の塊がそれを物語っている」
「え?」
「俺には分かる」
そう、俺はそれを確かめる為にこの部屋に来た。俺の魔力感知は、半径1キロメートル内の魔力を感知出来るが、俺から遠ざかれば遠ざかる程、その正確性は低くなっていく。目的を達することは出来なかったが、事実を知れただけでも十分だ。
「それより、リュークは起きたのか?」
「は、はい。そうですが…」
「なら、俺はこの国を出る」
「「えぇ?」」
2人は驚きの声をあげ、同時に悲しそうな顔をした。
「最初から言ってた事だ。それに、ずっと此処に留まる訳にもいかない。いつかは出なきゃならない。速いか遅いかだ」
「そ、そう…」
シーナが今にも泣きそうな顔を浮かべるので、こんなことを言ってしまった。
「大丈夫。1週間後には帰る…………はぁ」
ため息を浮かべてしまったが、聞かれてはいない様なので、気にしないでおこう。




